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第十九話 オークの巣殲滅クエスト

「ここが目的地です」


町から森まではおおよそ一時間程かかった。

優は町から出る際ルーに雪達を守るよう依頼したため、 今は別行動中である。


「それでユウさんは、 どうやってオークの巣を壊滅させる気なんですか?」

「別に。 ただ正面からオークの巣に突っ込むだけだぞ?」

「それは少々無謀ではないでしょうか? オークはB級相当のモンスターです。 しかも巣にはオークキングといいオークのボス的存在もいて、 A級相当のモンスターなんですよ?」

「はいはい。 いいからお前は黙って俺の戦っている姿でも見ていろって」


優のステータスからすればいくら慢心していようがA級やB級のモンスターが何体束になったところで全く意味をなさない。

その為優は最も早く相手を殲滅できる真正面から殲滅することにしたのである。


「で、 ですが……」


優のステータスを知らないリサからしたら優のその行動はまさに蛮勇。 言い方を変えると無謀と言えた。

その為優に忠告をしたのだが優はその事に全く耳を貸さず、 真正面から突撃を掛けた。

さてオークと言われて一番に思いつくことと言えば豚の顔をした人型のモンスターであり、 性欲がとても強いモンスターというのが一般的な意見であることはまごうことないだろう。

ユグドラシルに存在するオークは、 その一般的なイメージで構成されているものとたいして変わりはなかった。

体は全身茶色の毛でおおわれており、 豚は豚であり、 匂いは非常に臭く強烈である。

ただ一般的な物と大きく違う点もある。

それはこの世界のオークにはメスが存在しないのである。

その為オークは自身の種族を反映するために人間をさらい、 そのメスを孕ませ自身の種族を増やしているのである。

また彼らの頭は非常に悪く、 時には女性と間違えて男性をさらうのである。

その為オークはこの世界すべての人間から嫌われている生物と言っても遜色はない。

しかしそんなオークにもメリットはある。

それはオークの肉はとても美味しいのだ。

その味は一度食べるともう他の肉は食べられなくなってしまうほどの絶品の味であり、 市場では非常に高く取引されている。

値段が高いのはモンスターとしてのランクが高いのもあるが一番の理由としては、 討伐に失敗した際捕まりオーク達に死ぬまで犯されるといった最悪の事態を想像する輩が多いからだ。


「さてとクリエイト」


優はリサを森の前に置いてきた後、 一人でオークの前まで到達していた。

そして今は想像魔術を使い、 ダンジョンでルーによって壊されたナイフを少々強化した物を作り出していた。


「さて狩りの時間だ。 オークども覚悟しやがれ!」

「ブヒィィィィィィィィ!」


優の叫びにオーク達は、 反応し、 優に向けて攻撃を仕掛けてきた。

だが優はオークの攻撃など通じるわけがなく、 一匹また一匹と的確に相手の急所を狙い、 数を減らしていた。

優が相手の急所がわかるのはそれは直感スキルのおかげである。。

直感スキルとは、 執行者専用スキルであり、 相手の急所の場所を感覚だけで判断するが可能なのである。

またこのスキルは、 相手の弱点がわかるだけでなく、 相手の攻撃を直感で予想できるという防御の役割もこなすことも可能であり、 まさにチートと言うにふさわしい性能をしている。


「さて残るはお前だけだな」


優はあれから五分も掛からないうちにオーク達を殲滅し、 今や残るはオーク達の親玉であるオークキング一体を残すのみの状況であった。


「ブヒィ! ブブヒィ!」


オークキングは仲間を殺された事に大層腹を立てており、 鼻息は荒く、 手に持っていた巨大な斧を振り回していた。


「かかって来いよ。 豚野郎。 それとも怖いのか?」


優のその挑発にオークキングは、 優目掛けて斧を振り下ろした。

だがオークキングの振りはかなりの大ぶりの為、 軌道を読むのは非常にたやすいことであった。


「ハッ! 所詮は豚。 実力はこの程度か」


優はオークキングの攻撃をあっさりよけ、 短剣出オークキングの首を突き刺そうとしたがオークキングの皮膚は、 普通のオークとは比べ物にならないほど固く、 逆に武器が壊されてしまった。


「まじかよ! こいつがここまで硬いなんて予想外だったぜ!」

「ユウさん! 無事ですか!」

「バカ! なんで来た! 早く逃げろ!」


リサはかなりお人好しな性格をした少女である。

その為優の事が心配で森の中まで優の事を探しに来たのだ。

ただ今の状況においては、 リサは戦闘の邪魔をする足枷以外他ならなかった。


「ブヒヒヒヒ!」


オークキングは、 自分よりも圧倒的な弱者であるリサの存在に気が付くとターゲットを優からリサに変え、 下卑た笑みを浮かべた。


「え?」


リサは今頃になって自分が絶対絶命な状況にあることに気が付いた。


「ブヒャ!」


オークキングはリサに向かって全力で走り、 斧をリサ目掛け振り下した。

リサは唯の平凡な受付嬢である。

その為一流の冒険者でも反応が難しいオークキングの攻撃に反応することなどできず、 唯自分の死を待つこと以外できなかった。


「糞がぁぁぁぁ!」


優はこの時葛藤していた。

リサを助けるには自分が想像魔術を使い、 オークキングの攻撃よりも早く攻撃を振り、 一撃で相手を仕留めなければならない。

優にとってそれは造作のないことである。

だがリサの目の前で想像魔術を使ってしまったら、 優がファントムに変装し、 何者かと戦闘する際一発で正体が判明するといったリスクが伴われるのである。

その為優はこの場でリサを助けることに迷いが生じていたのだ。


「ああ。 私ここで死ぬんだ……」


リサとて本当は死にたくはない。

だがこの状況を覆せるものなどいない。

リサは一人そう思い、 泣きながら一言別れの言葉を呟くこと以外できる事はなかった。


「諦めてんじゃねぇぇぇ!」


優は叫んだ。

そして右手に漆黒の大剣を作り出し、 そのままオークキングの首を盛大に跳ね飛ばした。


「ああ。 やっちまった」


結局の所優は、 自分の正体がバレる事よりもリサを助けることを選んでしまったのである。


「全く。 力もないくせに俺なんかの心配をしてここまで来るなんてお前はとんだお人好しだよ」


優がリサを助けた理由をあげるとすれば彼女が偏にお人好しであったから。

ただそれだけのシンプルな理由に他ならない。

リサは自分に力がないことを十分理解している。

それなのにもたった一日程度の付き合いの人間の為に自分の命を平気で懸けよう人間だ。

このような人間を人によっては、 馬鹿や愚かと言う人間もいるだろう。 いや寧ろ大半の人間はそう言うのが当然の事である。 何せ人間は、 命あっての物種なのだから。 だが優の意見は、 違う。

優はそんな愚者にも等しい行いをできるリサの事を美しくと感じていたのだ。

そしてそんな人間が理不尽に殺されることを優は断固として許容できなかったのである。


「にしてもこの剣を瞬時に作るのはやっぱり無理があったか……」


優がオークキングの命を仕留める際作り出した武器。

それは反逆の大剣ルシファーのレプリカである。

ルシファーの構成素材は、 観察眼によって理解していた優ではあったが何分のその武器を作っている成分が特殊であったがために短時間で、 しかも大した集中していない状況では完璧に複製しきれなかったのである。

その為レプリカはオークキングに一回切りつけただけで完全に根本から折れてしまっており、 使い物になりそうになかった。


「さっきから何もいわないのだけれども一応無事なんだよなリサ?」

「ひゃ、 ひゃい。 ありがとうございまひゅ……」


リサはの語尾は自分は驚きのあまり変な物になっていた。

またそれだけではなく、 リサは緊張の糸が途切れたためか尿をもらしてしまっていた。


「こ、 こっちを見ないでください!」


リサは今の自分の情けない姿を優に見られたことが恥ずかしかったのか顔は恥ずかしかのせいか真っ赤になっていた。


「そう恥ずかしがることでもないだろう。 何せお前には命の危険が迫っていたんだから。 それに俺は、 お前がお漏らししたことを周りに言いふらすような人間なんかじゃないよ」

「その言葉は本当ですか?」

「本当だよ」

「本当に本当ですか?」

「本当に本当だよ」

「本当に本当に本当ですか?」

「ああもうしつこいな! 本当に本当に本当だって言ってんだろう!」

「……わかりました。 貴方の事を信じます」

「はぁ。 それはよかったよ。 てかそんな事よりもお前俺がオークキングを殺す瞬間を見ていたか?」


優にとってはこれは非常に重要なことである。

仮にリサがその場を目撃していた場合、 その事をリサが周りに言いまわすような人間ならば優は彼女の事を最悪殺さなければならないからである。


「いいえ。 私あの時は、 頭が真っ白になっていて気づいたらユウさんが、 オークキングを殺していたという感じなので特に何も見ていませんでしたよ?」

「そうか。 ならいい」


優はリサのその返事に安堵した。


「さてクエストはこれで達成でいいのか?」

「あ、 はい。 オークの巣殲滅クエスト無事完了です。 でももしかしたら巣の中にオークに捕まった人がいるかもしれないのでそれの確認だけしてもらったほうがありがたいのですが……」

「言われなくともそのつもりだよ。 それで立てそうかお漏らし嬢?」

「ユウさん! 冗談でも言ってもいい冗談と悪い冗談があるんですよ!」

「悪い悪い。 打からそんなに怒るなよ」

「全くもう……」

「ん? お前よくみたら足ケガしてるじゃないか」


リサは先ほどオークキングに襲われた際、 少し足をひねってしまったようであった。


「これぐらい大丈夫です。 だからユウさんは私の事なんて気にせず……」

「馬鹿かお前は。 怪我人を放っていけるわけないだろう。 ほら。 おんぶしてやるから背中にさっさと乗れ」


優はリサの前に腰を下ろし、 自分におぶさるよう促し他のだがリサは先ほど優に迷惑かけた事を非常に気に病んでおり、 一向に乗ろうとしてこなかった。


「ええい! お前いい加減にしろよ! こっちだって時間押してんだよ!」

「なら私の事なんて放っておいてくださいよ! この程度の傷別に自分一人でも……」



リサは無理やり立とうとしたのだがその時足にズキリとした痛みが走った。


「痛……」

「ああもう言わんこっちゃない!」

「で、 ですが……」

「お前は黙って俺の言うことを聞いてればいいんだよ! じゃないとお前がお漏らししたこと町に広めるぞ!」

「わ、 わかりましたよ! だからそれだけは勘弁してください!」


優が言った言葉はもちろん脅しだけであり、 実際は言うつもりなど全くなかった。

あれからリサを背負った優は、 オークの巣を見て回ったが捕らわれた人間は誰一人いなかった。


「どうやらこの巣まだできたばかりのようですね」

「さてそれじゃあそろそろ戻るか」

「ちょっと待ってください! よくよく考えたら今の私下着とスカート濡れてるじゃないですか! こんな状態で町なんかに戻ったら確実に私がお漏らししたことがバレちゃうじゃないですか!」

「あ? それならどうすんだよ?」

「ユウさん。 ズボン持ってませんか?」

「んなもん。 持ってるわけ……あるわ」


優は城から出る際も自身の制服を肌身離さず持っていたのだ。


「それならその服私に貸してもらえませんか?」

「男物だけどいいのか? それにズボンだけ着替えると違和感が凄まじいぞ?」

「それなら全部着替えるので全部かして下さい」

「お前な少しは遠慮というものを……」

「お願いします!」

「はぁ。 分かったよ。 だけど後でちゃんと返せよ?」

「ありがとうございます」

「あ、 それと着替える時ここの中で着替えろ」

「そ、 それってつ、つまり私の裸を見たいという気持ちが……」

「そんなわけないだろう! お前を一人にしてまた死にかけられたらたまったもんじゃないからだよ!」

「あ、 なるほど」


その後リサは岩の影で優の制服に着替え、 優はそれを確認するとまたリサの事をおぶって冒険者ギルドへと向かった。


「「優君ちゃんおかえ……」」


あれから優たちは一時間かけて冒険者ギルドに戻り、 中に入ると雪と詩織が優の事をお出迎えしようと待っていたのだが二人は優の制服を身にまとい、 優の背中で気持ちよさそうに眠っているリサを見て硬直してしまった。



「おい。 リサついたぞ」

「あれ? もう朝なんですか?」

「そんなわけないだろう……てかそんなことより早く医者の所に行くぞ」


そういう優の様子はどこか焦っている様子であった。

 

「優さん。 顔から冷や汗出ていますけどどうかしたんですか?」

「え、 ええとそれは……」

(あの女殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す……)


優の冷や汗の原因はルーが優と密着しているリサに嫉妬した言葉を大量に浴びせていたからだ。

-このままだとリサがルーに殺されかねないな

優はそれからリサを急いで医務室に運び、 リサが治療を施してもらっている間にアレックスの元を訪ねた。


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