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 孤児院で幼馴染だったジェードが攻略対象だった衝撃と、孤児院への疑惑で頭がくらくらしてたらジェードを心配させてしまったらしい。

 ジェードは私に手を伸ばしかけ、はっとした表情でその手を下す。

 なんだその『こんな血塗られた手で普通の人に触れちゃいけないんだ』みたいな表情は。心が痛い……!

 私がゲームの世界だって幼少期から気づいてたら、ジェードがこんな目に合わずにすんだかもしれないのに。妹だったら絶対になんとかしてた。なんでこの世界の神は私を選んだんだ。

 罪悪感に苛まれていたら、ジェードが書類を渡してきた。


「ごめんね、サクラ。仕事中だから、そろそろ行かなくちゃ」

「あ、そうだよね。ごめん!」

「ううん。サクラに会えて良かった。……さよなら」


 悲し気な笑みを浮かべて歩き出そうとするジェード。


 いいのか、このまま行かせて。


 でもジェードに関わるってことは攻略対象に関わるってことで、前みたいに危ない目に合う可能性が……。


 知るか!!

 たかが可能性でこんな悲しい顔した年下の幼馴染を見捨てられるほど、薄情じゃないわ!!

 ロータスルートだけでゲーム終わってるかもしれないし!


「待って、ジェード!」


 ジェードの腕を掴む。ジェードは驚いた顔で振り返った。


「せっかく会えたんだから、またお話しよう? 孤児院にいた時みたいに」

 

 仕事の愚痴でもなんでも聞くから!


「サクラ……。僕は君と関わっていい人間じゃない。変わってしまったんだ。」


 うっそんな儚げな顔で微笑まないでくれ……罪悪感で胸が痛い。


「変わったってジェードはジェードだよ。私は今も家族だと思ってる」


 私の言葉にジェードが目を伏せる。さらに言葉を続けようとした時、


「何をお喋りしているんですか?」


 やってきたのはアンバーだ。

 あ、思い出した。ジェードルートのルートボスがアンバーだ。戦闘中でも煽ってくるタイプの敵だった。


「お二人とも仕事中でしょう。特にジェード、貴方は時間がないはずでは?」

「……わかってる」


 ジェードの顔からすっと表情が消える。

 おお、ゲームと同じ顔……って感心してる場合じゃない。


「違うんです、私が長話しちゃって……。ごめんね、ジェード。忙しいのに」

「……サクラのせいじゃないよ」


 ジェードがゆっくりと首を横に振る。まるで機械みたいに抑揚がない。これが『普段』のジェードなんだろう。

 そんな私たちを、アンバーはまるで新しい玩具でも見つけたような顔で眺めてくる。思わず不快感を顕に睨み返すと、ようやく彼は口を開いた。

 

「サクラさん。ジェードと仲良くなったんですか? それは運がないですね」


 アンバーはそれは楽しそうに悪役らしい笑顔を浮かべる。


「その子はもうすぐ死ぬんですから」


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