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推し談議

「そもそもダリアと話しても、お互いの近況とか愚痴とか話すだけで色気なんてねーよ。お互いに一番大事なのがお互いじゃないんだ」


 グレイ隊長が静かに目を閉じて語る。

 男女の友情が成立するかは諸説あるけど、グレイ隊長がここまで言うなら本当だろう。

 それはそれとして、グレイ隊長が一番大事な物ってなんだろう。気になる。


「グレイ隊長の一番大事なのは何ですか?」

「嬢ちゃんだよ。次に殿下」


 開いた目が私に向けられる。

 凄く真っ直ぐな目だった。

 真顔でとんでもない事を言われてこちらがビビる。


「え? 私!?」

「一番守りたいものだろ? 俺も嬢ちゃんがチビっこい頃から知ってるんだ。殿下にとっても一番大事なものでもあるからな。嬢ちゃんが一番だよ」


 真っ直ぐに言われると少し照れ臭い。

 こう言ってくれるのは『クロッカス殿下の娘』だからだろうけど、真っ直ぐにそんな事を言ってもらえると嬉しい。

 一方でアンバーはしらっとした目でグレイ隊長を見つめる。


「そんなんだからモテないんですよ、グレイは。『私とあの子、どっちが大事なの?』って聞かれたら、サクラさんって即答しそうですよね」

「当たり前だろ。殿下と比べられても殿下って答えるぜ」


 真顔で答えたグレイ隊長に、アンバーは口元に手を当ててドン引きしている。

 私も一応女子として声をあげる。


「間違っても恋人にそんな事を言っちゃダメですよ」

「嘘をつくより良いだろ」


 グレイ隊長は真顔で首を傾げている。

 真面目で常識人だと思ってたけど、グレイ隊長も問題ある人だったんだな......。

 恋人として付き合うにも殿下より下、3番手以下にしかなれないのは可哀想すぎる。

 私の席を空けるから、恋人が出来たら一番にしてあげて欲しい。

 アンバーと一緒に引いた目でグレイ隊長を見ていたら、その視線に耐えられなかったのか、グレイ隊長はアンバーに目を向けた。


「お前も人の事言えないだろ」

「私はそもそも女性に困った事ありませんから。恋人も結婚も面倒だから興味ないだけです。情報収集で利用するくらいですかね」


 モテるアピールか?


 本当に興味なさそうに髪を弄りながら言うのが余計に腹が立つポイントだ。

 しかし私をチラッと見て、アンバーは何故かため息をつく。


「それに、そんな事で無駄な時間を過ごすより姪っ子と過ごしたいんです。忙しいんですよ、私は」

「『王の影』としてるからだろーが。自業自得だ」


 グレイ隊長に呆れられても、アンバーはそっぽを向いて聞かない振りをしている。

 でも意外だ。

 アンバーって血も涙もないと思ってたけど、家族思いなところもあるんだ。


「アンバーは姪っ子が大事なんですね」

「ええ。昔は姉さんで今は姪っ子が一番です」


 なぜか胸を張って答えるアンバー。

 今度はグレイ隊長が引いた目でアンバーを見ている。


「俺と似たような物じゃねーか」

「一緒にしないでください」


 ピシャリと言い放ったアンバーに、グレイ隊長の眉が釣り上がる。

 再び言い合いになりそうな二人に、慌てて別の話題を振る。


「そ、それならマゼンタ団長はどうなんでしょうね?」

「ダリアはアイリス女王陛下だよ。妹とか娘みたいなのに近いかな。近況を聞く時に一番嬉しそうに話してくれるんだ」


 そういうグレイ隊長も嬉しそうだ。

 ひょっとしてマゼンタ団長との近況報告って『お互いの推しを語り合う会』だったりする?

 推し談議出来る相手は貴重って妹も言ってたし。

 お互いに別担だから喧嘩しないで語り合えるのかもしれない。

 なんにせよ、仲良いのは本当なんだな。

 それを聞いてアンバーもふっと笑う。


「マゼンタ団長と話すついでに、女王陛下サイドの情報も抜いてきてくれませんか? グレイなら出来るでしょう?」

「お前らの仕事だろ。お前がやれよ」


 我慢の限界に達したのか、グレイ隊長がアンバーの胸倉を掴もうとするが、余裕の表情で一歩引かれて躱された。

 再び一触即発の空気になってしまった。

 油断も隙もない。


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