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第十八話 ギルドマスター

「こりゃあひどいな。 完全にあばら骨がいってやがる」


老人は、 優が壁にめり込ませた冒険者二人を見てそう呟いた。


「おい。 これをやったのは誰だ?」


老人は、 犯人を特定するため周りの威圧するような目で人間を見た。

すると全員が全員優の事を見た。


「これをやったのはお前か?」


-はぁ。 こうなると思ったから問題を起こしたくなかったんだよ……

だがここで名乗りを上げなければ優の評判は確実に下がる。

その為優は自ら名乗り出る他なかった。


「それをやったのは俺だよ。 それで俺をどうする気だ? 騎士団にでも引き渡すのか?」


優のその言葉に老人は首を横に振った。


「いいや。 状況によってはそうするかもしれねぇがそれをするにはまず事情を着てからじゃないとな。 だからとりあえずお前は俺についてこい」

「分かったよ。 てか一応聞くがあんた何者だ?」

「俺か? 俺はこのギルドのトップ。 いわゆるギルドマスターだ。 ほらそんなことよりさっさと歩け。 こっちは、 こんな事件早く終わらせてまた仕事をしなくちゃいけないんだからな」

「はいはい」

「優君。 私も行くよ」

「私もついて行くわ」

「それはダメだ。 ついてくるのはコイツだけだ」


ギルドマスターにそう言われたのが不服だったのか雪達は、 ギルドマスターを敵として認識し、 鬼すら竦んでしまうほどの目でギルドマスターの事を強く睨んだ。


「おいおい。 こいつらなんて目してやがる。 こんな目普通の人間がするような目じゃねぇぞ」


ギルドマスターも雪達の放つ威圧に多少なりともひるんでいた。


「雪。 姉さん。 ここは黙って待っていて欲しい」

「でも優君の今の状況は私達のせいなわけだし」

「そうよ。 優ちゃんは何も悪くないもの。 悪いのは私達なんだから」

「別今回の事は二人のせいじゃないよ。 結局問題視されているのは俺の行動なわけだし。 その行動をしたのは俺一人だけなんだからさ」

「でも優君……」

「でももへったくれもない。 いいからここで二人仲良く待ってろ」

「……分かったよ」


雪は渋々納得した。


「よし。 いい子だ。 それじゃあ早く行こうぜ。 ギルドマスターさん?」

「お前よくこいつらの事飼いならせるな」

「おい。 雪達は俺にとって大事な人たちだ。 それを飼いならすとか罵倒してんじゃねぇぞ。 お前もあいつらと同じような目にあわせてやろうか?」

「すまん。 これに関しては完全に俺が悪かった」

「反省しているならいい」

「優ちゃん」

「何?」

「後で話した内容教えてね」

「分かったよ」

「それじゃあ行くぞ」


ギルドマスターは優にそう呼びかけると前を進みだした為、 優もそれに置いて行かれぬようついて行った。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「入れ。 ここが俺の部屋だ」

「……」


部屋の中には、 書類整理用の机と椅子と来客用のソファしかなく、 机の上には仕事の書類と思われるものが山積みであった。


「さてまずお前はなぜあいつらをあそこまで痛めつけたんだ? 事と次第によっては、 お前をギルドから追放処分にしなくてはならないのだが?」


優はその言い方に少しムッとした表情をした。


「俺があいつらを痛めつけたとは、 言い方が悪いな。 俺が奴らに行ったのは、 ただパンチを一発入れただけだよ。 それにあいつらは、 俺の姉と幼馴染をここで犯すとか言いやがった。 だからつい頭にきて殴っちまったんだよ。 反省はするが後悔はしていない」

「ふむ。 それがあの二人を痛めつけた理由か。 なるほど。 それなら殴る理由もわかる。 だが パンチ一発というのは本当なのか? あの二人は言動はともかく、 C級の中では、 かなり上の方の実力なんだがな」

「俺が嘘をついてると?」


優は目を細め視線をを鋭くした。


「ああ。 俺はそう思っている。 何せあの二人の負傷を目で見た限りでもあばら骨はいってやがるし、 中の臓器までかなりひどいダメージを受けていやがる。 仮に治ったとしてもあの二人はもう冒険者としてはやっていけないそれぐらいのダメージだ。 そんなのを普通パンチ一発でやるのは、 たとえS級冒険者でも不可能だからな」

「ハッ! S級ってのも思ったより大した事ないんだな」

「言うじゃないか。 ガキ」

「黙れクソ爺。 とにかく俺は、 嘘は言っていない。 なんなら証拠でも見せてやろうか?」


するとギルドマスターは少し考えるような仕草を見せ、 数分後には何か思いついたような顔をした。


「ふむ。 それじゃあ今から一つ試験と行こうか」

「試験?」

「そうだ。 実はこの町から出て少しした場所に森があるのだがそこにオークの巣があるらしくてな。 お前にはそれを一人で壊滅させてきて欲しい。 もしお前がそれを実現できたのならお前の言葉を信じ、 無罪放免としてやろうじゃねぇか」

「ルールは?」

「そうだな。 今日の日没までに完了してくればいい。 唯それだけだ。 まあそれだけと言ってもこれはS級冒険者が受けるような代物だがな」


ギルドマスターは優の事を挑発するような笑みを見せた。


「いいぜ。 上等じゃねぇか。 そのクエスト受けてやるよ。 ただし俺が仮にそのクエストをクリアしたら白金貨1枚よこせ」

「さすがにそこまでは無理だ。 だせても金貨8000枚だ」

「お前人のことを疑っておいてそれはないんじゃないのか? お前は俺の実力を疑ってんだろ? なら別に白金貨一枚くらいいいじゃねぇか」

「ええい! わかった! なら金貨9000枚でどうだ! 普通このクエストは、 成功したとしても大体金貨5000枚相当のクエストなんだ。 これ以上は譲れん」

「分かったよ。 それぐらいで勘弁してやる。 それで俺が壊滅させたって証拠は、 どうすればいいんだ?」

「それは、 このギルドの受付嬢を一人お前につける。 受付嬢に基本戦闘力はない。 だからそいつを守りながらクリアしろ」

「それぐらいのハンデくれてやるよ。 それでだが今すぐにクエストに向かいたいからさっさと監視役の受付嬢をよべ。 くそ爺」

「本当に口の悪いガキだな。 まあいい。 リサ。 入れ」


ギルドマスターのその声を合図に部屋の扉を数回ノックされた後一人の女性が入ってきた。


「お呼びでしょうかギルドマスター?」

「お前は確か……」


中に入ってきたのは昨日優の担当をしていた犬型の獣人の女性であった。


「ええと確かあなたは昨日登録に来た、 ええと、 名前はユーリさんでしたっけ?」

「ユウだ! なんだよユーリって! 一文字しかかすってないじゃないか!」

「えへへ、 すいません。 どうも私は人の名前を覚えるのが苦手のようで」

「なんだお前ら顔見知りだったのか?」

「はい。 この方は昨日冒険者登録したんですけどその時私が担当したんです」

「お前昨日冒険者登録したばかりで、 次の日にはもうこんな騒ぎを起こしてるのかよ」


ギルドマスターはどこか呆れたような様子であった。


「うるさい。 黙れ。 しゃべるな。 息もするな。 そしてそのまま死ね」

「なぁ少し俺の扱いひどいんじゃないか?」

「それでギルドマスターはなんで私を呼んだんですか?」

「ああ、 それはな……」


ギルドマスターは今回の事件の内容を全て話した。


「話は分かりました。 優さんが、 問題を起こした理由としては、 女の私からしたらとても素晴らしいことでむしろほめたたえるべき行為だと思います。 実は、 あの二人。 私達受付嬢にもデートしないかしつこく誘ってくるような人たちでやたら自分は強いだの自己自慢がうざかったんですよ。 だからユウさんが、 あの二人を再起不能にしてくれたことを全受付嬢に代わりお礼申し上げます」


リサは、 優に向けて深く頭を下げた。


「おい。 頭上げろって」

「全く優さんはこんなに親切な人なのにギルドマスターときたら……」


リサは頭を上げるとギルドマスターの事をゴミを見るような目で見た。


「あのリサ?」

「大体ですよ。 今回の事件の原因はあの二人を今まで追放処分にしなかった自分の責任じゃないですか! それなのにもユウさんが悪いと決めつけてましてや実力まで疑うなんてとんだクズ野郎です! それにユウさんがS級相当の腕があるのは、 昨日のモンスター素材の鑑定を見れば一目両全じゃないですか!」

「お前一体昨日なんのモンスターの素材を持ってきたんだ?」

「ブラックマンティス」

「な、 何! おい、 その話は本当なのか!」


ジークは優の両肩を掴むと何度も交互に揺らしてきた。


「ほ、 本当だ! だから手を放せ! 脳が揺れて気持ち悪くなるだろうが!」


優の顔色が悪くなったのに気づいたのかギルドマスターは、 手を離した。


「す、 すまん。 そうなるとお前が言ったことの信憑性が増しちまうんだが、 これは俺しくじったかも」

「ギルドマスターの自業自得です。 ちなみにユウさんがオークの巣を壊滅させた場合は、 金貨五千枚はギルドの方から支払いますが残り金貨4000枚は、 ギルドマスターの給料から引かせてもらいますから」


リサのその言葉にギルドマスターは顔を真っ青にした。


「な、 なあユウ。 少しお茶でも飲んでいかないか?」

「そのお茶に睡眠薬でも盛るつもりか? 残念だったなくそ爺! お前が俺の言うことを信じていればこんなことには、 ならなかったのにな!」

「ええい! さっきからくそ爺、 くそ爺とうるさいわ! 俺には、 アレックスって名前があるんだよ! くそガキ!」

「お前なんてくそ爺で十分だよ! そんなことよりリサ早くオークの巣を壊滅させに行くぞ!」

「わかりました」

「じゃあな! せいぜい俺がクエストを失敗することでも祈ってるんだな!」

「チクショー!」


優はアレックスの叫びを聞きながら気分よく部屋を後にした。

ーにしても今回の俺やけにハイテンションだったな……

-次からは注意しなくちゃな……


その後優たちは雪達に自分がどこに行くか伝えたのだがそしたら雪は自分が優に多大な迷惑をかけたことに耐え切れず泣き出してしまい、 何度も謝っていた。

この時優は自身が結果的に雪の事を泣かしてしまったことを死ぬほど悔やんだ。

だが今は悔やむよりも雪の涙を止めることの方が優先順位が高かった優は雪が泣き止むまで強く抱きしめた。

その時周りの冒険者とリサは何かほほえましいものを見る目で優の事を見ており、 そんことが優にとっては勘に触ったがここで切れたら先ほどと同じこととなると思い堪えていた。

こんあ状況に普通なら切れるであろう詩織は先ほどから優を死地に送り込んだアッレクスへの怒りを爆発させており、 今にも殴り込みに行きそうな勢いであったがそれを周りの女性冒険者が必死に抑えていた。


「……優君……ごめんね……」


雪は優が抱きしめて初めて一時間後にようやく泣き止んだ。


「いいよ。 それじゃあ俺はもう行くから」

「……うん」

「姉さん。 とりあえず今日は何か簡単な依頼でも二人でこなしておいてくれ」

「わかったわ」


詩織の返事を聞くと優は、 リサを連れて冒険者ギルドを後にした。


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