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袋の鼠

 フリーフォールで降りてきた私達と違って、上から下まで伝令が伝わるのに時間がかかると思ったのに。

 上からいくら叫んでも下には届かない高さだ。

 下で待機してた衛兵も、まさか上からそのまま降りてくるなんて思わず、扉の前で逃がさないように構えていたはずだ。

 だから集まるまで時間がかかると思ってたのに、やたら早い。

 そんな疑問を抱いていたら、余裕の笑みの教皇が口を開いた。


「まさか、あんな方法で逃げるなんて。上を見上げていなければ逃げられるところだった」


 呑気に上を眺めていたのはアンタか。


 教皇からしたら私達は袋の鼠。楽々捕まえられる予定だから、気楽に天気でも眺めていたのかもしれない。

 それに私も、度重なる聴力強化と強制転移に加えてフリーフォールまでしたせいで、体調が最悪なのも敗因である。


 平気な顔を装っているが、正直今にも吐きそうだ。


 多勢に無勢の中、果敢にも前に出たのはフォーサイシアだ。


「父さん、証拠は揃っています! 虹の女神に恥じぬように罪を認めてください!」

「お前こそ目を覚ますのだ。そんな奴らに騙されて、偽りの証拠を信じるな。お前はまだ若い。まだやり直せるぞ」


 さっき教皇の私室で衛兵に囲まれた時、同じように証拠を提示したとしても『騙されている』とか『教皇に確認を取ります』と言われてお終いだ。証拠も取り上げられて、証明する手立てがなくなってしまう。

 いくらフォーサイシアが慕われていても、それ以上に信頼されて慕われているのが教皇だから。

 フォーサイシアを守るために、今にも飛び出しそうなネイビーの手を握って抑える。

 ルートボスのネイビーだったらこの人数でも勝てるかもしれないが、代わりにネイビーがお尋ね者になってしまう。

 ネイビーが暴れた後で、フォーサイシアによって教皇の罪を証明するまでにネイビーが捕まれば、絶対にネイビーを盾にされる。

 お互いにお互いを大事にしている双子だ。相手を犠牲にする選択肢は中々取れないだろう。

 ネイビーをクロッカス殿下やジェードのいる『王の影』が匿ってくれればいいが、教皇相手にそんな危ない橋を渡ってくれるだろうか。

 証拠があればクロッカス殿下は聞いてくれるかもしれない。


 よし、こうなったらネイビーと一緒に全力で暴れてやる。


 それでフォーサイシアに後は任せて、証拠を持ってネイビーと全力で逃げよう。

 そしてそのままグレイ隊長の所にでも駆け込むのだ。

 ただで教皇の影響の強い所に捕まるより、グレイ隊長やクロッカス殿下の方がまだまともな扱いをしてくれるはずだ。

 覚悟を決めて、じりじりと距離を詰めてくる衛兵の動きを注視する。


 向こうからかかってきてくれた方が、まだ『正当防衛』って言い訳できるかもしれないから。


 間合いを詰められ、お互いに動き出そうとした時。


「おいおい、随分楽しそうな事になってるじゃねーか」


 聞き覚えのある声が後方から響いた。

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