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力こそパワー

 そうと決まればさっさとこんな部屋からおさらばしよう。

 出入口には鉄格子。

 これも『身体強化』で鉄を曲げればいけるだろう。

 そう思って鉄格子を掴むと、あることに気が付いた。

 この鉄格子、魔力を遮断する術が施されている。

 ネイビーはルートボスになるくらい強い。ただの鉄格子ならこれくらい壊して出ていけたはずだ。暴走の魔法陣が仕込まれているなら猶更。

 それが出来なかったのは、この鉄格子に魔力が通らないようになっているから。

 いくら魔法を撃っても、この鉄格子は破壊できない。

 『身体強化』もアネモネみたいに体を氷で覆ってダメージを軽減したり、炎を纏ってダメージを増やしたりと外に出力するのが一般的なので、その方法だと鉄格子に触れた途端に解除されてしまう。

 でも私は『属性魔法』が使えないので、純粋に筋力や瞬発力の強化に魔力を使っている。

 つまりは体の内側で魔力を回しているのだ。

 こうすると外に無駄に出力されないので魔力の消費は最低限で済むと院長から教わった。

 遮断されていても体の中で回っている魔力にまでは干渉できない。

 そんなわけで遠慮なく鉄格子を捻じ曲げてやった。


 (ちから)こそパワーである。


「行こう、ネイビー」


 一仕事終えて振り返ると、ネイビーはぽかんとした顔で私を見ていた。

 しかしすぐに明るい笑顔になる。


「サクラ、凄い! 強い!」

「ありがとう。でもネイビーの方が強いよ」


 なんせルートボスなので。

 そうでなくても元々攻略対象の兄であり、本人も隠しキャラだ。

 途中からの選択肢で分岐する分、他の攻略対象と違ってレベルが調節されているだろう。

 その時点でモブの私より強いと思う。


「サクラ、強い!」


 しかしネイビーはむっとした顔で私と自分を指さす。

 私の方が自分より強いと言いたいのだろう。


「そんな事ないと思うけど……。でもネイビーを守るって言ったばっかだもんね。よし、お姉さんに任せときなさい」

「うん!」


 私の言葉にネイビーは嬉しそうに笑う。


 やはり概念幼女。私より強くても守らねばならぬ。


 ネイビーを伴って先を急ぐ。

 鉄格子を抜けた先は暗い廊下が続いていた。左右にはネイビーが入れられていたのと同じく、鉄格子が嵌った部屋がいくつもある。

 その中には子どもたちがいた。

 泣いている子、虚ろな目の子、逃げ出そうと躍起になっている子。

 探せば孤児院でいなくなった子もいるかもしれない。

 当然通り過ぎる私たちに助けを求めてくる子もいる。


 でも助けられない。


 なんせ確実に敵地にいるし、誰かに見つかった場合に子どもを守りながら戦わないといけない。


 その子が人質に取られたら? 殺されたら?


 ゲーム内の主人公だったら、皆を助けて脱出するんだろう。

 なんせ戦闘画面に子どものグラフィックは出てこない。遠慮なく戦える。

 でもここは現実だ。

 ネイビー一人を守るなら兎も角、複数を相手にしたら子どもを守れる実力が私にはない。

 だから私は歯を食いしばって廊下を進むしかない。


 絶対に脱出して助けを呼ぶから。


実は100話目を迎えました。

閲覧して下さる皆様のお陰でここまで書いて来れました。

いつもありがとうございます。

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