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解釈次第

「こ、こんなところで喧嘩なんて......」


 慌てて止めようとした私を見て、グレイ隊長がハッとした顔になる。


「悪い、嬢ちゃん。怖がらせたな」

「本当ですよ、グレイ。いきなり殴りかからないで下さい」

「お前が悪いんだろうが!!」


 再びアンバーを睨みつけるグレイ隊長をハラハラしながら見守る。

 実力者二人の喧嘩を止められる自信はないぞ。

 一方のアンバーは涼しい顔だ。

 そこでようやく気づいたが、廊下で騒いでいるのに誰も注意を向けない。

 それどころか、まるで私達が見えてもいないように通り過ぎて行く。

 疑問に思っていると、アンバーがそれに気づいたのか横から説明してきた。


「ああ、話を聞かれると面倒なので、私達の事は他人が意識出来ないようにしてます。情報収集するのによく使うんですよ」

「お前は無駄に器用だよな」


 グレイ隊長が自分を落ち着かせるように頭を振りながら吐き捨てる。


 そんなのありなのか。


 でもグレイ隊長が秘密にしてる事を他人の目があるところでサラッと曝露してきた理由がわかった。

 驚くと同時に納得する。


「おい、アンバーが変な事言うから絶対に誤解してるじゃねーか。......嬢ちゃん、ちょっと説明するから来てくれるか?」


 グレイ隊長が頭を掻きながら私に言う。


「え、あ、私、誰にも言ったりしませんから! 安心してください!」


 慌てて弁明するとグレイ隊長は深いため息をついた。


「あー! だから違うって。おい、アンバー。お前のせいだぞ。お前も来い」

「私は間違った事を言ってませんよ」

「いいから来い」


 座った目でアンバーの腕を掴んだグレイ隊長が私を手招きする。

 その気迫に押されて、私もグレイ隊長の後について行くことにした。

 グレイ隊長に連れられてきたのはグレイ隊長が使っている隊長室だ。

 あまり使われていないのか、物が少ない。机に椅子、書類の並んだ棚くらいだ。

 部屋に入った時点でグレイ隊長がアンバーに目配せする。

 それを受けてアンバーは面倒そうに指を鳴らした。

 特に部屋の中に変わったことは起きていないが、ひょっとして盗聴・透視防止でもしたのだろうか。

 そうだとしたら、一瞬で部屋全体に魔法をかけられるアンバーはとてつもなく優秀だ。

 そんなことできるのは院長くらいだと思っていた。

 感心していたら、グレイ隊長が真剣な顔で私に向き直った。


「まず言わせてもらうとダリアとは男女の仲じゃない。勘違いしないでくれ」

「ダリア?」


 誰の事だと首を傾げる私にアンバーが補足してくれる


「マゼンタ団長の事ですよ」

「名前を呼び捨てにしてる......!?」

「ダリアは昔、姐さんに連れられてきて知り合ったんだ。一緒に姐さんにボコられ……特訓した仲だからな、仲が良いのは否定しねーよ」


 マゼンタ団長もリリーさんに鍛えてもらったって言ってたけど、やっぱりグレイ隊長と一緒だったんだ。


「でも仲が悪いフリをしているのは……?」

「ダリアは貴族のお嬢様だぞ。姐さんとも俺とも親しくしたたら悪目立ちするだろうが。ただでさえ、女で騎士になるなんてことして目立ってんのに。悪い噂が立たないように気を遣ってんだよ。ダリアも俺が微妙な立場にならないようにしてくれてるんだよ」


 グレイ隊長が遠くを見ながら淡々と話す。

 嘘を言っているように見えないし、私は改めてアンバーを睨んだ。


「でもアンバーが逢い引きって……」

「愚痴言ったりするのにたまに会ってるだけだよ。お互いの立場があるから隠れてだけど、それを言ってんだろ」

「私は付き合っているとは言ってませんからね」


 アンバーが素知らぬ顔で私の勘違いを正す。


 本当に性格悪いな、こいつ。


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