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国宝級の代物

「先ほどジョン皇子を襲った者たちに、この水鏡を触れさせました。結果、貴方が暗殺を依頼している事がすでに判明しています」


 アイリスは真っ直ぐに帝国側にいた一人の貴族を指さす。

 周囲の鋭い視線を身に受けた貴族は、慌てたようにサルファー皇子に弁解する。


「そ、そんな馬鹿な。皇子、これはウィスタリア王国が言いがかりをつけているだけです!」

「そう思うなら、貴方もこの水鏡に触れてごらんなさい。真実はすぐにわかります」


 アイリスがきつ然とした態度で言い返す。

 サルファー皇子も弁解する貴族を無言で睨みつけたままだ。

 皇子のそんな態度に、帝国の貴族は今度はこちらに食って掛かった。


「その鏡に何か仕掛けがしてあるんだろう!」


 それに反論したのは水鏡を持っているフラックスだ。


「この水鏡はウィスタリアの初代国王陛下の時代に、建国に助力した私の先祖が妖精から賜った一品です。現在の技術では同じものを作るどころか、干渉さえできません」

「我が国の宝として諸外国でも有名な物です。それを疑うというのですか?」


 女王陛下のアイリスの援護で、貴族は押し黙るしかなくなった。


「お前が触れればいいだけだろう。何かやましいことでもあるというのか?」


 とうとうサルファー皇子が口火を切って、貴族を睨みつける。

 その言葉に帝国の貴族は肩を落として、フラックスに向き直ると鏡に―――攻撃を仕掛けた。


「エアスラッシュ!」


 矢のように飛んでいく風の魔法に、フラックスを助けようと飛び出そうとしたが片手を掴まれて止められた。


「大丈夫」


 私を止めたのは、いつの間にか傍に来ていたジェードだった。


 ひょっとして、何か起こるのを見越して傍に来てたの?


 疑問に思っている間に魔法はフラックスの方へ飛んでいく。

 しかしフラックスは水鏡を守るどころか、盾にするように両手で掲げた。

 すると水鏡の鏡面が輝きながら波打つ。

 それに合わせて飛んできた風の魔法は水鏡に音もなく吸い込まれてしまった。

 一瞬の静寂。

 再び水鏡の鏡面が揺れたと思ったら、同じような攻撃が魔法を撃って逃げようとした貴族を追尾するように飛んでいく。

 帝国の貴族は、防御する間もなく部屋の壁まで吹っ飛ばされていった。


『―――これが成功すれば、お前の持つ帝国の領地は安堵してやろう』

『ありがとうございます。必ずや成功させて見せましょう』


 水鏡から帝国の貴族と、異国の民族衣装を着た男の映像が流される。

 あの民族衣装はウィスタリア王国の物でもなければサルファー帝国の物でもない独特な物だった。

 皆がその映像に注視している中、クロッカス殿下が鼻を鳴らして足を組み替える。


「愚かだな。魔法どころか別離攻撃でも壊れないからこそ、建国時から変わらない姿で存在しているというのに」


 想像以上のチートアイテムだった。国宝級と言われるのも納得の代物である。


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