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告白

 アイリスは今度はロータスに駆け寄る。

 そのままロータスの手を取って潤んだ目で見つめた。

 美少女にそんな事をされたロータスは赤面しつつ、真っ直ぐにアイリスを見つめた。


 恋人たちの感動の再会かよ。


 ロータスとアイリスは城から逃げた上に、ロータスは謹慎中で城に不法侵入した身だ。

 そんな不審人物に女王陛下であるアイリスを近づけるのを止めるべきなのに誰も止めない。

 まるで全員、金縛りにでもあったみたいだ。


 これが『恋革』における恋愛パワーの力か。強制力が半端ないな。


 感心していると、アイリスは涙声で語り出した。


「ロータス。私のせいで貴方に迷惑をかけて、ごめんなさい。昔から騎士になるのが貴方の夢だったのに、私のせいで近衛騎士団を脱退させられた上に、謹慎までさせられてしまって……」

「アイリスさまの為に行動したことを、後悔したことはありません。そのような悲しい顔をしないで下さい」


 こいつ、反省してないな。


 私はロータスの発言に白い目を向けてたが、アイリスは逆に微笑んでいた。

 こういうところに主人公とモブの差が出るんだろうな。


「ロータスは優しいですね。貴方に会えたら、言いたい事があったんです」

「言いたい事……?」


 ロータスは不思議そうに首を傾げる。

 対してアイリスは少し俯いて頬を染める。


「私、好きな人がいるんです。とても頼りになる人で、話していて心が軽くなる。毎日会えるのが楽しくて、会えない日は心に穴が開いたような気持ちになる……。ロータスに会えない間に、そんな気持ちを知ったんです」


 そこまで言うとアイリスは染めた頬はそのままに、ロータスを見上げる。

 ロータスとの身長差的に、アイリスは上目遣いになる。

 その様子は恋に恋する乙女だ。とても可愛らしい。


「ロータスは……そんな私に対しても、自分の行動を後悔していませんか?」

「はい、勿論です。アイリスさま。何があっても、貴方の為なら手を貸しますとも」


 ロータスはどこまでも真面目で真剣だ。

 これはちょっと不安にさせて置いて『好きなのは貴方です!』パターンでしょ。知ってる。

 このまま告白するの? こんな公衆の面前で?


 明らかにそんな雰囲気だ。

 でも誰も二人を止めない。アイリスの独壇場である。

 主人公、凄いな。


「良かった。ロータスなら応援してくれると思っていました。私、これから頑張りますね!」


 アイリスはロータスの手を離し、両手を胸の前で握りしめた。


「私、ロータスへの感情を恋だと勘違いしていました。でもあの人に会って違うとわかったんです。ロータスへはあくまで兄のような家族愛で、本当の恋は世界が違って見えるほど素晴らしいものなんですね!」


 あれ? 告白じゃない…だと……!?


 あの流れは長年の恋心を打ち明けるものだと思っていたのに違った。

 思わずアイリスを二度見してしまったくらいだ。

 辺りを見回すと全く同じタイミングで、アイリスを二度見した後に周囲に目を向けたクロッカス殿下と目が合った。


 そうですよね。やっぱり告白だと思いましたよね。


 自分と同じ気持ちの人間がいると安心するものだ。

 更に周りを見ると、アンバーはドン引きしたように口元を抑えているし、何故かジェードはアイリスの『兄のような家族愛』というセリフで胸を押さえている。


 なんだろう。好きな子に家族としか認識してもらえないトラウマでもあるんだろうか。


 グレイ隊長はさり気なくマゼンダ団長と目線を合わせている。


『好きな奴がいるって知ってた?』

『いや、知らん』


 目線だけでそんな会話をしている気がする。

 仲が良いな。

 ちなみにロータスはというと、真っ白に燃え尽きていた。

 自分の身を犠牲にしてでもアイリスを逃がそうとしたのだ、彼女が好きなのは自分だと自信があったのだろう。

 ちょっと可哀想になってきた。

 そんなロータスを放置して、アイリスはクロッカス殿下に懇願するような顔を向けた。


「伯父上。ロータスがあんなことをしたのは私のせいです。彼に責任はありません。どうか、近衛騎士団へ戻していただけないでしょうか」


 クロッカス殿下はちらりと燃え尽きているロータスへ目を向ける。


「………………いいですよ」


 多大な同情と共に殿下は頷いた。

 流石にここまで徹底的に振られたら同じことはしないだろうし、アイリスも前と比べて気持ちを入れ替えているので了承したのだろう。


「ただし、もう一度入団試験は受けていただきます。マゼンダ、頼んだぞ」

「はっ」


 マゼンダ団長が殿下に頭を下げる。


「良かったですね、ロータス!」


 花のような笑顔をロータスに向けるアイリスだが、ロータスは燃え尽きていて返事が返ってくることはなかった。


 ドンマイ。


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