世にありふれたマインド・コントロール
さてさて今回は、卑近な話を取り上げた軽めの話をしようかと思っています。なぜなら初回から第3回までは、いわゆるカルト宗教被害者を支援している側の意見を元に、マインド・コントロールについて考えてきたために、どうしても重い話にならざるを得えず、語る方もしんどいからです。おそらく、読む人にとっても疲れる事だろうと思っています。
なぜ、カルト宗教被害者を支援している側の意見は「重い」のか。それは、昨今話題になっている「旧統一教会の献金、養子、韓日カップル問題」「エホバの証人の、子供に対する鞭の使用問題」「オウム真理教に出家した若者の、家族の苦悩問題」の事例がいずれも、悲惨かつ凄惨だからです。
***
ここからは、身近なマインド・コントロールについてお話しようかと思います。それは、私のバイト先であるコンビニで毎日繰り広げられる、ただの日常なのです。
私は毎週火曜日になると、わくわくします。なぜなら火曜日は、デザートや揚げ物、パン、お菓子などの新商品が発売されるからです。
火曜日になると、私のバイト先へ向かう足取りは、他の曜日に比べて軽い気がするのです。それはまるで、心臓が不随意運動によって動いているように、火曜日になると我知らず、気持ちがハッピーになってしまっているのです。そんな私の勤続年数は、今年で五年目です。
いかがでしたか。自分で書いていてアホだなと思ったのですが、これはいわゆる「条件づけ」のせいでこうなっているのだと思います。パブロフの犬などで調べていただければ、行動心理学の実験が出てくるのですが……情けない事ですが、5年も同じような生活をしていれば、こういう風になってしまうのですよ。
ある音を聴いたら、悲しくなる。ある香水の香りが、ある人を想起させる。これらは多くの人にとって、至極当たり前に起こる「ふつうの」事だと思うのです。そしてこれもまた、マインド・コントロールの一種だと言えるのです。なぜなら、なぜだか惹かれる、という結果を遡れば、「これか」という理由に思い当たる。だけど普段は、思い出さない。それもまた、マインド・コントロールに見られる条件の一つと言えるからです。
では、もう一つ。
私は以前、「霊感商法のカモ」だったわけですが、カモの特徴として顕著なものの一つに、権威に弱い、というのが挙げられているんですね。いくつかの書籍等を読むに。
それで、何を権威と思うかは人それぞれあるとは思うのですが、私の場合、有名人に弱いんですよ。さらに言えば、いわゆる「ハロー効果」耐性が無いといいますか。
ハロー効果というのは、そうですね。辞書を引いてみましょうか。
goo 辞書より
【ハロー効果】 の解説
人物や物事を評価するとき、目立ってすぐれた、あるいは劣った特徴があると、その人物や物事のすべてをすぐれている、あるいは劣っている、と見なす傾向。後光効果。光背効果。→ハロー
2022/11/25閲覧
これが私の場合、有名人が言ってる、というだけで、興奮してしまう傾向があるんですね。その人が、何で有名になったのか関係なく。「有名な人が何か言ってる」というだけで、注目してしまう習性がある。これは非常に情けない事なんですが、理性を抜きにした、無意識の所はそういう傾向があります。
それで、この前の出来事ですよ。
私は日ごろ、ツイッターで「宗教二世問題」に関する自分の気持ちを発信したり、たまーにですが、メディアへの取材協力などもさせていただいているんですね。ツイッターでは割と、活発に表現活動させていただいておりまして。
それで、今月の22日の事です。私のあるツイートが、オウム真理教の元幹部・上祐史浩氏に引用リツイートされていて。それを見た時一瞬、「うわっ! 上祐さんだよ!」と激しく動揺した自分がいて、愕然としました。何というか、高校生の頃テレビでよく見ていた人だったので、有名人から声をかけられたような感情に捉われてしまったんですね。
しかしすぐに、オウム真理教が起こした事件の被害者の手記を思い出し、他の人への返信と変わらないコメントをしよう、と頭が冷えたんです。
なんというか、マインド・コントロールを法律で規制する、という事になった場合は、犯罪とそうでない「日常的なもの」を峻別し、弱者の権利擁護のための規制がかえって「人の、弱さも含めた、自由な心のありようが織りなす日常」を壊さないように、多分野・多職種の意見を集めるなど、丁寧な議論をしていただきたいなあ、と思った次第です。
それが、私の正直な気持ちなのです。