第五十九話 王女の娘
今まで投稿できなくて本当にすみませんでした‼
ティアは、 優を自身の座る玉座の前まで連れて行くとその場に止まるよう待ったをかけた。
「こんな場所に一体何があるっていうんだよ」
「ふふふ、 お主もこれを見ればきっと度肝をぬかすことになるぞ?」
ティアは、 不敵な笑みを浮かべながらそう言うと玉座の後ろに回り、 スイッチを入れた。
すると玉座は、 突然動き出し階段が現れた。
「な、 なんだと!?」
「どうじゃ? 驚いたか?」
「あ、 ああ……」
優は確かに驚きはしたのだがそんな事よりも何故こんな場所に隠し階段を作っているかの方が疑問に思っていた。
「なあ。 なんでこんな場所に隠し階段なんかがあるんだ?」
「ふむ。 その質問への回答を返すとすれば、 この仕組みは偏にわらわの趣味じゃ」
「しゅ、 趣味でこんな大掛かりの仕組みを作るエルフって……」
優は、 そんな女王の言うことを何でもエルフという国に人末の不安を感じぜずにはいられなかった。
「何をそんなに驚いておるのだ?」
「だって普通女王の趣味だけでこんな大掛かりの仕組みは、 作らないだろう。 金だって馬鹿にならないだろうし……」
「確かに普通の国からすればそうじゃのう。 じゃがわらわは他の国のトップとは違う点があるじゃろう?」
「なるほど」
ティアが他の王とは違う点とは、 もちろん未来視の事を指している。
未来が見えるということは自分にとって不都合な未来を先読みできると言うことである。
これは国を繁栄させていく上で最も必要な能力と言っても差し支えはない。
その為ティアのこのようなわがままも許されてしまうのだ。
「どうやら納得できたようじゃのう。 ではそろそろ行くとするかのう」
ティアは、 そう言うと再び歩き出し、 優もそれに置いて行かれぬよう追従した。
~~~~~~~~~
「これはまた……」
階段を下りたその先には、 広大な自然が広がっており、 奥には木製と思われる一軒のこじんまりとした家が建てられていた。
「なあティア。 階段の下にこんなスペース絶対にないよな?」
「無論じゃ」
「それじゃあここもまたさっきの城とは別の空間に作られたものなのか?」
「ふふふ。 流石優じゃ。 察しが速くて助かるわい」
「そりゃどうも」
「あ、 お母さま!」
そう言ったのはティアによく似た小柄の少女であった。
少女は、 ティアを見つけると一目散に駆け寄り抱き着いてきた。
「よいこにしておったかシルフィ?」
「うん! 私とってもいい子にしてたよ!」
「そうかそうか。 それは偉かったのう」
ティアは、 少女の頭を優しく撫でる。
それに少女は気持ちよさそうに目を細めながら耳をそのエルフ特有の耳をひくひくと動かす。
その様子はまさしく母と子の関係だと疑いの余地はなかった。
「ねぇお母さま。 この人だあれ?」
少女の目がこの時初めて優に向けられる。
その目からは見知らぬ人に対する恐怖心などはまるで感じられず、 むしろ興味津々と言ったようなものであった。
「おお、 こやつわな。 シルフィ、 お主の父親じゃよ」
「お父様? でもお父様って昔死んだってお母さま言ってたよね?」
「その通りじゃ。 よく覚えておったのう」
「えへへ。 シルフィ偉い?」
「ああ。 偉いぞ」
シルフィと呼ばれた少女は、 ティアに最も頭を撫でるよう催促する。
ティアもそんなシルフィがいとおしいのか彼女の望むまま優しく撫でてやる。
そんな空気の中唯一人優だけ今の状況にとてもじゃないがついていけなかった。
「それで種明かしをするとな。 こやつは確かに一度死んだ。 じゃが愛の力で再びこの世に復活して童の前に現れたのじゃ」
「お、 おい……」
「そうじゃろう?」
ティアのついたあからさまな嘘に優は罰の悪そうな顔をするが、 そんな優に先ほどまでとはうってかわって冷たい目をしたティアが話を合わせるように催促する。
優もそのような目を向けられたは流石に何も言えずただ黙っていた。
「そうなんだ!」
シルフィはとても嬉しそうにその場に何度も跳ねる。
その様子に優の良心がキリキリと痛む。
「ほれ。 お主も挨拶せんか」
「そういわれても……」
ーなんて言えばいんだよ……
優は酷く困惑していた。
それも当然である。
何せ急に自分と目の前のティアは昔結婚していて、 子供までいてその子供が目の前の少女だと言われてもその状況を呑み込む事などできるわけがない。
これでティアの要求を突っぱねることができるのなら優はそれほど困惑はしなかった。
だが今優には人質がいた。
ここで優がティアの機嫌を少しでも損ねた場合、 雪達の命に危険が迫る可能性がある。
そう考えると優は話を合わせる他なかった。
「えっと……正直急に君の父親と言われて困惑しているんだが……まあ一応はこれから君と一緒に生活することになる優だ。 よろしく」
優の挨拶は、 非常にぎこちないものであった。
ただシルフィは自身に父ができるのが余程嬉しいのか太陽の様に眩しい笑顔を浮かべていた。
「よろしくじゃなくてただいまでしょう‼ もしかしてお父さんって結構ドジ?」
「ああ、 そうじゃぞ。 お主の父はそれはもうドジな奴でな。 自分の妻がだれであるかさえ忘れてしまうような奴なのじゃ」
優はその言葉を聞いた瞬間凄まじいほどの寒気に襲われた。
ー今のあいつの言葉確実に俺を恨んでいるようなものだった……
優の言う通りティアの言葉からは、 恐ろしいほどの憎悪が感じ取れた。
ただ彼女がそれほどまで優の事を恨み、 固執している根本的な原因までは優には皆目見当がつかなかった。
「ねぇねぇお父さん‼ 一緒に遊ぼう‼」
「あ、 おい……」
シルフィは、 人懐っこそうな笑みを浮かべながら優の腕を取る。
だが優とティアは今手錠で繋がれている関係にある。
それすなわち優を引っ張るということはティアの事を引っ張るということを表していた。
「おいおい……」
-どんな力してんだよ……
シルフィの力はすさまじく人間二人を引っ張っているのにも関わらず、 まるで辛そうな表情をしていなかった。
ただこの状況に流石のティアは、 少し怒ったような声をだす。
「シルフィ!」
この言葉に先ほどまで元気に走っていた彼女は、 瞬時に停止する。
「全くお主は……」
「も、 もしかしてお母さん怒ってる?」
シルフィは酷く怯えていた。
その様子は尋常ではなく、 とても先ほどまで元気に走り回っていた女の事同一人物とは思えなかった。
「怒っておらんよ。 ただお父さんとお母さんは今このように手錠で繋がれている関係じゃからお父さんと遊ぶのはもう少し後にしてくれんかのう」
「いいけどなんでお父さんとお母さんは手錠で繋がれてるの?」
「それわのう。 こやつは手錠でもしておらんとすぐにどこぞの女にホイホイついて行ってしまうからのう。 それをさせないためにもこうやって手錠でつないでおるのじゃよ」
「ええ‼ お父さんってそんなにもてるの?」
「いや、 俺は別にモテ……」
「こやつは相当モテるぞ。 顔はその辺にいるものとたいして変わらぬがその性格がそばらしくてのう。 きれ程綺麗な心をしているものはわしはこやつ以外知らぬ。 だからこそわらわはこやつと結婚したのじゃよ」
ティアは頬を赤らめながら優を見る。
そんな乙女チックなティアの様子が普段とのギャップが凄まじく優は不覚にも少し頬を赤くする。
それにやはり自分の好きなところを女性しかも綺麗な女性に言われて恥ずかしくないわけがなかった。
「じゃがそのせいでこやつ色々な女子にモテるからのうそれにこやつそんな女子共の気持ちに全く気付いておらんのじゃ。 だからこそそんな女子に騙されないのか心配なのじゃ」
-地味に酷い……てか俺鈍感じゃないからな‼
内心そう悪態をつくも優の今までの行いを見る限りまるで説得力がなかったが、 それに気が付かない時点で優は鈍感である。
「それじゃあわしとこやつは少し家の中でようがあるからシルフィは少し外で遊んでおってくれぬか?」
「うん‼」
最低でも一週間に一話は投稿できるよう頑張りたいと思います。




