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緊急会合

 呼び出されたのは会議室のような広い部屋だった。

 ロータスの後に続いて中に入ると、左右の長机を挟んで座っている人々の視線が集中するのが嫌でもわかった。

 帝国側も王国側も、明らかに貴族とわかるメンツが揃っている。

 帝国側にはサルファー皇子と、煌びやかな衣装を身につけている貴族や護衛達。

 王国側にはヒロインのアイリス女王陛下が座し、横にはマゼンダ団長と、いつの間にか控えに回っているジェードがいる。

 更にクロッカス殿下と護衛のグレイ隊長、控えにアンバーも当然のようにいる。

 そこにロータスと、私達を連れてきたフラックスまでいるのだから、ゲームの主要メンバーがほぼ揃っているようなものだ。


 私の場違い感が凄い。胃が痛い。帰りたい。


 そんな泣き言を言う訳にはいかないので、とりあえずロータスの影に隠れて神妙な顔をしておく。

 私達が入って来たのを見て、クロッカス殿下が口を開いた。


「彼らはジョン皇子と共に事件に遭遇した者達だ。ロータス、何が起きたか説明してくれ」

「......はい」


 お偉いさん方の視線がロータスに集中する。

 ロータスはそれに怯む事なく、自分の目撃した事を説明し始めた。


 いきなり連れて来られて、いきなり説明しろって言われて話せるの凄いな。私には無理だ。


 ロータスに感心すると共に、私に周囲の注意を向けないようにしてくれたクロッカス殿下に感謝する。

 こっそり殿下を盗み見ると、私の視線に気づいたのか殿下から気遣うような眼差しを向けられた。

 痩せた......というか、やつれた気がする。

 やっぱり教会の件と今回の帝国の訪問が被ったせいで激務なのだろう。

 そんな時に私と話せる訳がない。グレイ隊長に我が儘を言うんじゃなかった。

 申し訳なさから視線を逸らすと、丁度ロータスの説明が終わった所だった。

 サルファー皇子が同意するように頷く。


「今の説明で間違いない。私は帝国から一緒に来た召使いに窓から突き落とされたんだがーーー」

「その者は死体で発見されました。口封じされたのか、偽物と入れ替わっていたかわかりませんが、我々帝国の者が皇子を害する等ありえません」


 そう言って、帝国側の貴族はこちらを睨んでいる。

 今回の事は王国のせいだと思っているのだろう。

 結局はゲーム通りの流れになってしまうのか。


 私がもう少し早く思い出していれば......!


 歯噛みしながら何とか打開策がないか考えを巡らせていると、突然アイリスが立ち上がった。


「それは違います。これはウィステリア王国とサルファー帝国の仲を裂こうとする罠です」


 唐突なアイリスの発言に、私もロータスも帝国の人間もポカンとしている。

 ただ、王国側に動揺は見られない。


 どうなってるの......?


 パニックになる私の前で、フラックスが全員に見せるように取り出したのは『真実の水鏡』だ。


 そうだ。あのチートアイテムがあったんだった。


 『真実の水鏡』があれば犯人が自供しなくても、死んでいても関係ない。

 触れれば強制的に真実は白日の元に晒される。

 ゲームで最初から出したら、シナリオの謎が全て台無しになる一品だ。

 だから『真実の水鏡』はフラックスルートのラスボス和解ルートにしか出てこない。


 そこまで考えて、少し背筋が冷たくなった。


 そういえば、あの『水鏡』も『誰か』が盗んでアネモネに渡した物だ。

 それが『誰』だったのかは未だにわかっていない。

 あの時もその『誰か』は、この世界がゲームだと知っている『転生者』じゃないかと思ったけれど、あまりにも行動が謎過ぎて、『転生者』がわざわざこんな事をするはずないと結論付けたんだった。


 まさか王国と帝国の争いを起こさせない為に、先んじて『水鏡』を人目に見せる事が目的だった......?


 アネモネの件で騒ぎが起こり、『水鏡』が大勢の目に触れれば、騒ぎの結果はどうあれ『ブルーアシード家の家宝』なのだから、『水鏡』はフラックスの手に返るだろう。

 クロッカス殿下も『水鏡』をフラックスに返す事を望んでいたから、反対する者は殿下が黙らせるはずだ。

 その後に教会や帝国との問題が起きても、『水鏡』で真相を見破る事が出来る。


 ーーーだとしたら、余りにも用意周到すぎる。


 急に私以外の『転生者』の存在が怖くなってきた。

 ひょっとしたら私が知らないだけで、今まで別ルートにも介入してるんじゃないだろうか。


 そんな考えが頭の端をよぎった。


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