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第二十一話 リボルトナイフ

シアが見つけてきた宿は名前こそにゃんにゃん亭という名前だがそれは、 ここの主人の妻が猫型に獣人の為つけられたというだけで見た目は至って普通の宿屋であった。


「あ、 お父さん! さっき来た綺麗なお姉さんが帰って来たよ!」

「なぁシア。 一つ聞きたいんだが異種族間同士でも子供って生まれるのか?」

「ええ。 生まれますよ。 ただし私達ヒューマン族の方は血の影響力が弱いので傍目から見たらハーフだとは判断できませんけどね。 でも優さん。 なんでいきなりそんな事聞いてきたんですか?」

「いや。 別に……ただ気になっただけだよ」

(もしかして優。 私との子供が欲しいの?)

(あ、 ルー。 元に戻ったんだな)

(質問をはぐらかさないで頂戴)

「優さん?」

(すまん。 シアが怪しく思ってるみたいだからまた後でな)

(優の意地悪……)


~~~~~~~~~~~~


にゃんにゃん亭は、 シラサギ亭や王宮で優たちが泊まった部屋に比べれば圧倒的に狭く、 ものもベットなど必要最低限の者しか置いていなかったのだが優にとってはそれがかえって落ち着いた。

だがそんな部屋にも優は一つだけ不満を持っていた。。

それは風呂がないことだ。

一応体を拭く程度の者は宿屋の主人にいえば用意はしてくれはするようだがやはりお風呂の方が圧倒的にいいのである。


(部屋の確認もできたことだし、 俺は今から下に降りて食事をするつもりだけどルーはどうする?)

(私もついて行くわ)

(了解)


今日の夕食はオークの肉だ。

優はオークの巣を殲滅させた際微妙に肉をくすねておいたのだ。

その肉を宿屋の主人に調理してもらえないか交渉してみたところ無事了承を得られたのだ。


「へぇ。 これが……」


肉は肉本来の味を楽しめるステーキで出てきた。

味付けは、 異世界の果実を使っているようでとても食欲をそそる香りを放っていた。


「うわ~! とっても美味しそう!」

「喜んでくれて何よりだ」


雪の喜んでいる表情につい優の顔もほころんでしまう。


「でも優ちゃんはこのお肉一体どこで手に入れてきたの?」

「そ、 それは秘密だよ」


ーあんな嬉しそうな顔をしている雪の前でこれがオークの肉だなんていうことは死んでもできない……

幸い詩織には優がそのような葛藤を抱えるなどとは気づいてはおらず、 肉から放たれる誘惑に耐え切れず口に次から次へと肉を運んでいた。


「ん~! この肉美味しい! 優ちゃんも早く食べてみなよ!」

「あ、 ああ……」

「お兄ちゃん。 変な顔したけどどうかしたの?」

「え、 いや。 べ、 別に……な、 なんでないぞ?」

「そう?」


優はやはりオークを仕留めた張本人とあって肉を見ているとどうしてもあの醜いオークの顔を思い出してしまい、 他の面々とは違いあまり食欲がわいていなかったのだ。

だがそうは言っても食べないわけにはいかない為、 優は意を決して口に運んだ。


「うん。 うまいな」


-でもやっぱりあの顔が……

その後優は三十分かけて何とか食べきるのであった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~


「さて食事も終わったことだし、 胡桃の成果を聞かせてもらえるか?」

「分かったよ。 まずこの世界には前にも召喚された人間がいたみたいだよ」

「人数は?」

「二人みたい。 それで目的は私達と同じみたい」

「そうか」

「それでそいつらは最終的にどうなったの?」

「それはわからなかったんだよね……」

「全く。 肝心な所で使えないわね」

「詩織様がそれを言いますか」

「何? 文句あるなら言いなさいよ」

「まあまあ二人とも落ち着けよ。 それと胡桃。 情報ありがとな」

「あまり役にたたなくてごめんね」

「気にするな。 胡桃は悪くない」


優はねぎらいの意味を込め胡桃の頭を撫でたのだがそれが他の面々には気に食わなかったらしく優の脛を蹴り、 優は痛みでしばらくの間悶えていた。


「今日はこれで解散にするか。 明日は、 俺が四人の部屋に呼びに行くから」

「わかったよ! それじゃあおやすみなさい。 優君」

「おやすみ。 優ちゃん。 寝坊しちゃだめよ」

「おやすみなさい。 お兄ちゃん」

「今日は、 色々お疲れさまでした。 おやすみなさい優さん」


優は四人と別れると少々速足で部屋に戻った。


「ギリギリ間に合った……」


 優が焦っていた理由は偏に今の時刻が21時を回っていたからだ。


「ルー。 姿現してもいいぞ」

「了解よ」


ルーは優からの許可を貰うと昨日と同じく姿を現した。


「優は、 今日どうするつもりなの?」

「今日は、 武器を作ろうと思う」

「武器?」

「ああ。 実は今日俺オークキングと戦ってたんだよ。 それでそん時城でもらった武器をベースにしたものを使ってたんだがいかんせん強度が低すぎてな。 だから頑丈で、 切れ味のいいひと振りが欲しんだよ」

「了解よ」

「おい。 何故急に密着する。 暑くるしいじゃないか」

「私は夜ぐらいしか優にしか甘えることはできないのだからこれぐらい我慢して頂戴。 それに武器を作るって言っても部屋の中で作るんでしょう?」

「そうだけど創造魔術は、 使用する際かなり集中力がいるんだよ。 だから隣にお前がいるとうまくイメージできない」

「あら。 それってもしかして私が隣にいると興奮して集中できないってこと?」

「ち、 違うわ!」

「じゃあいいじゃない」

「ああもう! わかったよ! 好きにしろ」


あれから十分優は必死に武器をイメージしようとした。

だが自身の右手から伝わるルーの胸の感触のせいでうまくイメージすることはできず、 優は自身の敗北を認めた。


「すいません。 さっきは強がり言ってました。 集中できないので離れてください」

「全く優は、 本当に素直じゃないんだから」


 ルーはそう言いながらさらに優への密着度合を増した。


「なあ。 そう言いながらさらに密着してくるのは何故だ?」

「それわね。 私が優から離れたくないってこと」

「チクショー! いいよ。 やってやろうじゃねぇか!」


優はこの後ルーからの思惑を断ち切るために般若心経を唱えながら武器づくりをし、 無事終えることができた。

そして優はその際自身の想像魔力が使えば使うほど、 自分の想像力が上がれば上がるほど完成度が上がることに気が付いた。


「はぁはぁ……やっと……できた……」


優の右手には漆黒の短剣が握られていた。

この剣は反逆の大剣ルシファーの物と同じ構成物質で作られている。

だがその物質というのが問題で、 反逆の大剣ルシファーを構成している物質は、 優にとっては道の物であり、 ユグドラシルでも今では存在していない為、 優は自身の魔眼の力とルーからの話をもとに何度も試行錯誤をし、 失敗作はゆうに千を超え、 納得の一本ができる時には優は目や鼻からは血が流れ、 口からは血を何度も吐くほど弱った状態になっていた。


「お疲れ様。 もう今日はベットで寝てなさい」

「え、 でも……」

「いいから寝てなさい。 全くいくら優が不死身といっても限界はあるのよ?」

「す、 すまん……」

「別にいいわよ。 それに私は今の優の辛そうな顔。 あまり見ていたくないわ。 だから今日は早く休んでまた元気な姿を見せて頂戴」

「本当にすまん。 本当はお前との約束を……」

「私達にはまだまだ時間があるのだからそんな約束また今度でいいわよ」


 ルーはそう言うと優をベットに運ぼうとしたのだが優にはどうしてもまだ一つだけやることが残っていた。


「ルー。 少し待ってくれ。 せめて最後にこの剣の名前を決めさせてくれ」

「いいけれど早くしてね。 私の見たところ今の優の体いたるところが深刻なダメージを受けていて不死身の再生力でも回復が間に合ってないんだから」

「分かってる。 そうだなこの短剣の名前は……」


ー俺はこの剣を作る際反逆の大剣ルシファーの素材を用いた。

-それならば名など考えるまでもない

優は少々儚げに笑った。


「リボルトナイフってとこだな」

「リボルトナイフ? なんでそんな名前なのよ?」

「名前の由来は、 簡単だよ。 俺の世界の言語のひとつで英語ってものがあるんだがその言語の中で反逆という意味を持っているのがリボルトって単語なんだよ。 だから俺はその単語に短剣の意味を持つナイフくっつけただけだよ。 でもまあ少しダサい名前かもしれないがな」

「そんなことないわよ。 いい名前だと私は思うわ」

「それはよかった……」

「お疲れ様優。 ゆっくりおやすみ」

「ああ、 おやすみルー……」


優はそのまま意識を失ってしまった。


「全く。 本当に無茶するんだから。 でもそんな貴方が私は好きよ優」


ルーは優の額にキスをすると優を抱えてベットまで運んだ。


~~~~~~~~~~~


朝優が目覚めると優の隣には笑顔で優の事を見つめるルーがいた。


「お、 おはよう。 それでルーは、 一体何してたんだ?」

「何って優の寝顔を見てただけよ。 優の寝顔とてもかわいかったわよ」

「はあ……相変わらずお前はぶれないな」


優の血は寝ている間にルーがふき取っていたため今の優からは多少血の匂いはするものの完全にいつも通りの健康体と言えた。


「どうしたの優? 急に人の顔をジッと見ながら黙って?」

「いや、 何。 ただ俺の嫁さんは、 世界一可愛いなぁと思ってな」

「な、ななな!」


ルーは優からの不意打ちがかなり効いたようで恥ずかしさのあまり布団の中に潜ってしまった。。


「あはは。 相変わらず初心だな。 愛い奴め」

「うっさい! 優の馬鹿!」

「ああ。 俺は馬鹿で結構。 てかそろそろ四人の部屋に行かなくちゃいけないから出て来いよな」

「わ、 わかったわ!」


ルーの顔はまだ少々赤かったが優はその事について指摘することはなく、 四人の部屋へと向かった。

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