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⑷『壁が来る』

⑷『壁が来る』



状態反応というものがあるが、何れにしても、眩暈の中、とぼとぼと、街の中を歩いて行くような、虚無的感覚で以て、世界を知ることは、厳密には知ることではないと、壁が来る。それはすたすたと、やって来る。硬質か軟質か分からないが、視覚に入るのは壁である。

とんでもない作法で、ちょこまかと、動きに動いて、世界を闊歩している意味不明の物質、ところどころ、俺と言うお前の我々に酷似しているから、邪険に出来ないが、ともかくそれは、何に例え得るかと問われれば、壁だという他はなかった。



文明の力学で、創造的位置に雨を降らす様な根性を以て、それはそれは、異常なる原理、原理と呼ぶに相応しいと思えばこそ、脳髄が痛覚を覚えるような、そんな激しい痛みにも耐えて、古今東西を行き来するようになっても、其れは常に、壁の様だった。

完璧主義者による、完璧な連絡が来ても、俺の鼓膜が破れていれば、伝わるはずもない内容で、俺は先日少しだけ、耳を負傷したが、数日で治ったのは幸いだった。それにしても、この曇天だ、何に見えるかって、それは、壁に見える。



実際のところ、俺は俺と言うものを、余り知らずに生きて来た。だから、壁についても、壁の様なとか、壁らしく、と言う言葉を思考する訳だが、或る端的者が居れば、それは間違いなく、壁は壁だ、と断罪するだろう、そう、壁は壁だ、壁以外のなにものでもない。

しかしどうだろうか、壁は、何かのメタファだとしても、俺は俺だというメタファは通用しない訳だ。俺は壁になれば、壁は壁だという通念が出来上がるだろうから。何を言ってるか分からないって、そんな言葉は、俺ではなく、壁に言ってくれ給え。

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