色違い
「サクラ?」
「何かありましたか?」
私が肖像画を眺めていると、向かいの部屋の探索が終わったのか双子が話しかけてきた。
「これなんですけど......何か知ってる?」
二人が見えやすいように私は肖像画の前から退く。
それに反応したのはフォーサイシアだ。
「この方はクロッカス殿下の奥方ですよね。雪の妖精の加護を持っていたと有名な方ですから、存じております。この容姿もあって、当時妖精の加護持ちと信用されたと聞いた事があります」
という事は、書いてある通り殿下の奥さんで間違いないみたいだ。
「その肖像画がなんでここにあるか知ってる?」
「さぁ......。私もあまり父の寝室に入った事がありませんし、気づきませんでした」
私の質問にフォーサイシアも困惑気味だ。
むしろドン引きしている気もする。
それはそう。父親が母親でも宗教画でもない絵を寝室に飾っていたら引く。
グラビアとかアイドルがいない、この世界では異質だ。
しかも人妻。
息子として、どう反応したらいいかわからないのだろう。
しかし、ネイビーの反応は違った。
「似てる!」
「似てる? 誰に?」
「サクラ!」
にっこり笑って私を指差すネイビー。
言われたこちらは困惑しかない。
「どこら辺が似てるの?」
こんな聖女みたいな美人に似てないよ。
しかもこの絵は院長によく似ている。
あんな人外じみたフェアリーフェイスとモブの私では天と地の差がある。
しかしネイビーは折れなかった。
「目、髪、色! 違う、だけ!」
「確かに目と髪の色は違いますけど、それ以外はサクラに良く似ていますね。目元の雰囲気を変えれば私達双子のように似てると思いますよ」
フォーサイシアまで同意してくる。
私は再度肖像画を見返した。
全く似てると思えない。
「目元の雰囲気が違えば、印象なんて大分違うんじゃないかな.......」
肖像画の女性は瞳が大きくて二重で優し気な印象を受ける目だ。
しかし私の目は切れ長で、第一印象で睨んでいるようなイメージを与えるタイプである。
クロッカス殿下と似たような目つきなんだよね。第一印象が悪くなるタイプだ。
目が与える印象って大事だから、やっぱり似てないと思うんだよね。この人とは。