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恋話

 フラックスと話した翌日。

 今日はグレイ隊長といつもの特訓の約束をしていた日だ。

 クロッカス殿下とあれこれあったので、グレイ隊長も私に思う事があるだろうし、約束もなかった事にされるかもしれない。

 でも話くらいは聞いてくれると思う。

 なんせグレイ隊長なので。

 そんな事を考えながらお城の中を歩いていたら、柱の影から呼び止められた。


「もし、そこの貴女」

「はい?」


 思わず立ち止まって振り返ると、柱の影から三人の女性が出てきた。

 二人は貴族がよく着るような豪奢なドレスで、一人はメイド服だ。

 誰だろう。こんな綺麗な人達と知り合いではないんだけど。

 道にでも迷ったのかと首を傾げていたら、ドレスの女性が厳しい目で手に持っていた扇をビシッとこちらに向けてきた。


「貴女、フォーサイシア様とどのような関係ですの?」

「え」


 見れば扇を突きつけてきた女性以外も厳しい目つきで私を見ている。メイドさんまで同様だ。


 これって少女漫画や乙女ゲームでよくあるやつじゃん!


 体育館裏に呼び出されて女の子達に色々言われるイベントだ。

 実際は体育館裏じゃなくて、お城なんだけど。

 ついでにアイリスじゃなくて、私にイベントが起こるのは意味がわからない。

 わからないけど、今までの巻き込まれた事件に比べたら平和な物だ。

 心は凪いでいる。

 今度はもう一人のドレスの女性が、扇を口で隠しながら冷たい表情を向ける。


「フォーサイシア様だけではないわ。昨日もフラックス様と遅くまで何をしていたのかしら!」

「仕事です」


 昨日は私と話してた分もあるけど、真面目に仕事してて変な誤解をするのは止めてほしい。

 今度は鋭い目つきのメイドさんが口を開いた。


「ジェードは普段から無口ですけど、口を開けば貴女の事ばかり。女王陛下をお支えするのに忙しいのに、束縛するのは止めてください!」

「ジェードは弟です。束縛なんてしてませんよ」


 ジェード、職場だとそんな感じなのか。

 確かにゲームだと口数少ない謎めいた美少年だった。

 職場でのジェードを知っているということは、彼女も女王陛下付きの使用人なんだろう。


 ひょっとして、ジェードの事が好きなのか?


 思わずメイドさんの手を取る。


「ジェードの事、心配してくれてるんですね。ありがとう。姉として嬉しいです。貴女みたいに素敵な女性に思われて、ジェードも幸せですね。良ければ普段ジェードがどうしているか、話を聞きたいのでお話ししません? この後、時間あります? 良ければジェードの昔話もしますよ?」


 メイドさんの手を取ったまま、熱く見つめる。

 メイドさんは目を丸くして、オロオロと視線を彷徨わせる。

 まるで子ウサギみたいだ。


「ふふ、可愛い」


 思わず溢れた言葉に、メイドさんの頬が赤く染まる。

 そんなメイドさんを見て、ドレスの二人が目くじらを立てる。


「私達の話を聞いていました!?」


 改めて二人をよく見れば、ドレスは青と黄色。装飾品の色も同じ色だ。


「推しコーデ......じゃない。フラックスとフォーサイシアをイメージした衣装なんですね。ひょっとしてオーダーメイドですか? フラックスの瞳みたいなイヤリングも、フォーサイシアの髪みたいに綺麗なネイルも素敵ですね!」


 推しコーデって言葉がこの世界で通じるかわからないから言い直した。

 二人も目を丸くして私を見る。

 二人とも貴族っぽいから、下手に恋愛したり思いを伝えたりできないのだろう。


 それでも相手を思う乙女心......。いいね、素敵だ。


「お二人の事も応援してます。二人にさりげなく伝えておくので、お名前は? 良ければ定期的に会いませんか!?」


 私の勢いにタジタジになっている。

 職場は頼れるお姉様方が多いし、孤児院は年下の子達しか残ってないから、同じ年くらいの女性との会話に飢えてるんだ。


 人の恋話は聞きたい派である。


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