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他人のそら似

「自分から厄介事に飛び込もうとしないで下さい。そういうところ、殿下にそっくりですよ」

「殿下がそうだったけど、厄介事に関わると何かしら事件に巻き込まれるからな。こっちの精神が持たないから止めてくれ。本当に嬢ちゃんは父親似だな」


 こんな時だけ息ぴったりの二人に真顔で注意されて、二の句も繋げずに話を終わりにさせられてしまった。

 その後も何度か同じように申し出てみたんだけど、にべもなく断られてしまう。

 困った。

 これだとシナリオを思い出すどころか、シナリオに関わる事も出来ない。

 どうにも今までの私の巻き込まれ率と、殿下との諸々の類似点から警戒されているらしい。

 巻き込まれ率はともかく、性格は殿下に似ているはずがないんだけど。

 なんせ私の性格は前世とそんなに変わっていないので、今世の父親であるクロッカス殿下に似るはずがないのだ。

 しかしそんな言い訳を言えるはずもなく、結局は何も関わることが出来ずに外交団がやってくる日を迎えてしまった。


 何事もなく終わってくれればいいんだけど。


 でもフォーサイシアがアイリスには好きな人がいるって言っていた。そうなるとサルファー皇子と結ばれるハッピーエンドを迎える事はない。

 バッドエンドは二国間で戦争、ノーマルエンドで現状維持だったはずなので、せめてノーマルエンドになってほしい。

 城に入ってくる荘厳な馬車や追従する騎士達を城の廊下からひっそり見ながら願っていると、視界の端で怪しい動きをしている人物に気がついた。

 私の他にも廊下から外交団を見物している人は何人もいる。

 その人物はフードを目深にかぶり、人々隠れるようにして外交団に目もくれずにこっそり廊下を移動している。

 しかし暗殺者かスパイにしては動きがお粗末だ。

 あれでは私でなくても、いつか誰かに見つかるだろう。


 院長に指導された私の方が、まだもう少しマシに隠密出来るぞ。


 でもこのタイミングで怪しい動きをしている人物は、ゲームのシナリオ上でそう動かざるを得ない人では?

 もしかしたらゲームと全く関係ないかもしれないけど、シナリオの流れを思い出せない私には判断がつかない。

 考えている内に、件の人物は人目につかない中庭の草木の影に向かっていく。

 このまま迷っていたら見失ってしまう。


 いっそ脅して聞き出すか。


 ゲームと関係なくても怪しい動きをしてるし、『お話』してグレイ隊長に突き出してこよう。

 私は怪しい人物の後を追って中庭へ向かった。

 人々の視界を潜り、気配を消して近づくのを忘れない。

 院長仕込みのおかげか、相手に全く気づかれずに背後まで迫る。

 あちらも草木の影に隠れているので、他の人に気づかれる事もない。


 チャンスだ。

 私は怪しいフードの人物の背後から口を塞ぎ、反対の手で相手の首筋に金属を当てる。


「動くな」


 私の低い声に相手がビクリと肩を震わせて止まる。

 きっと首筋に刃物を突きつけられてると思ってるんだろうな。

 残念、実際はお昼に使ったスプーンだ。

 暗がりでよく見えない首にヒヤッとした金属を当てられたら勘違いもする。

 これも院長から教わった人を脅す時の小技である。


 ありがとう、院長。でも何を想定してこれを教えたんですか?


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