第三十七話 分断
ダンジョンの中は、 前俺が入ったダンジョンとは、 違い荒野のような場所で常に砂嵐が待っており視界が制限されてしまう環境のようだ。
「おいおい。 こんなのが、 百階まで続くのかよ」
「違うわよ」
そう言って眼鏡をかけたミスティ俺の前に現れた。
そしてその隣には、 マチルダとエレンもいた。
「違うとは、 どういうことだ?」
「多分この環境は、 約二十階まででそれ以降は、 また違う環境になるってことよ。 そんなことよりあんたサンドゴーグルとか持ってないの?」
「持ってない」
「じゃあ、 防寒具とか耐火服とかは?」
「それも持ってない」
「あんたそんなんでよくダンジョン攻略にきたわね」
そう言うミスティは、 どうやら呆れているようだ。
「いや~前に入ったダンジョンと同じもんだと思っててな」
「前あんたが入ったダンジョンの適正レベルは?」
「30だ」
「そんなの誰でもクリアできるじゃない!」
「そうなのか? まあ、 いいやとにかく今すぐお前が持ってるサンドゴーグルを作るから少し待ってくれ」
「作る?」
「クリエイト」
俺は、 創造魔術を使いサンドゴーグルをルーの分も含めて作った。
また、 俺がこいつらの前で創造魔術を使った理由だからこいつらとは、 これ以上どこかであうこともないだろうし問題ないと判断した結果だ。
「これで出来上がり。 ほれ、 受け取れルー!」
そう言って俺は、 ルーにサンドゴーグルを投げた。
「ありがとう! 大切にするわね!」
どうやら気にいってくれたらしい。
「優。 あんたすごい力持ってるんだな! 驚いたぜ!」
「優さん。 その能力は、 なんていう名前なんですか?」
「秘密だ」
「そうですか。 それは、 残念です」
エレンは、 すぐに引いてくれたがここで文句のある人物がいた。
「ちょっと私には、 教えなさいよ! そんな能力今まで見たことも聞いたこともないわよ!」
ミスティは、 そう言いながら俺の胸倉をつかみながら頭を揺らしてきた。
「おい! 離せ! 酔う! 酔うから!」
「いやよ! あんたが話すまで絶対にやめない!」
「絶対に話さん!」
「ふふふ、 その威勢がどこまで続くかしら! さあ、 覚悟しなさい!」
ミスティは、 そう言った後さらに強く揺らしてきた。
「ヤバい! ヤバい! ヤバい! このままだと吐く! 吐いちまう!」
「さあ、 早くその能力の情報について吐きなさい!」
「違ぁぁぁう! 俺が、 吐くのはもっと別のものだ! このまま続けるとお前の顔目掛けて吐くぞ!」
「ふ、 できるもんならやってみなさい!」
「ルーさん! 助けてぇぇ!」
「わかったわ!」
俺が、 ルーに助けを求めるとルーは、 ミスティを猫のように持ち上げた後、 思いっきり投げた。
しかし、 この時ある事件が起きた。
それは、 ミスティは投げられるとき俺の服を離さなかったのである。
そのため俺は、 ミスティ―の巻き添えをくらい一緒に吹っ飛ばされた。
そして、 俺は、 気が付くとミスティと二人きりの状況で、 ダンジョンの壁際まで吹っ飛ばされていた。
「いててて。 おい、 無事か?」
「無事よ。 そんなことよりあんたの師匠の強さあれ絶対人間のものじゃないでしょ」
だってルーは、 堕天使ですし。
「そんなことよりこれからどうするんだ? 正直視界が悪すぎてこのエリアで、 合流するのは、 無理そうだが?」
「あんた。 馬鹿だと思ってたけどそれくらいは、 わかるのね」
「うるさい。 それでこの後は、 どうするんだ?」
「そうね。 とりあえず、 この荒野のエリアを早く抜けましょう。 そのためには、 上の階を目指すしかないわね」
「了解した。 なら少し待っててくれ。 ルーにもそう伝えてくる」
「どうやって?」
「それも気にするな」
(ルー聞こえるか?)
(聞こえてるわよ。 それとさっきは、 ごめんね。 本当は、 あのチビ女だけを投げるつもりだったのに優まで一緒に投げちゃって)
(そんなに気にしなくてもいいよ。 それととりあえずの目標だが……)
俺は、 そのあとルーにこのエリアを抜けて合流しようということを話した。
(了解よ。 でも今優は、 あのチビ女と二人きりなのよね?)
(ああ、 そうだが?)
(ふ~ん。 優のことだからあのチビ女に手をだすことはないと思うけどもしてをだしたら……)
(だ、 だしたら?)
(殺しちゃうぞ)
そう言うルーの声は、 とても優しい声音だったが、 逆にその声と話した内容のギャップに俺は、 恐怖した。
(だ、 大丈夫だよ! 俺が愛してるのはお前だけだから!)
(ふふふ。 そうね。 それじゃあ、 後でね)
そう言って俺たちは、 話を切り上げた。
そのタイミングでミスティもこちらに来た。
「ちょっと顔色悪いけど大丈夫なの?」
「大丈夫だ、 問題ない」
「そう。 それで話は、 終わった?」
「ああ、 だから早く上に登ろう。 だがその前に……」
そう言って俺は、 ナイフを作り出しある方向に投げた。
「ちょっと急にナイフなんて投げてどうしたのよ!」
「ああ、 多分今俺たちは、 モンスターに囲まれてる」
「え、 モンスターなんて全然見えないけど? あんたの勘違いじゃないの?」
「勘違いならいいんだけどな!」
俺は、 そう言いながらリボルトナイフを引き抜きモンスターの反応がある場所に向かって切りつけた。
そして、 俺の予想は正しかったらしくカメレオン型のモンスターが正体を現した。
「おいおい。 なんなんだこいつ?」
「嘘! なんでこんな下の階からこんなやつがいるの!」
「知ってるのか?」
「ええ、 こいつはキャメロンと言ってね。 戦闘能力は、 あまり高くないのだけどありとあらゆるものに完璧に擬態できて、 気配の遮断までできるのよ。 だから一応S級の魔物ね。 よくあんたそんな奴に気づいたわね」
「ありがとさん!」
俺は、 そう言いながら、 姿を現した個体の命を確実に奪った。
「それよりお前も戦ってくれ! 正直俺の予想だと俺たちは約百体のキャメなんとかに囲まれてる。 俺一人だと正直つらい」
まあ、 つらいというのは、 嘘で純粋にこいつの実力が知りたいだけだ。
「仕方ないわね。 なら一撃でこいつら全員片付けてあげる! 我ここに願う! この一帯を地獄とかしありとあらゆる生物を燃やし尽くせ! インフェルノ!」
火の上級魔法であるインフェルノは、 自分の周りに火の海を作るような魔法であり、 その火が一度でも物に引火すればそのものを燃やし切るまで、 決して消えることはないとてつもなくエグイ魔法だ。
しかしこの魔法は、 仲間を巻き込むこともあり、 パーティーを組んでいる時は、 基本使わないような、魔法だ。
そして、 俺は今絶賛この火から逃げている。
「てめぇ! 俺がいること忘れてるだろ!」
「べ、 別に忘れてないわよ! ただついでに汚物であるあんたも燃やしてやろうと思っただけよ!」
「チクショー! 後で覚えとけよ!」
インフェルノの効果は、 約十分ほどして終わった。
そのおかげでキャメロンは、 何とかなった。
そして今俺が何をしているかというと……
「てめぇ俺を殺す気か! ふざけるな! 反省しろこの馬鹿!」
「い、 痛い! それでも私は、 絶対に反省なんてしないわよ!」
俺は、 先ほどのこいつの行為に完全にぶち切れ今は、 ミスティに頭グリグリの刑罰を執行している。
「ほう。 ならもっと強くしてもいいな」
「ひっ! ご、 ごめんなさい! 許してください! 反省しますから!」
「嫌だ!」
そして俺は、 さらに力を強めた。
十分後俺も満足したため、 離してやった。
「う~。 お、 女の子にこんなことするなんてあなたそれでも男なの!」
「うるさい! 今のは、 お前が悪かったからしただけだ! いわばしつけだ!し・つ・け!」
「わ、 私が子供だって言いたいの!」
「ああ、 お前なんて胸も対してないようだし、身長も小さいしな! 初めて会ったときは、 十歳児かと思っちまったぜ!」
「い、 言ったわね! ぶっ殺してやる!」
「なあ、 そんなことより早く進まないか?」
「あ、 あんたが私のことを幼児体型だって言ったせいじゃない!」
「ごめんごめん。 だから涙目でこっちを見るな」
どうやら本人もかなり気にしているようだ。
それと幼児体形とは言っていない。
「う、 うるさい!」
俺達は、 そんなコントをやめ、 次の階への階段を探すのであった。




