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ファイアーボール

「危ない!」


 私の背後を見てロータスが叫ぶ。

 見ればナイフ投げの暗殺者が、再びこちらに狙いを定めたところだった。


「ファイアーボール!」


 ロータスが私の背後に向けて火の玉を飛ばす。

 が、軌道の逸れた火はあらぬところに飛んでいく。


 チュートリアルの時と変わってないな。


 ロータスを見直したことを後悔しそうになったけども、そこで異変が生じた。

 明らかに暗殺者から逸れて飛んで行った火の玉が、急激に角度を変えて暗殺者の方へ向かったのだ。

 それも明らかに急加速して。

 脇に飛んで行った火の玉を取るに足らないと無視していた暗殺者達には、とんでもない奇襲だ。

 もろに暗殺者を直撃した火の玉は、直後に爆発を起こす。

 けたたましい爆音とともに吹っ飛んだ暗殺者二人は、そのまま地面に倒れて動かなくなった。


 明らかに初期に習得できるファイアーボールの威力じゃなくない?


 困惑してロータスを見ると、ロータスも困惑して私を見ていた。

 二人して答えも出ずに見つめ合っていると、ロータスの後ろの土の壁が崩れた。


「助けてくれてありがとう! 二人は命の恩人だ! 何とお礼を言っていいか!」


 そう言って笑顔のサルファー皇子が飛び出してきた。

 駆け寄ってきた皇子様は、なぜか私の手を握る。


「私のせいで危険にさらしてしまい、すまなかった。怪我はないかい?」

「私は大丈夫です。傷一つありません」


 皇子様のように優しく手を取られて見つめられたが、慌てて首を横に振る。

 本当に怪我を負っていないので離していただきたい。これ以上、巻き込まないでくれ。

 それに私を見つめる目が『優しさ』を装っているが、どこか値踏みされているような感じがして気味が悪い。

 クロッカス殿下の優しい眼差しとは、同じようで天と地の差がある。

 『腹黒皇子』って妹が言ってたのはコイツの事だったのか。


「そうか。だが是非、礼をさせてくれ。命の恩人だからな」


 ぐっと引き寄せられて囁かれる。


 やめろ。鳥肌が立ったわ。


 しかし一国の皇子にそんな事を言えるわけもないので、粛々と頭を下げて礼を取る。

 サルファー皇子は私の顔を面白そうに見つめた後に、ロータスに視線を移した。


「君も怪我をしてしまったようだね。私のせいだ。我が国は急病人が出た時に備えて医師(ヒーラー)も同席している。治療費もこちらで持つ」

「いえ。お気遣いは無用です。私は騎士としてすべきことをしたまでです」


 膝を付き、礼を取るロータス。

 明らかに魔法の挙動がおかしかったとはいえ、サルファー皇子から見ればロータスが一度に二人をまとめて倒したと見えただろう。

 ロータスの奢らぬ態度に、皇子は満足そうに頷いて手を差し伸べた。


「なんと素晴らしい騎士道精神だろう。気にいった。我が国にくれば貴殿を今よりも良い位に取り立ててやろう。是非、私の騎士になってほしい」


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