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第五話 観察眼と刻印魔術

朝優は目が覚めると隣には優の腕を抱きしめ、 気持ちよさそうに眠っているシアの姿があった。

優はその事に気が付くとシアから自身の腕を引っ張りだそうとし、 引っ張りだすことには成功したのだがそのせいでシアは目を覚ましたった。

だがそシアが目を覚ました時、 優は自身の眠気も吹っ飛ぶ程の衝撃を受けた。

それもそのはず今のシアの姿は体に何も身につけておらず、 見えてはいけない部分まで見えそうになっていたのだ。


「お前なんで服着てないんだよ! 俺が寝る前までお前服着てただろ!」

「それは~私は普段服を着て寝ないからですよ~だから寝る前にはいつも服を脱いでいるんです~」

「なぜそれを早く言わない! それなら俺はソファで寝たわ!」

「だって~優さん私に一度も寝る時に服は着るのかって聞かなかったじゃないですか~ 」

「そんな当然のこと聞くわけないだろ!」

「 え〜王族はー皆基本全裸で寝てますよ〜お父様も〜そうだと使用人から聞いたことありますし~」

「ああ、 もうわかったから早く服を着てくれ! もしこんな状況あの三人にばれたら何をされるか分かったもんじゃない!」


優はそう言うとシアに服を着るよう必死に懇願した。だがシアは優の言うことを聞こうとはしなかった。

そんなことをしている間にも無情にも時間は過ぎていき、 そして......


「優君朝だよ! 扉開けてもいい?」

「優ちゃん! お姉ちゃんが来たわよ! だから中入るわね!」

「お兄ちゃんおはよう! 早くカギを開けて中に入れて!」


優がこのタイミングで最も来て欲しくない三人が部屋の前まで来てしまった。

それを知った優は冷や汗が止まらなかった。

シアはいまだに全裸である。

もしこの状況であの三人が入ってきてしまったら確実に誤解され、 死は免れない。

そう悟ったからだ。


「お願いだから早く服を着てくれ! そうじゃないと俺は、 あの三人に殺されてしまう!」

「ええ~まだ朝早いんですから〜そんなに急がなくてもいいじゃないですか~訓練の時間までまだ時間もあるんですし~」


優はあまり朝が強いほうではない。

だがシアは優以上に朝が弱いのか未だに寝ぼけており、 寝ぼけたまま優に抱き着いてきた。

ーこのままでは埒が明かない。

そう思った優は自身に抱き着くシアを力づくで引き離し、 服や下着をかき集め、 いざ服を着せ始めようとしたのだがそのタイミングで扉が勢いよく吹き飛んだ。


「優ちゃん何回呼んでも返事がなかったから扉壊しちゃったよ。 それで優ちゃんはどこにいるのかな~」

「優君! まだ寝てるの? ダメだよ! 朝は早く起きなくちゃ!」

「お兄ちゃんまだ寝てるの? 」


三人は優がまだ寝ていると思ったのか扉を壊し、 無理やり中に入ってきたのだ。

あんな華奢な体の何処に扉を壊せるほどの力があるのかはなはだ疑問なことではあるのだが今はそれどころではない。

何せシアの服や下着をもった優が全裸のシアへと向かっているといった絵面を三人に目撃されてしまったのだ。 勘違いしやすい三人のことである。

きっとこの状況も確実誤解するに違いない。

そう思った優は自分の人生はここまでであると悟った。


「「「何やってるのかな二人とも?」」」


優の予想は大当たりあり、 三人とも見事にこの状況を誤解していた。

気のせいかいまの優には三人の顔がまるで般若のように見えた。

ただ一応足搔けるだけ足掻いてやろうと優は弁明の言葉を必死に紡ぎ出した。


「ご、誤解なんだ!三人とも! この状況は、 この国の王族は寝る時服を着ないらしくてそんなシアに服を着せようとしているだけなんだ!」

「「「問答無用!」」」


だが現実は非情である。

三人は優の弁明も聞くことなく約一時間にわたり、 説教を聞かせた。

当然その時の態勢は正座であり、 ちょっとでも話を聞いていないと判断されたら詩織から首目掛けて包丁が飛んできた。

シアはというとあの後完全に目がさめたらしく優と一緒に大人しく説教をくらっている。

普段のシアなら絶対に三人からの説教など鼻で笑い、 受けようとせず抵抗するのだが流石に三人の迫力がいつもより凄まじかったためか何も言えずおとなしく説教をきいていた。

そのようなハプニングもあったせいか優とシアは朝食をとり損ねたまま、 戦闘訓練へと向わざるを得なかった。


訓練場につくと騎士団長のダッチと呼ばれる四十代と思われる男性が大声を発していた。


「それでは今日から戦闘訓練を初めてもらう。 それに伴い初めに自分が使う武器や防具を武器庫の中から選んで欲しい。 武器に関してたが自分に適性のない武器は触れても何も感じない。 だが適性のある武器は触れた瞬間にわかる。 そして適性のある武器はその武器の名前がスキルが追加されるので、 自分の武器を決める際は自身に適性のある武器から選んで欲しい」


優はそのダッチの説明を聞き、 雪達とともに武器を選ぼうと武器庫に入ろうとしたのだが武器庫に入った瞬間自身の頭の中に、 膨大な量の情報が流れ込み、 気を失ってしまった。


優が次に目を覚ました場所はベットの上であった。

そんな状況に困惑した優は自分の周囲を見回した。

すると自分の隣で優の手を握りながら眠っているシアの存在に気づいた。


「おい起きろシア。 ここはどこなんだ?」

「むにゃむにゃ、 ああ! 優さんそんなところいけません!」

「おいお前。 実は起きてるだろ?」

「あれ? ばれちゃいましたか?」

「全くお前は.......はぁ。 まあいい。 そんなことよりここはどこなんだ?」

「ここは医務室です。 優さんは武器庫に入った瞬間何故か気絶してしまったので、 ここに運ばせてもらいました。 それで優様は、 なぜ気絶したのか何か心あたりはありませんか?」


優はシアのその質問に対し、 自身の頭に手を当て、 記憶をたよりに心当たりがないか必死に考えた。

それにより優は一つだけ心当たりがあることに気がついた。


「多分だが俺が気絶した理由はきっと俺の魔眼にあると思う」

「優さんの魔眼にですか?」

「ああ。 とりあえず今からステータスカードを出して俺の予想があたってるか確認しようと思う」

「わかりました」


優はシアにそう伝えると自身のステータス画面を開き、 観察眼のスキルを指でタッチした。

そうすると最初スキルが確認できたように頭の中に情報が流れてきた。


(観察眼とは見ただけで武器や防具や魔法そして相手の人間性などのことがすべてわかる魔眼です。 そのため他人の持つ癖や人間性なども瞬時に見抜くことができます。 ですがこの魔眼は脳への負担がすさまじく、 あまりにたくさんの情報が一度に入ってきた場合保持者本人の脳がその情報量を処理しきれず、 気絶する場合があります。 またこのスキルは常に発動しているため使用したくないは、 オフと唱え使用したいときはオンと答えてください)


優はこの説明を聞き、 一人勝手に納得し頷いた。


「とりあえずオフ」


優は誰にも聞こえないような小さな声でそう呟き、 魔眼の機能を停止させた。


「あの結局優さんが気絶した理由は、 わかりましたか?」

「ああ。 どうやら俺の魔眼はありとあらゆるものの情報がわかるようになる魔眼らしくてな。 それで、 武器庫に入った時俺はこの能力のオンオフの切り替え方を知らなくてな。 それでオンの状態のまま武器庫に入って武器や防具の数があまりにも多くて情報が処理しきれず気絶したらしい」

「そうだったんですか。 確か優さんは、 あと一つユニークスキルを持っていましたよね? もしかしたらそれにも何か日常生活にきたすかもしれないデメリットがあるかもしれないので、 今調べて置いたらどうですか? どの道優さんは、 今日の戦闘訓練には参加できそうにありませんし」

「そうだな。 そういえば姉さんたちは、 訓練を受けているのか?」

「はい。 奴隷である私だけしか許可されませんでしたので。 ただ理由を聞いた後は、 お三方は、 優さんが治ったら今日の訓練でやったことを教えてやるんだと意気込んででいましたけどね」


そんな三人のいつもどおりの態度に優は自然と笑みをこぼし、 「そうか」と呟いた。


「あー、 あの三人にもだが、 お前にも迷惑をかけたな。 まあ、 その、 なんだ。 とりあえず。 ここまで運んでくれてありがとうな」

「本当に優さんは素直じゃないですね!」

「素直じゃなくて悪かったな!」

「でも私はそんな優さんと事がますます好きになっちゃいましたよ」


優はそんなシアの態度を少々ずるいと思った。

だがそれよりもシアが作り笑いではなく、 心からの笑顔で笑ってくれていると思うと嬉しくも思ってしまっていた。


「まあとりあえず残り一つのユニークスキルも確認するわ」


優はそう言うとステータスカードの刻印魔術を指で触れた。


(刻印魔術は禁呪指定の魔法の魔法陣を物体に書くことによって、 自分の任意のタイミングで発動できるようになります。 発動するときは、 指で音を鳴らしてください)


「シア。 一つ疑問があるんだが答えられるか?」

「はい。 場合にもよりますが?」

「なら禁呪ってなんだ?」


それを聞かれたシアは、 途端に笑顔を曇らせた。


「もしシアが教えたくないのなら俺は無理に教えてもらおうとは思わないが?」


優のその言葉にシアは首を横に振った。


「いえ。 優さんのスキルに関係するなら話しましょう。 禁呪とは、 人間が扱ってはいけない魔法の一つです。 禁呪は普通の魔法に比べてその効果などが桁違いです。それに加え禁呪を発動するには魔法陣が必要であり、禁呪の魔法陣は常人では、 その魔法陣の仕組みを理解できないため、 魔法陣を書くことはできず、 禁呪は発動はできません。しかし禁呪の魔法陣の仕組みを理解できた場合自身のレベルは関係なく、 魔法陣を書いただけで発動できます。また基本禁呪は魔法陣を書くと瞬時に発動します。 そしてこれが禁呪が禁呪と呼ばれる所以なのですがその圧倒的な力には、 当然代償が発生します」

「その代償とは?」

「それは発動した本人の命です。 そのため優さんにお願いがあります。 絶対に禁呪を使わないでください。 たとえ私や雪様や詩織様や胡桃様の命に危険が迫っていた場合だとしてもです。 それだけは、 絶対に約束してください」


そういうシアの表情は心底不安そうな顔をしており、 優の手を握る力も先ほどよりも強くなっていた。


「わかった。 俺はたとえお前たちに危険が迫ったとしても絶対に禁呪を使わない」


優のその言葉に安堵したのかシアはホッと息を吐くと優の手をゆっくりと放し、 少々ギコちない笑みを浮かべた。


「シア大丈夫か?」

「ええ。 でもなんか辛気臭い雰囲気になっちゃいましたね。 そういえば優さんお腹すいていませんか?」

「そういえば腹が減ったな。 朝ご飯食い損ねたし」

「なら今から食堂にいって料理を作ってもらいましょうか」


そのあと優とシアは一緒に食堂に料理をもらいに行き、 この城の料理長のおじさんからこの世界でとれた魚にクリームソースらしきものをかけたものとパンをもらった。

異世界とは言ってもパンはあるらしい。

ただし名前だけは違いこっちの世界では、 パオというらしい。

また肝心の料理の味だが優が今まで食べてきた魚料理の中でも一、 二を争うほど絶品であった。

たださすがは異世界とも言うべきか魚の身の色は紫色であり、 見た目はあまりおいしそうではなかった。

そんな絶品料理に舌鼓をうった後、 優とシアは異世界の事について詳しく知る勉強の為午後の訓練先である図書館へと向かった。

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