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パニックホラー

 少し怖いけど聞いてみる。

 どんなきっかけでゲーム内容を思い出すかわからないからね。


「殿下は姐さんの弟と協力して新しい魔法を作ったんだよ。死霊術の改良だったかな……。戦場の死体を動かして敵にぶつけたんだけど、普通の術と違って死体に噛まれるとそいつも5分以内に操られる屍になるんだ」


 それってゾンビって言うんじゃないか?

 剣と魔法のファンタジー世界でパニックホラーをするな。

 ドン引きしている私の前で何故かアンバーが嬉しそうに拳を握る。


「ちゃんと帝国の兵士の死体だけを選んで術をかけていたので安心してください。死体は戦場に転がってますし、再利用できてエコでしょう? 倍々で味方が増えていくようなものですよ。さっきまで味方だった人が死体になって襲い掛かてくるので、向こうはパニックになりますし、同士討ちにもなって混乱してくれるから、こちらは戦うのが楽になる寸法です」

「貴方の論理感が終わってる事がよくわかりました。そんな内容を嬉々として話さないで下さい」


 前世でゾンビを撃つゲームや映画を知ってるからまだいいけど、『ゾンビ』という言葉も知らない状態で現実にそんなことが起こったらパニックにもなるわ。

 ラスボスだけにやることがえげつない。


「結果として帝国には大勝したんだけど、ウィステリア国内でも殿下が恐れられてな。結果的に閑職に追いやられたんだんだ」


 そりゃそうだ。

 今までの流れで殿下が追いやられた理由を納得する。


「国内でも死体を使って同じような反乱や虐殺を起こされたらたまったものじゃないですからね。クロッカス殿下はそんなことしない人だけど、怖いものは怖いでしょう。むしろよく暗殺とかで始末されずにいましたね」


 『王の影』のアンバーを見ながら揶揄するが、アンバーはにこやかな表情を崩さない。

 反対にグレイ隊長が半笑いで答えてくれた。


「姐さんが『クロッカス殿下にもしもの事があったら、雪の妖精の怒りを買います』って言って脅したからな」

「それって『雪の妖精』という名の院長では?」

「そうともいう」


 そうだった。『王の影』のトップと仲が良いんだったわ。

 クロッカス殿下と院長は義理の兄弟だし、個人的にも仲が良さそうだから、殿下が殺されそうなら院長が怒ってもおかしくない。

 ゾンビ化魔法を制作できる院長を怒らせたら、次に何するかわからないからな。

 呆れていたらアンバーが口を開いた。


「帝国では戦のあとに精神に不調をきたした人々が続出したと聞きます。きっちりトラウマを植え付けられましたし、殿下の目が黒いうちは余程の事がない限り戦争なんて仕掛けてきませんよ。今でも殿下が黙って座ってるだけで勝手にこちらの有利に話が進むくらいなので」


 その余程の事が起こってしまう可能性があるんですよ。

 そのために色々情報は聞いたけど、ゲームの内容について全く思い出せなかった。

 もう少し外交団やサルファー皇子の事を聞いたら思い出せるかな。

 シナリオの流れがわかれば動きやすくなるはずだ。

 私はそっと二人を見上げる。

 殿下の側近どちらかに仕事としてついて行けば、良い感じにシナリオに干渉出来る立ち位置にいけるんじゃないだろうか。

 二人とも今回はルートボスじゃないし、味方であることがわかっているから近くに居ればまだ安全だ。

 虎穴に入らずんば虎子を得ず、だ。


「その、私にも何かお手伝いできることはありませんか? 殿下もお二人もお忙しいでしょう?」


 覚悟を決めて申し出てみる。が。


「いえ、結構です」

「嬢ちゃんは大人しくしてろ。頼むから」


 バッサリと断られてしまった。


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