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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

生と死、その選択は………

作者: tomoyuki gomi

梅雨の時期を迎えたとある日………


「はぁ…………」


俺、南雲(なぐも)透真(とうま)は放課後の教室でぼーっとしていた。特に考え事をしてたわけではないけどこの豪雨の中帰るのには少し気が引けたからだ。

ヒリヒリ

「うっ…………」

……昼休みに中学の時からずっとパシリにされていたヤンキーどもから受けた暴行での傷が痛む。


すると

「南雲透真かしら?」

不意に声をかけられた。

声のした方を見ると、教室の入口のドアにクラスメイトの春風(はるかぜ)ルナがいた。

確か、外国人のクォーターで鮮やかな水色の髪とそれに見合う美人で、この高校でも話題になってたっけ。正直あまり面識はないのだが一体俺に何の用だろうか。

「……いかにも、そうだけど、えっと……春風さん?」

「名前の方でいいわよ、敬語もなしで。ずっとそこにいるけど、帰らないの?」

「この雨のせいで帰る気が起きないってーの……俺に何か用でも?」

するとルナは

「あなた、()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「うっ……!」

いきなりその質問か。正直聞かれたくは無かった。というか見てたことすら気づかなかった。

「……受けてたら、なんだって言うの?君には何も関係ない事でしょ」

「……そう。なんで貴方はやり返そうとしなかったの?」

「……はっ?」

「質問に答えなさい、どうして、やり返そうとしなかったのかしら?」

「俺にはやり返そうとする気は無かったし、やり返す力なんてないっての………」

「それ、自分に言い訳してるだけじゃないの?我慢してたって状況は変えられないわよ」

「さっきから何さ!?なんで知り合いでもない君が知ったような口を聞くの!?」

「だって貴方に暴行した連中、全員今頃酷い目に合わせてるし」

「えっ……?」

すると

「「「「ぎいやああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」」」」

突如近くの教室から複数人の男の悲鳴が聞こえてきた。

「……!?」

「全く………ついてきなさい、どうなってるか見せてあげるから」

そういうとルナは強引に俺の手を取って近くの教室へと向かった。

………一体何がどうなってるんだ……?

そう感じた俺は彼女に質問をした。

「あのさ……君は一体何者なの?」

「……そうね、簡単に言えば“殺し屋”かしらね」

「………えっ?」

俺は耳を疑った。今彼女は自らを殺し屋だと名乗ったのだ。どういうことだ………?


そんな疑問を抱えたまま近くの教室に入ると

「なっ…………!?」

そこには散々俺に暴行してきたヤンキー共が縛り上げられて気絶していたのだ。

「お、やっほ〜ルナちゃん」

「安奈、アンタやり過ぎよ、先生にバレたらどーすんのよ」

「めんごめんご〜、それよりルナちゃんの言ってたこいつら、縛り上げてスタンガンぶち込んだらそれだけで気絶しちゃった〜」

「お、おう……………」

(拷問屋にでも転職したほうがいいのでは………)

あまりにも大胆不敵な印象を携えるのはひとつ上の先輩である松原(まつばら)安奈(あんな)だ。

「それで、そこの君がルナちゃんの言ってた南雲透真くんかな?」

「はっはい、どうも………」

「安奈、取り敢えず透真のことあそこに連れて行こう、あたし達の事も話ときたいし」

「おっけ〜」

「えぇ……?」

もはや何が何だか分からないうちに俺と二人は学校を後にした。


その後、ルナの言っていた「あそこ」に話しながら向かった。

どうやらルナが殺し屋だというのは本当らしい。しかも安奈さんも同じ殺し屋だというのだ。

………殺し屋を見る機会なんて無かったから、少し……いやかなり驚いている。その様子を見て安奈さんが「うぶだね〜」とからかってくる。

いや普通殺し屋なんて会うわけないしそんな反応して当然なんだけどな………

そんなこんなで、「あそこ」に着いた。

一見どこにでもありそうなカフェだけど……ここに一体何が?

「お邪魔しま〜す」

「失礼します」

「お、お邪魔しま〜す………」

おそるおそる店に入るとそこには

「あっ!透真くんプッチン〜!助けてほしいプッチン〜!」

入るやいなや中学の時から世話になっていたきよたプッチンさんに抱きつかれた。

「……貴方たちもしかして知り合い?」

「ひいいい、透真くんその人危ないプッチン!早く離れたほうがよきよきプッチン!!」

「取り敢えず落ち着いてプッチンさん」

「お、なになに二人は知り合いなの?」

「い、一応中学の時からの知り合いです………!」

「はえーそーなんだ」

「凄い興味なさそうなのなんでなんすか……」

「あのー皆さん取り敢えず中に入ってください……」

そういったのは同じ学年のアリア・スターリット、別のクラスでルナ共々話題になってた朱色の髪の娘だ。

「君って確か隣のクラスの……」

「はい、アリアと申します」

「よ、よろしく………」

そんなぎこちない挨拶を済ませ店の中に入った。

「いらっしゃいませ〜」

中にはアリアのお母さんと思しき女性がいた。

「ど、どうも……」


取り敢えず皆それぞれの席に座った。

「さてと、どこから話そうかしらね………」

「あの……取り敢えず質問が」

「……何?」

「なんでプッチンさんがこの店にいたのか、とか、あとアリアや貴方たちの関係性とか………」

「あーそこからか〜、まぁまず私とルナちゃんの事は話したでしょ?それでうーんと」

「私とアリアのことについて、でしょう?」

「そのことなら私よりお母さんから話したほうが詳しく説明できるかも」

「そうね………簡単に話すと私とアリアはスパイなのよ」

「スパイって……FBIみたいな?」

「もっと具体的に話すと、私達はどの国にも属さない、いわゆるフリーランスのスパイなんですよ」

「フリーランス、かぁ……」

「まぁ、実感湧かないよねぇ〜、アリアちゃんのお母さんのアリスさん、元々はFBIに所属してたんだけど、過去の事案がタイムリープしたとある事件をきっかけに離れて今の状態になってるって感じだったような」

「なるほど………それで、どうしてプッチンさんがここに?」

「簡潔に話すと、プッチンさんの暗殺依頼がこっちに届いたんだよね〜」

「ええっ!?それってどういう………」

「プッチンにもよく分からぬプッチン………」

「……実際調べた結果、彼女の両親が各々の働いていた会社でデータベースへの不正アクセスや賄賂行為を行っていたことが分かったのよ」

「プッチン………とてもショックプッチン……」

「でも、それだとプッチンさんを殺す理由にはならないのでは?」

「まぁね〜……見ての通りその娘に手を出すようなことはしなかったから、上が痺れを切らしてプンスカしてるけどね」

「まぁ、私たちが手を下すまでもないとは思うけどね」

「え?それってどういう……?」

「こういうことよ」

そういうとルナはテレビをつけた。


テレビには速報で賄賂行為を働いたプッチンさんの両親が捕まる映像が映った。

「こういうときなら、日本の警察も頼りになるものね」

「もしかしなくても労基にたらしこんだでしょルナちゃん」

「た、たらしこんだって……」

「こういうときでもなければ頼りない、とでも言ってるのか……?」

「事実でしょう?証拠がなければ動けないんだから」

「ほれほれ、そこまで厳しく言わなくてもいいじゃないの、この子たちが悪いわけじゃないでしょ〜?」


その後も色々と話をした。

なんでもプッチンさんの暗殺をしなかったことによってルナは狙われているとか。

「なるほど………」

「まぁ、これが私達のやってることの全貌ってワケ」

「うーん……やっぱりそれでも人殺しは良くないプッチン………」

「受け入れられないならそれで結構よ」

「そもそも私達、受け入れられるつもりはありませんしね」

「それもそうか………同い年とはとても思えないな………」

そう思って当然だ。同じ年で彼女たちは命を落とすかもしれない危険な事案をこなしておるのだ。自分とはまるで違う………


「ねぇ、透真」

そういうことを考えているとルナから声をかけられた。

「?どうした?」

「貴方、親いないでしょ」

「!?」

はっと驚いた。確かに俺には親がいないけど……どうしてそのことを?

「な、なんでその事を………」

「なんとなくよ、貴方の反応で大まかにね、プッチンと違って私達が人殺しだってことにそこまで動揺してなさそうだったし…………もしかしてだけど、貴方心のどこかで死にたいとでも思ってるんじゃないかしら?」

「ハッ…………!」

彼女の目には俺が死にたいと、そう見えていたらしい。確かに、孤独から何度「死にたい」と思ったかはもう数え切れない程ループしていたが自殺する勇気なんてなかった。でも、もしかしたらこの人になら………


「ルナ、俺のことを殺してくれないか?」

気づいたときには、俺はルナに対してそう言っていた。

皆啞然とした。まぁ当然だよな………


「ど、どうしてプッチン!?透真くんは何も悪くないプッチン!」

「まぁまぁ………受けるかどうかはルナちゃん次第だから…………」

安奈さんがプッチンさんを宥めている。

「……どうやら冗談ではないようですけど……ルナさんどうしますか?」

「そうね………」


ルナは少し考えると、俺に番号の書かれた紙切れを渡してきた

「………これは?」

「私のメアド。3日後に貴方が本当に死にたいか否か聞くから3日間よく考えて、この番号にメールを送ってちょうだい」

「………分かった」

よく考えろ、か…………

もう答えは決まってるようなものだけどな………


3日後……………

「来たぞ」

「………来たわね」

俺はルナに言われていた待ち合わせ場所………彼女の家に来ていた。

「それで……結局、死ぬことに決めたのね」

「ああ…………もう色々と疲れてな………」

「………そう」


結局俺は死ぬ以外の答えを見いだせなかった。

もう、それしか方法を思いつかないくらいには壊れていたのだと思う。


「……何か、言い残すことはある?」

そういって銃を俺に構えるルナ。

「いや、ないな」

「……そう」

その対話を済ませた後、俺の意識は暗闇に沈んだ…………


数分後………

糸が切れたようにぐったりした目の前の死体を眺め、呟く。

「色々と疲れた、ね………私もよ………」

私は自分の頭に銃を突き付けて………

(結局、何も変わらなかったわね…………)



その翌日、とある家にて、2つの死体が発見されたという………








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