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百合の肖像

 教皇の私室なんてどんな趣向を凝らした部屋だろうと思っていたが、広々とした部屋に重厚な絨毯と机に椅子、本棚が並ぶ品の良い部屋だった。

 虹の女神の小さな像が机の上に置いてあったり、ウィステリアと雪の妖精が描かれた壺が飾られていたりと所々装飾品が置いてあるが、どれも宗教関連の品のようだ。

 私が部屋を見回している間に、双子はさっさと部屋の探索を始めた。


「フォー。探す、本、見つけた!」

「ありがとう、兄さん。私も目当ての物は見つけたから、別のもお願い」

「わかった!」


 二人で効率よく分担して探索していく。

 記憶力のフォーサイシアと直感力のネイビーが合わさって最強に見える。


 やっぱり私、要らないのでは?


 どうも双子同士の脳内会話で役割分担と探す物を共有しているように感じる。

 便利だな。おかげで私は置いてきぼりだ。

 二人を見る限り、証拠の隠滅に走りそうもない。

 完全に手持ち無沙汰になってしまった。

 仕方がないので、二人がまだ探索していない奥の部屋を覗く。

 そちらは寝室になっていた。

 先程の部屋より一回り小さいが、一人には十分すぎる広さだ。キングサイズのベッドに加えて、こちらにも本棚が置いてある。

 本の背表紙を見ると、どれも宗教関連の専門書ばかりだ。

 教皇として慕われている人だ。

 実際、職務にも忠実でフォーサイシアと同じく真面目な人なんだろう。

 それが何を考えて道を踏み外してしまったのだろうか。

 ただ小難しい本に目を通しても、私はフォーサイシアと違って宗教に詳しくないからよくわからないし、何か文章に隠されていたとしても違和感に気づけないだろう。

 そう考えて、私は何気なくベッドに近づく。

 そこで一見すると気付けないが、ベッドサイド付近に布で隠された絵が飾られてあるのが見えた。

 しかもベッドに寝た時に丁度視界に入る真横の位置だ。

 わざわざ布で隠しているのも怪しい。

 特に罠もなさそうなので、私は躊躇いなくその布を取り払った。

 布の下にはやはり絵が飾られていた。

 一人の女性の絵だった。

 まるで聖母のような慈しみの表情を浮かべている。

 白いドレスを身に纏ったその絵は、まるで宗教画のようだった。

 しかし、こんな女性が出てくる御伽話も神話も私は知らない。

 何よりこの女性の瞳は金色で、波打つ美しい髪は白だった。

 このカラーリングはこの国において『雪の妖精』にしか使われない色だ。

 『雪の妖精』は絵本から銅像まで男性として描かれていて、女性として描かれるのは見た事がない。


 私としてはそれ以上に院長に似てるのが気になるんだけどさ。


 絵だからどこまで忠実に描かれているのかわからないけど、めちゃくちゃ院長に似てる。

 男女の差異はあれど、院長は元々中性的なふわふわフェアリーフェイスでカラーリングも似てるから、一瞬見間違えたぐらいだ。

 一体この女性は誰なんだろう。

 絵にヒントがないか見回していると、絵の縁に小さく文字が書かれているのを見つけた。


 『我が聖女 リリー』


 リリーって、クロッカス殿下の奥さんの?

 すでに亡くなっているとはいえ、人妻の絵を寝る時に見える位置にわざわざ飾る??


 ちょっと気持ち悪いな。


 クロッカス殿下の側近二人が教皇を毛嫌いしていた訳がわかった気がした。


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