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喫茶店にて

「こうしてゆっくり話すの、久しぶりだね」


 目の前のジェードが嬉しそうに微笑む。

 ここはジェードと以前にも訪れた人気のカフェだ。あいもかわらず、女性客で溢れている。

 女の子が好きそうな可愛らしく華やかな店内。甘いお菓子の香り。目の前のテーブルには美味しい紅茶。そしてテーブルの向かいには天使のような美少年。

 状況は以前来た時と全く同じだ。

 それなのに前に訪れたのが遠い昔のように感じる。


「あれから色々あったからね......」


 思わず遠い目になるほど、最近色々ありすぎた。

 私の呟きにジェードが半目になって腕を組む。


「サクラが危ない事に首を突っ込むからだよ。反省して」

「はい。反省してます」


 珍しく本気で怒っているジェードに思わず敬語になる。

 年下に本気で叱られると胸に刺さるものがある。

 フラックスの件は巻き込まれただけだけど、子ども達の誘拐を含む双子の件は完全に自分から巻き込まれに行ってしまった。

 ジェードも心配しているから怒っているんだろうし、これからはこんな事がないように大人しくしていよう。

 姉として見本にならないといけないのに。反省しなければ。

 ジェードは私の言葉を信用していないようで、まだ腕を組んだままジト目で私を見つめている。

 その視線に居た堪れなさを感じ、私は話題を変える事にした。


「ジェードは私達と別れた後、大丈夫だった?」


 ジェードは大聖堂の裏庭で私と別れた後にグレイ隊長に状況を知らせに行ってくれていた。

 しかしジェードに再会出来たのは事件が解決してからだ。

 お互いの無事は確認出来ていたが、ジェードは元から女王陛下付きの執事で忙しく、私も殿下との話し合いやら仕事やらでタイミングが合わず、詳しく話をする時間がなかった。

 ようやくお互いの休みに会う約束をして、今に至るという訳だ。


「特に問題なく大聖堂から脱出出来たよ。王城でグレイ隊長を見つけた時も、アイツ......モブ、だっけ? アイツが先に説明してくれてたから、話がスムーズに進んだし」


 そこでジェードは悲しそうに視線を落とした。


「でも『職場』に戻らないといけなかったから......。助けに行けなくてごめんね」

「ううん。知らせてくれて、ありがとう。私こそ心配させてごめんね」


 人目があるから詳しく言わないが『職場』とは『王の影』の事だろう。

 元々は院長の命令で大聖堂に潜入していたため、報告に戻らないとならなかったんだろう。


「報告の時に院長から何か理不尽な事、言われなかった? 些細な事でも私に言って。あとで殴っておくから」

「止めて。院長からは特に何も言われなかったから」


 ジェードが青い顔で首を横に振る。

 やっぱり院長のパワハラがトラウマになっている。


 この前会った時は院長に逃げられたけど、この件に関しては絶対に殴るからな。


「むしろ院長は僕が戻る前に飛び出して行ったみたいで、僕が報告できたのはサクラが体調不良で倒れて帰ってきた後だったんだ。サクラの体調が悪かったから、そっちに気を取られてたみたいで僕の報告も半分聞き流してたくらいだし......」


 院長、上に立つの向いてないんじゃないかな。


 私に何かあったら1秒以内に駆けつけると言う言葉通りに助けに来てくれたのだろうが、組織のトップとして疑問が残る対応である。

 『雪の妖精』に瓜二つで、院長本人もめちゃくちゃ強いから、恐れ多いのと怖いのが重なって今まで誰も注意出来なかったんじゃないかな。

 私の事に関してはクロッカス殿下に怒られたとか言ってたけど、『王の影』の内部事情は流石に殿下も詳しく知らないから叱れないだろうし。


 やっぱり私が殴ってでも注意しなければ。


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