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教皇の企み

 なんでフォーサイシアがここに?


 私が疑問を口にする前に、感動の再開を終えて抱擁を解いたフォーサイシアが私の方を向く。若干目尻に涙が残っているが、本当に嬉しそうな笑顔だ。

 彼は私の横にいるジェードをガン無視して、私の手を取った。


「兄さんを助けてくれてありがとうございます。貴女のお陰だと兄から聞きました。何とお礼を言ったらいいか……」

「ま、待って下さい。いつ私の話を聞いたんですか?」


 フォーサイシアとネイビーは再会してから熱い抱擁を交わしただけで、特に会話らしい会話をしていなかった。

 それなのにいつの間に私の話を共有したんだ。

 そもそもフォーサイシアは何で迷いなく、こんなところまで来たんだ?

 私の疑問に答えるように、フォーサイシアが話し出した。 


「私と兄さんはお互いに考えていることが大体わかるんです。どれだけ離れていても会話出来るようなものなので、ここに私が来るまでに兄さんから話は聞きました」

「双子、凄い……」

「サクラ? 普通はそんな事出来ないからね?」


 私が絶句していると、横からジェードに注意された。


 そうだよね。この世界が特別なんじゃなくて、この二人が特別なんだ。


 流石、双子で攻略対象なだけある。

 そんな事を考えていたら、フォーサイシアが握っている手とは反対の手をネイビーに握られた。

 横目で見るとにこにこ嬉しそうな顔のネイビーと目が合った。


 双子だから同じ事したいのかな。幼女だからね、仕方ない。


 そんなネイビーの行動を気にも止めずにフォーサイシアは話続ける。


「でも数年前から兄さんと話せなくなってしまって……。父さんに言っても取り合ってもらえませんでした。その頃から兄さんは隔離されて、私は会えなくなってしまいました」


 フォーサイシアがいつもの憂いを帯びた表情を見せる。

 そうか、兄の事があったからそんな顔してたのか。

 恐らくネイビーと話せなくなったのは、その頃にネイビーに暴走の魔法陣を刻まれたせいなんじゃないだろうか。


「ただ父さんからは私が女王陛下と親しくなれば、兄さんを外に出して私にも会わせてくれると言われました。なので言われた通りにしていたのですが……」


 それがフォーサイシアルートの始まりだったのか。

 だけど私は苦い表情でフォーサイシアに伝える。


「父親に言われた通り女王陛下と仲良くなっても、外に出されるネイビーは暴走の魔法陣で狂暴化してるから、まともに話せなかったと思いますよ」

「え……?」


 困惑するフォーサイシアに、ネイビーの左胸に刻まれた魔法陣を見せる。

 それを見て、フォーサイシアは真っ青になって口元を抑えた。


「に、兄さん……。これ、どうして……」

「とうさま、わるいこ、あかし」


 ネイビーが笑顔で自分を指さすのを見て、フォーサイシアが再び泣き出してしまった。

 ネイビーが慌てたようにフォーサイシアの頭を撫でる。

 そんな二人の手をはたき落として、ジェードが私の手を握りながら冷静に分析する。


 姉が取られたと思って寂しくなったのかな。弟だからね、仕方ない。


「なるほど。結果的に外に出た彼が暴れまわっても、魔法陣の事を知らなければ『外に出したいと言ったフォーサイシアのせいだ。お前が責任を取って捕まえてこい』と教皇に言われるだろうね」

「そ、そんな事をして、何の意味が……」


 フォーサイシアが嗚咽しながらジェードを見やる。


「さぁ? でもフォーサイシアは悪を討ち取った英雄として崇められるだろうし、教皇は教会内だけじゃなくて国内の影響力を増したかったんじゃない?」


 ジェードの言う通りだ。

 やむなくネイビーを追って各地に冒険に行くフォーサイシアと、それについて行く主人公のアイリス。

 危険な目に合えば吊り橋効果でお互いを好きになりやすくもなるだろう。

 そうなればフォーサイシアは女王陛下の伴侶になって、ネイビーはルートボスとして討ち取られる。

 ネイビーの魔法陣の事が世に知られても『フォーサイシアや教皇を恨んで力を得るために自分で付けた』と言えばいい。


 ネイビーが死ねば、誰も否定できない。


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