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『逆さ虹を超えて』  作者: 平泉彼方
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第2話

2話 根っこと嘘っこ



 今日取材するのは何でも屋の木津根稲利。

 普段はお人好しなだけの元人間の普通の狐だが、人間になると途端滅茶苦茶頼りになる姐御である。貧民街の孤児院でシスターなんか何でも屋の傍やっている。


 そんな彼女は噂の現場こと『根っこ広場』の被害を受けた事があるらしい。


 嘘か誠か眉唾ものだが、あそこの広場で嘘をつくと根っこに巻き取られるなんてホラー現象が起こるらしい。童話にも怖い話は需要あるので一応取材しようと思った感じだ。

 そんなわけで貧民街ド真ん中。



「なぁ、オイ。ここどこかわかっているのか、あァ?」



 絶賛DQNに絡まれ中。実はこれ三回目で泣きそうだったりした、ダレカタスケテケテ〜



「あんたらなにやっているンだい?」



 姐御登場。そして去っていく雑魚DFG。

 あとから聞いた話だと、実は心配でここから出て行ったほうがいいよと忠告兼護衛のつもりでついてきてくれたらしい。悪い事したと思って後日透子特製木の実クッキー(混沌味)あげたら微妙な顔をされた件。


 さて、肝心の取材はと言うと……



「あ、あんたそんな恥ずかしい話をさせる気かい!?」



 そう言って取材拒否された次第。どうしよ、ショボンヌ。

 ただ、関係者っぽい人間については聞き出す事ができた。その人物とは歌手兼プロデューサーやっている琴利駒郎であり、話を伺う事にした。


 問題は、どうやってコンタクトを取るか。


 普段から人気過ぎて主に宮廷とかから引っ張り凧なので、中々森に帰ってこないやつ。最近では少女歌唱隊と少女舞踏隊を統合して地球で言うところの『アイドル活動』をさせているらしい。これが結構金になるとか。

 ゲヘヘヘとその温和そうな表情から到底想像できない声で笑い声をあげていたので覚えている。

 数年前からなぜか金にこだわる様になったミュージシャン琴利。謎が多い。


 仕方がない……潜入捜査あるのみ。




 そうしてある日、とある王宮の牢屋で吊し上げられている琴利プロデューサーの勇姿(笑)を見つけた。



「た、助けて〜」



 情けない声で助けを求める琴利さん、涙目。

 とりあえず監視役がいなくなるまで待って……よしいないな。ついでにポケットに挟まっていた鍵とチョコレート菓子くすねてやった。



「で?今度はマジなにやったの?」



 目の前で鍵をいじりチョコレートをかじってみる。涙目で上目遣いの琴利くんの分はないのでちょっと美味しい気分だったりした。我ながら性格が悪い。



「この国のワガママ姫にアイドルグループよこせって言われたから逃がしていたら案の定捕まった、チクショー。グスン」



 尚、国側からすると姫の兄上を誑かして散財させたことを妹が憂いて活動を自粛する様求めるべく解散を願ったとか。見解の違いってすごいな。



「で、どうする?」



 鍵をチラチラさせながら取材をねだると、あっさり陥落した。いいのかそれで。



「で、何が聞きたいの?」



 無駄にいい声で囁かれても、同性なのでときめかない。



「姐御が『根っこ広場』でついた嘘って何?」



 一瞬ピシリと固まったがすぐに再起動し、真っ赤にそまって冠絶した。ほほぅ、これは面白そうな話が転がってそうですね(ゲス顔で牢屋の中見つめる)



「しょうがないなぁ……オレが言ったって黙っていてよね。」



 それは今から5年前。


 姐御はお人好しな性格なのは知っているな?

 あいつはいつもそうだ。自分が損をすること知っていて他人へ手を差し伸べちまう。もうちょっと自粛すればいいのに。だからはめられる。


 ある日、あいつは詐欺にあった。


 性格にはタチの悪い業者につけこまれたある一家が逃げるためにアイツを使った。アイツもそれをわかっているくせに黙って引き受けた。自分なら大丈夫と過信して。

 大丈夫じゃないくせに。



「で、馬鹿なアイツは馬車馬みたいに働いて……」



 借金を返し終えたら電池切れたみたいに体を壊して働けなくなり、お金も何も無いまま病気で余命3ヶ月の宣告を受けた。

 馬鹿だ、馬鹿だと思っていたけどそれなのにあいつは……



「隣の病室のクソガキが帽子飛ばしたとか泣いているからって、あんな状態で」



 オレがアイツをブチ込んだ病院には裏庭があり、そこはちょっとした森になっていた。少しでも好きなものをといい場所を選んだつもりだった。

 それが仇になるとは。

 ガキのためだってアイツは勝手に病室を出て足場の悪い森を散策して帽子を取った。だけど、行動不能になって帰れなくなったらしい。中々帰ってこないので様子を見に行ったらそうなっていた。



「ごめんな〜」



 そんな風に軽く返されてイラっときたけど、オレは肩を貸していつもみたいに帰ろうとした。

 けどオレも焼きが回ったらしい……崖から二人とも落ちた。


 そして崖の地面にあった逆さ虹に吸い込まれてあっという間に大自然にいた。



「アイツが肉食獣でオレが鳥とか、マジ納得いかない件。」



 アイツの病気はなくなっており新規一変やっていくことになった。オレはすぐにでもアイツを嫁にして家に置きたかったが、やっぱりアイツはアイツのままで……



「苦労させたくないから金稼いでいの、悪いか?」



 照れながらそう答える琴利。

 わからなくないけどねぇ、なるほど。



「で嘘の件はどうなの?」


「ああそれは簡単な話。アイツ結構照れ屋でツンデレだから、デートついでイジワルしたらな、」



 広場の真ん中で『べ、別に好きなんかじゃないンだから!』なんて叫んだのさ。



「あとは想像通り、根っこがモサモサモサ〜って蠢いた直後にアイツが涙目で捕まっていた。」



 中々可愛かったよ、あの表情(カオ)

 だからさ、この話拡散希望ね。特に後半部分もっと広めちゃって。


 そう語った琴利の顔はどこかゾっとする表情になっていた。




 童話としては、素直になれない人たちが素直になれる場所であるニュアンスでごまかすことにした。だからこれは、『根っこと嘘っこ』の物語。




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