第十六話 情報収集
優は部屋の窓から飛び降りた後、 酒場目指して夜の街を走っていた。
夜の街は、 昼とは違い、 人の声は全くせず、 フクロウと思われる声だけが鳴り響き、 異様な雰囲気を放っていた。
「ついた」
優の目の前には木製と思われる建物が建っており、 ここが優の目的地である。
優は酒場の中に入るとカウンター席に腰かけた。
「いらっしゃいませ。 注文はお決まりですか?」
バーテンダーは四十代半ばと思われる男性であった。
「私は酒を飲むのは初めてでして、 何かおすすめのものはありますか?」
-この口調少し恥ずかしいな……
優は今姿だけでなく、 自身の口調も変えて完全に変えていた。
「それでしたら、 これなんてどうでしょう?」
バーテンダーは後ろにあったボトルを一本手に取った。
「これは、 エルフの国で作られたお酒なのですが、 アルコール濃度がそれほど高くなく、 お酒初心者の方にも飲みやすいですよ」
「そうですか。 ならそれを一杯もらえますか?」
「承知いたしました。 では少々お待ちください」
優はお酒が運ばれてくるまでの間、 王の評判について聞き耳を立てることにした。
「ったく。 今の王は本当クソだよな! 税金は高いし! 俺が作った作物の半分も年貢だとかなんとか言って持ってきやがって! これじゃあいつか飢え死にするわ!」
「おい。 お前少し飲みすぎじゃないのか?」
「ああ!? お前だって腹ん中では俺の同じこと思ってるんだろう!?」
「いや……それはそうだけど……」
「ならそんないい子ぶってんじゃねぇよ! 酒が不味くなるわ!」
「はぁ……本当にほどほどにしとけよ……。 にしても本当に誰か革命の一つでも起こしてくれないもんかねぇ……」
「そんなの無理に決まってんだろう! あの糞王の野郎貴族派の連中からほとんど指示されてるんだから!」
「それもそうか……」
-安心しろ。 貴様らのその願望すぐに俺がかなえてやる。
優は仮面の奥で不敵にほほ笑んだ。
「お待たせしました」
バーテンダーは緑色の液体が入ったグラスを優の目の前に置いた。
「ありがとう」
優はグラスを手に取ると中のお酒を一口飲んだ。
「これはなかなか」
お酒は優の世界で言うグレープカクテルに似た味であり、 バーテンダーの言う通り初心者でも非常に飲みやすいであった。
「お口にあいましたか。 それならよかったです」
「バーテンダーさん。 一つ質問してもよろしいかな?」
「構いませんよ」
「バーテンダーさんはこの国の王についての情報を何かご存じではないでしょうか?」
「いいえ。 私は特には……」
「そうですか……」
「ですがその情報について知りたいのでしたらあちらに座っておられるお方に聞かれたほうが良いのではないでしょうか?」
バーテンダーは一人の女性を指さした。
「彼女は?」
「いわゆる情報屋というものです。 お金を払えべ大半の情報は入手できると思いますよ?」
「なるほど。 ではアドバイスされた通り、 あの女性に聞いてみようと思います」
優はバーテンダーにお礼をいい、 席を情報屋の隣に移った。
「今少し質問いいですかな?」
「あなたその年でそのしゃべり方かなりおかしいわよ?」
「私のしゃべり方は、 今は気にしないでください。 こちらにも事情はあるので」
「ふ~ん。 それでお姉さんに何か用?」
-うわ~コイツあんまり関わりたくないタイプの人間だ……
女性は派手なドレスを着ており、 香水に匂いもかなりしていた。
優はこういう遊び慣れていそうな見た目をしたタイプの人間があまり得意ではない。
だが今は自分の好みを言っている場合ではない。
「ええ。 この国の王様についての情報が欲しいんです」
「王様の情報ね。 なら金貨一枚ね」
「それは少々高すぎなのではないでしょうか?」
「王族に関する情報は、 入手がとても難しいのよ。 だからこれが適正価格よ。 別に嫌ならいいのよ?」
ーコイツ結構吹っ掛けてくるな……
優は払うか払うまいか少し考えた。
だがその間にも女性の周りには女性をナンパしに来た思われる男性が集まってきており、 考える時間はあまりなかった。
「それで決まったかしら?」
「……わかりました。 お支払いしましょう」
「ちなみに料金は先払いよ」
優は懐から金貨一枚をだすと女性に渡した。
「毎度。 それじゃあ依頼通りこの国の王様についての情報を話すわね」
情報屋の情報は先ほど盗み聞きした内容がほとんどであり、 「やはりぼられたか?」 と思ったが一つだけ聞いたことがなく、 非情に重要な情報があった。
「さて最後の情報だけど実は今この国の騎士団の一部と市民が革命を考えているらしいのよ」
「ほう。 それで騎士団のリーダーは誰がやっているのですか?」
「剣神ジークという噂よ」
-あのおっさん。 なかなかやってくれる!
優は王に革命をするうえで一つだけ心残りがあった。
それは相手にジークが出てきた時だ。
ジークは一か月とはいえ優の事を鍛えてくれた師匠と言っても間違いではない人である。
その為優はジークに多少なりとも恩義を感じていた。
だからいざ自分がジークと戦う時、 ジークだけは殺したくはなかったのである。
だがそれもジークが革命団にいるという状況によって一気に変わり、 殺さずにすみそうであった。
これは優にとって非常に嬉しい誤算である。
「ちょっと。 私の話聞いてる?」
「あ、 すみません。 ついぼーっとしてしまいまして聞いていませんでした」
「全く。 今回は一回目だから許すけど次からはもう一回お金払ってもらうからね」
「すみません」
「別にいいわよ。 それで先ほどの話の続きだけど騎士団の連中は王を殺したのち第一王女アリシア様を立てるつもりらしいわよ」
「アリシア様ってどんなお方なんですか?」
「アリシア様は市民の目線から物事を考えていらっしゃるお方で、 とても慈悲深いお方よ。 しかも騎士団に所属していて我々の生活も守ってくださっているのよ」
-それならなぜシアの事を気にかけない!
優は今にも荒れ狂いそうなほどの怒っていた。
だがまだ理性は残っており歯を食いしばって怒りを解き放つのを我慢していた。
「そ、 そう言えばこの国には第一王子もいらっしゃるんですよね?」
「ああ。 あいつはダメよ。 あいつは自分の地位を利用して好き勝手やってるらしいから。 しかもあいつ大の女好きで美しい女性なら人妻でも関係なくくってるような奴だから」
優はこの時王子は無残に残酷に殺すことに決定し、 王女の方はひとまず話を決めてから処遇を決めることにした。
「情報提供ありがとうございました」
「いいえ。 気にしないで。 こっちだって商売でやってるんだから。 ああ、 それから私の名前は、 エリゼよ。 私夜は基本この場所にいるからまた知りたい情報があったらその時は、 買いに来てね」
-その年でそれはないだろう……
エリゼの年は見たところ二十代後半。
顔立ちは整っている為十分美人と言えるであろう女性である。
「あなた今何か失礼なこと考えたでしょ?」
「いえいえ。 そんなわけないじゃないですか。 こんなきれいな女性に今まで話しかけたことがありませんでしたからいきなりウインクされて驚いただけですよ」
「そう? ならいいんだけど?」
ーどうやら勘は鋭いらしいな
優は内心安堵のため息をもらした。
「では私は、 これで失礼しますね」
「じゃあね。 私あなたのこと気に入ったからお酒が飲みたい時は付き合ってあげてもいいわよ? その時はお姉さんが子供でも分かるようにおいしいお酒の飲み方を教えてあげるわ。 もちろんその情報は、 無料よ」
「あははは。 その時があったらよろしくお願いします」
-あいつ完全に俺の事性的な意味で襲う気だろう……
エリゼの瞳は獲物を見つけた獣のような瞳をしており、 優は今後あまりこの女には関わらないほうがいいと感じた。
「では私はこれで失礼しますね」
「バイバイ」
優はバーテンダーの酒代銀貨一枚を払うと酒場を後にし、 急いで宿屋に戻った。
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(ルー。 今戻った。 窓を開けてくれ)
(了解よ)
ルーは優が連絡してからわずか二秒で扉を開け、 優は窓向けて跳躍した。
優のステータスからしたら地上から二回の窓まで跳ぶことなど造作もなかった。
「お帰り優!」
ルーは寂しかったのか部屋に入った優にいきなり抱き着いた。
「ただいま」
ールーってかなり寂しがり屋だよな
ルーの見た目はクール系である。
それなのにも関わらず甘えたがりでそのギャップを可愛らしいと優は不覚にも思ってしまった。
「そちらは、 何か問題はあったか?」
「う~ん。 そうね。 強いてあげるならあの赤髪の女が訪ねてきたくらいね」
「シアが? 一体何の用で?」
「それが分からないのよ。 ただ私を無言で見て、 そのまま帰っていったから。 一体何のようだったのかしら?」
「ふむ。 その際お前は、 シアと会話をしたのか?」
「いいえ。 ただ部屋の前にいるのに気づいたから何か用かって聞いてみたらなんの返事もかえってこなくてそのまま帰っていったわ」
「そうか」
-本当にあいつは何しに来たんだろう?
優は首を傾げるほかなかった。
「ねぇ。 そんなことより優から女の香水の匂いがするんだけど? 一体酒場で何をしてきたの?」
ルーは優の服を強く掴み逃げられないようにした。
またルーの瞳には光がともっておらず、 かなり怒っている様子であった。
「別になんもなかったよ。 ただ情報屋が女性だっただけだよ。 だから女の匂いがするんだよ」
ルーは疑うような眼差しで優の事をしばらく見つめるとやがて優の言葉に納得し、 手を離した。
「納得したか?」
「ええ。 だから今からは私との約束を守ってもらうわ」
「了解。 それで俺は何をすればいいんだ?」
「じゃあ、 服を脱いで裸になって」
「いきなりヘヴィーなのきたな……」
優は鈍感ではあるが流石にこの言葉でルーが自分に何を望んでいるかは大体想像できた。
「ふふふ、 どうやら優はこれからどうなるか大体気付いているようね。 そう私の願いとはつまり優と子作りをすることよ! さあ! だから早く服を脱いでしましょう!」
「はいはい。 女王様の仰せのままに」
優が服を脱いである間ルーも自身の身に着けていた者を脱ぎ、 互いに生まれたままの姿の状態でベットに入った。
「それでここからは?」
「ちょ、ちょっとまちなひゃい!」
-噛んでる噛んでる
ルーは最初の態度こそ強気ではあったが今緊張で体がこわばっていた。
「お前ってやっぱりこういうことしたことないんだよな?」
「そ、 そうよ!」
「わかった」
優とて女性と行為をしたことはなく、 かなり緊張していた。
だが自分よりも緊張している相手に無理をさせるくらいなら自分でやるしかないと心を決めた。
「それじゃあ行くぞ?」
「う、 うん」
ルーははじめ痛みのあまり声を上げた。
だがそれもしばらくしたら落ち着き、 その後は夜が明けるまで互いを求めあった。