さくらの木には惚れ薬が塗ってあるらしい
初投稿なりに頑張っております。
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プロローグ
「ねぇ…ねぇってば…おーい起きろ〜!」
僕の眠りを妨げるように、«彼女»が語りかける。
もう少しだけ、眠っていたっていいじゃないか。
「…うるさい。」
僕は、小蝿を追っ払うように手をブンブンと振り回しながらぼそりと呟く。
「む〜!君の為を思って起こしてあげてるんだよ〜!?何さその素振り!ちょおっとムカつくよねぇ!」
どうしたら静かになるのだろうか?
僕のためを思っているならもっと寝かせてくれ…
頼むから…
声になっていないのは言うまでもない。再び、僕は浅い眠りにつこうとした時だった。
「君ぃ〜!じ〜か〜ん〜!何時だと思っているのさ!?」
「い…今、何時ですか?」
僕は焦り、飛び起きて問う。
「ん〜…8時。」
完全に遅刻である。 最悪だ。
僕の通う学校は7時半に門が閉められ、それ以降の登校は遅刻とみなされ、今時ではパワハラだとか虐待だとか言われるであろう軽い体罰を受けさせられる。
「遅刻…ですね。」
誰に言うでもなく、ただぼそりと小さく、呟く。
「だから起こしたじゃん!」
…眉間に少ししわを寄せ、ぷんすかと腰に手を当て、僕を叱責する。
まぁ、確かに僕の責任だ。
「ていうか、何故僕の家に無断で入り込んできてるんですか…?」
現在、絶賛不法侵入中の彼女、名は「日野 桜」高校2年生で、自称僕の彼女らしい。
僕の名は「八重津 春樹」中学2年生父親は僕の幼い時に死んだと母から聞いた。死因は詳しくは教えてもらえなかったが、交通事故らしい。兄弟姉妹はおらず、一人っ子である。母も時々弱々しくなるが、少し慰めてやるとすぐ元気になる。二人暮らしだが楽しく暮らしている。
時々・・・否。ほとんどの人間が僕の家庭環境を哀れんで、関わろうとしなかった。然し彼女は哀れみの目を向けるでもなく、対等に接してくれる。時々年齢が変わらないのではないかとも思う程に。だがそれは今まで同じ年齢の人達と関わって来なかった僕への配慮なのであろう。
「むふふ…私はしっかり親御さんに許可を取っているのだよ、八重津くん!」
なんと、まさか許可を取っているとは…
いや、待てよ、ということは彼女のことが親に知れてしまったかもしれない。
「親になんと伝えたんですか…?」
恐る恐る訊いてみる。
「普通に、彼女って…」
「何してくれてるんですか!?」
まさか、堂々と宣言しているとは…
以前にも僕の両親に会ったら友人と伝えるように、と散々、口煩く言っていたのに…
「う、嘘だよ!ちゃんと、来るの遅いから迎えに来た友人って言ったよ!?ほんとだよ!?」
あわわ、と焦ったような口調で説明する。
「…ならいいです。」
本当にそう伝えたのか怪しいところではあるが、まぁ、「僕の彼女」と親に告げたとしても、僕に直接何かある訳ではない…と思う。
「そんなことより、学校、いいの?」
そうであった。僕は今、遅刻をしたことによる体罰を受けさせられるという状況にある。
「……どうしましょう…」
一瞬の間があき、冷静になる。
「休んじゃえば?」
「無理です。成績落ちます。死にます。」
「流石に死にゃしないでしょ。」
「比喩ですよ。でも、うちの学校かなり厳しいんですよ。まぁ、成績は落としたくないのでいきます。」
仕方がない。兎に角母には心配をかけたくはない。叱られてもなんでも行くしかない。
「…ねぇ」
「何ですか?要件なら早くいってください。」
「日付と曜日みてごらん?」
何を言っているんだろうか?そんなものを見たところで何も変わらない。
そんな事を考えつつも自然と目を運んでしまう。
日付よりも先に曜日が目に留まる。
「土曜…日…ですね……」
休日である。どういうことだかわからないまま彼女は話し始める。
「今日は休日なのだよ!君を驚かせるために芝居を打っていたのさ!」
すごいものだろう?と続ける。
深くため息をついた後安堵する。
「よかったあぁ…」
本当に心臓に悪い。そういえば、前にも何度かこうした悪戯をされた。またもや同じ手口に引っ掛かるとは…
学習をしないと我ながら思う。
「ねぇ、今日暇でしょ?」
「そうとも限らないじゃないですか。」
「じゃあ何か用事でも?」
「…ありますよ。」
「何があるんだい?」
「彼女とデートをします。」
「…え?」
《彼女》は茫然とも、寂し気ともとれる表情を浮かべた。
本当に僕は振り回されてばかりである。
「う、嘘ですよ!嘘!僕にそんな人いるわけないじゃないですか!」
何故か言葉が詰まる。
「へぇ…じゃあ私とデートしようよ。」
「どういうことですか…」
まぁ、振り回されていてもいいのかもしれない。なんてことを考えさせられる。
「わかりました。行きます。ので、一旦部屋から出て行ってください。」
「え?なんでさ?」
「あんたは僕の裸が見たいと?」
「あ、そういうことね。じゃあ着替え終わったらささっと行こう!」
「わかりました。」
そう告げる前に両手を飛行機の翼に見立てて部屋から出ていく。
どの服を着ていこうか。周りから見てダサいとは思われたくないが彼女と出かけるためではない。
と自分に言い聞かせながらしかしほんの少し、本当に少しだけ心弾ませ準備に取り掛かる。
「お待たせいたしました。」
そういって玄関のドアを閉める。
「おぉ~似合ってんじゃん。」
不意を突いたその表情はとても愛らしかった。
「行きましょうか。」
「なんだかんだ乗り気じゃん」
「…そんなことないですよ。」
「ふーん。」
そうした会話をしながら「デート」に行く。
心なしか足取りも軽い。
こんな時間がずっと続けばいいのにな。
そんなことをぼやきながら彼女についていく。
「今日はどこか行きたいところとかあるんですか?」
「ん?とくにはないかなあ…八重津君は?」
僕に聞いても意味がないということは知っているはずだ。僕の二択問題の選択にかかる時間は尋常ではない。…自分で言っていて悲しくなってきた。
「それ僕に聞きます?」
「私ばっか行きたいところ行ったて八重津君楽しくないじゃあん」
「僕は楽しいから大丈夫です。」
「それはもっと私とデートしたいってことでいいかな?」
「よくないです」
「究極のツンデレだなあ」
「デレたことありましたっけ?」
「ないね。デレなさいな」
「いきなり言われましても」
「え~ひどい」
「黙ってください」
なんというポジティブシンキング・・・ そういう観点では尊敬する。
それ以外で尊敬することなんてないが。
「ねえねえ」
「なんですか?」
「本当にどこ行く?」
「適当に喫茶店でもいきますか?」
「ナイスアイディア八重津君!」
たまにはいいことを言うね、と続ける。
誰目線なのだろうか?…彼女目線か。
小走りになり、少し進んだ所で此方を向く。
「可愛い反応ありがとう」
にっと笑う。よくも年頃の男子がこんなにも綺麗な女性を前にして理性を保っていられるものだ、と自分を褒めよう。
読んでくださりありがとうございました。
続きはいつ書くのか、そもそも書くのかすら未定です。
まー頑張ります