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腕立て伏せ一回目




温かな日差しが降り注ぐとある侯爵邸の一室で……。


「今日もよく晴れたな。良い“筋トレ日和”だ。あっはっはっはっ」


「お姉さま!お願いですから“腕立て伏せは一日百回”までと申し上げたではありませんか!!今何回目ですの!?」


「あっはっは、そうだったかな?今ちょうど“千回目”だ。あっはっはっ!」


「この“脳筋令嬢”ーー!!」





「脳筋な悪役令嬢はざまぁをしないし、されもしない」





ここはプロセイン王国。古くから続く王家と貴族たちが治める割と平和な王国だ。平和と言っても隣国との関係や、日々何かしらの犯罪は起きる。加えてこの世界には魔法がある。それによって芋づる式に生じるやれ魔王だ魔物だ勇者だ聖女だといった王道なファンタジーの世界だと思ってくれれば概ね間違いはないだろう。


そんな世界のとある貴族の下に生まれたとある少女。彼女はいわゆる“転生者”だった。それもよくある乙女ゲームの中の“悪役令嬢”と呼ばれるポジションに生まれついた。それでもって、当然のようにゲームのストーリーとはかけ離れた行動をとり始めるのだが……。


「はっはっは、やっぱり“筋トレ”をしないと落ち着かないな!」


「……エレーナお姉さま、なにをしていらっしゃるの……?」


「ん?エリカか、これは腕立て伏せと言ってな、こうして床に両手をついて、よっ、ほっ、ん、こうするとここが鍛えられるんだ」


「……へえ〜……」


全くもって興味なさそうな棒読みの返事にもたじろぐことなく、エレーナと呼ばれた八歳くらいの少女は『お前もやってみるか?』などと三歳年下の妹に向かって言っている。


「お嬢さま、そろそろ朝食のお時間です。お早くお着替えになりませんと、また侯爵さまから叱られてしまいますよ」


「おっと、もうそんな時間か。じゃあまた後でな、エリカ」


「はい、お姉さま」


侍女に声をかけられ、エレーナは“トレーニングウェア”からドレスへと着替えを始める。着替えながらエレーナはこれから取る朝食に思いを馳せた。


「今日の朝食は何かな……鶏肉の香草蒸し焼きだといいな……」


筋肉にはタンパク質が欠かせない。運動したあとの速やかなタンパク質の補給は、トレーニーとしての基本だ。エレーナは無意識にそのことを理解していた……。果たしてこの魔法と剣のファンタジーな世界で、一体なぜ十歳にも充たぬ少女が筋トレとタンパク質の関係性を知っているというのだろうか。


もうお分かりだろう。プロセイン王国貴族、『アントロワーズ侯爵』が娘、長女の『エレーナ・アントロワーズ』嬢は、転生者だ。それも筋肉至上主義、筋トレガチ勢の“脳筋令嬢”なのであったーー……。




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