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『逆さ虹を超えて』  作者: 平泉彼方
3/3

第3話・エンディング

3話 意味あるオンボロ(オンボロ橋)




 今日取材するのは蛇の青野大将さん。

 人間時代はコックをしておりとてもグルメな人だ。人間になって偶に定食屋バイトで料理する、とどこからともなく人がやってくる。料理の美味そうな匂いだろうか。あっという間に売り切れ御免となる。



「さて取材だったかな?ならばこの橋の修繕を手伝ってくれ。」



 オンボロ橋は、どうやら青野シェフの畑に続く道らしい。



「この橋ってなんか言われとか有ったりします?ただオンボロなだけではナイですよね?」



 失礼を承知でそう尋ねてみる。



「ん?言われかどうか知らないけど有るっちゃ有るよ。」



 そう笑顔で答える青野シェフ。

 藁で縄を作りながら話を聞かせてもらった。



 昔々、あるところに14匹の青大将がいました。

 彼らは兄弟とかではなく、ただ川下りをしている最中川に流されて引っかかった場所で出会ったそうです。


 そんな彼らのうち1匹がある日言いました。



「橋を作ろう。」



 毎回洞窟から狩りへいく最中流されるのが嫌だと感じた個体だったそうです。彼の言葉に従い、その中で3匹がついていくことにしました。

 4匹は力を合わせて橋を作りました。



「丈夫な木と縄で作ったから、これならきっと大丈夫!」



 そうして出来上がった橋は、しかし餌場へ我先にと向かう10匹の蛇によってあっという間にボロボロになってしまいました。というのも、この10匹とても食い意地が張っていて、重かったのです。

 それを見た4匹は、どうしようかと考えました。


 智慧者の1匹が、ある日こう言いました。



「ならば、最初からオンボロにすればいいんだ。」



 ボロボロな見た目で今にも壊れそうならきっと渡るのを1匹ずつにするとか自粛してくれるはず。あるいは渡るために体重を落としてくれるかも。

 とても名案に彼らは思えました。


 そしたらとある1匹が、自分なら適任だと名乗り上げました。


 彼女はどうやらちょっと変わった力が使えるようです。彼女はこの力を『不思議な力』としか言いませんでした。

 多分異世界謎現象の一つなのでしょう。


 そうして彼女の摩訶不思議な力で作られたばかりの橋はボロボロになり、その後もその姿を保ったままでした。



「で、その他の蛇は?」


「ああ、連中ならもっといい狩場がある話をしたら飛びついて出て行ったよ。ホント単純だよな。」



 ガハハと笑いながら補修作業を手伝う。

 今にも壊れそうな強い橋は、だが見た目に反して力強く我々が中央の解れを直しに行くのを支える。一度も軋み音を出さないのだから見事としか言えない。



「それにしても……これは見ただけなら本当に落ちそうなのに謎」


「ああ本当にね。」



 そう言いつつ補修を終わらせ渡り終えると、振り返ってニコリと笑う青野シェフ。僕も一瞬振り返ると立派な木製の橋が見えた。頑丈な作りで、どこにも落ちる要素のない。

 驚いて僕は頰をつねる。痛みがあるので現実ってことは、到頭僕も壊れた?



「みたまま、これがオンボロ橋さ。」



 瞬きすると、すぐに元のオンボロへ戻る橋。

 さっきの姿は全部嘘でしたと言わんばかりに渡るのへ勇気のいる橋へ。足を乗せただけでポキっといきそうだな。ついでに僕もポックリなんて。



「まぁ、本質と見た目が一致することは珍しいからね。橋も食事も。」



 そう言いながら前方には蛇の集団、そして僕はリス。無数の目が光り、僕の体毛は逆立った。



「じゃあお疲れ、原稿と逃亡がんばってね。」



 そうイタズラっぽい笑顔を浮かべるシェフ。僕はまだ、美味しく料理なんてされたくないの!中身ニンゲンで噂話大好物なマスゴミジジイラッチで美味しくなんてないんだからね。


 尚、橋を越えたら蛇が1匹もついてこなかったので、あのオンボロな見た目にも意味があるのだと改めて悟った。



 だから僕は『オンボロ橋はオンボロのままで』とあの普遍性の大切さ、変わらないことの尊さについて記すべく筆をとった。

エンディング



 僕は小説を作りながら時折思うことがある。



「ここってじつは、『てんごく』なのかも。」



 実は現実世界で僕たちはすでに亡くなり、それを不憫に思った誰かが穏やかな森で好きだった人たちと再会させてくれたとか。ついでに人生再開するべく動物と人間どっちもなれるようにしてくれたかな。



「そうね……でもこころのこりもあるわ。」



 透子曰く、両親が心配だと。

 確かに透子のご両親は結構高齢で透子を溺愛していた。遅くできた子だったから心配だって。ついでに僕みたいなろくでなしが近くにいたのが心配だって。


 中々結婚の許しも出なかったからなぁ。


 僕の心残りも実はそれで、透子の両親に認めてもらえなかったことだろう。自業自得だけど悲しかったな、あれは。ちょっとしんみりする。

 今だったらでも、きっと少しは。



「?あら、フフフ」



 いきなり透子が笑い始めた。

 どうしたのかと僕は透子の目線を追い、その先にイノシシ2匹が転がっているのが見えた。結構高齢な見た目だが、それに反して力強さを感じる。



「まさか……ね。」



 あとはご想像にお任せするが、きっと僕らは明日も穏やか


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