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サルファー帝国

「本当に嫌な奴だな。だからお前は嫌いなんだよ。いつも俺の事を馬鹿にしやがって」


 グレイ隊長は吐き捨てるように言うと拳を収める。

 これ、私がいなかったら殴り合いになってたな。グレイ隊長が大人で助かった。

 一方アンバーは楽し気に口元に手を当てる。


「馬鹿になんてしてませんよ。私はグレイを友達だと思ってます」

「喧嘩売ってるのか? 嫌いだって言ってるだろ。いつか絶対に勝ってやるからな」

「楽しみにしてますね」


 グレイ隊長の剣のある睨みもどこ吹く風で、アンバーはにこやかに応答する。

 アンバーの方がグレイ隊長より強いのか。

 意外だけど、最初に選ばれるロータスルートのボスであるグレイ隊長と、隠しルートのジェードのボスであるアンバーではゲーム的にもアンバーの方が強かった。

 そういうところが現実にも反映されているのかもしれない。

 一人納得していると、意識を切り替えたのかグレイ隊長が真面目な顔をアンバーに向ける。


「そもそもアンバーは俺を探してたんだろ。なんの用だ」

「サルファー帝国から外交団が来るので、その件ですよ」

「ああ、あれか」


 グレイ隊長はそれだけで納得がいったように頷く。

 そのまま話を続ける二人の横で、私は唐突に妹の言葉を思い出した。


『お姉ちゃん! やっと最後の攻略対象のルートまで来たよ! 最後は帝国の皇子様なんだ~!』


 サルファー帝国はウィステリア王国の隣にある大国だ。

 そして『恋革』の攻略対象である、ジョン・ブリアン・サルファー皇子の出身地だ。

 彼も隠しルートの攻略対象であり、フラックスルートでラスボスであるクロッカス殿下との和解ルートを見なければルートが解禁されないのだ。

 確か、彼のルートはウィステリア王国に外交団がやってくるのが始まりだったはずだ。

 これまでの経験から察するに、これから帝国ルートが始まってしまうことを意味している。

 しかもこのルート、下手をすると帝国と王国の戦争が始まってしまうルートなのだ。


 それは流石に阻止したい。


 他の攻略対象でもアイリスとクロッカス殿下の対立の末に『恋の革命』という名の内乱という物騒な事が起きていた。でも国と国との戦争はそれ以上に被害が大きくなる。

 今ある日常を壊したくないので、出来れば平和に終わってほしい。

 しかもサルファー皇子のルートが何事もなく終わってくれれば、ゲームに振り回されることはなくなるはずだ。

 攻略対象は属性魔法である火・水・土・風・光・闇の6種類にそれぞれ対応するようになっている。つまり全部で6人なのだ。

 火はロータス。水はフラックス。風はジェード。光はフォーサイシア。闇はネイビー。

 残る土がサルファー皇子というわけだ。

 ちなみに主人公のアイリスは全属性持ちとかいうチートである。攻略対象との交流によって使える魔法が変わるのだ。流石、主人公。

 ゲームに関わるのは嫌だけど、戦争を避けるためにも、ゲームにこれ以上振り回されないためにも、穏便に帝国ルートを終わらせたい。


 問題は私がゲームの内容をほとんど覚えていない事である。


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