第九話 展開速すぎないか!?
「なぁ? もしよかったら、あたしたちと一緒に来ない? 呆けた顔してるけど、この人結構頭がよくて、未来を見据えているよ! 幽州の劉焉何とかいう雑魚もそのうち死ぬってさ」
「ほほ? ではお名前をご教授いただけないかな?」
まさかあんな話で信じてくれた。
「俺は……」
ちくしょう! やはり思い出せねー!
「劉備、劉玄徳。で、あたしが張飛、張翼徳、翼徳でいいよ。あんたは?」
ておい! 感傷に浸る貴重な時間を返せ!
「あ、自分から名乗るのを忘れた。失礼した」
彼女は身を正し、再び俺たちに向き直った。
「わたしは関羽、関雲長。同じく雲長で良い」
「……」
は?
「お、お前が関雲長!?」
「えっ、ええ、なんかまずかった?」
「なんてっ! あっ、いや、大丈夫だ」
張飛だって女の子だ。関羽「も」になっただけじゃない。そうだ、慌てる必要などどこにもない。
「くすっ、確かにちょっと呆けてるかもしれん」
「だろう?」
二人して頷く。
呆けているのは俺じゃない、この世界だ!
まさか関羽も女になったとは、ってことは……。
「よし、さっそく盃を交わそう」
「展開早えっ!」
「早くない。のろのろしてたら黄巾賊が始末されてしまう。始末されてしまったら、どうやって国に力を貢献するのだ?」
「うむ。翼徳の言うとおりだ」
と首を縦に振る雲長。
「てか、雲長はこれでいいの?」
「まあ、どこへ行っても結局は軍に入るんだ。だったら同じ志を持つ同志たちと一緒にいたほうがまだ良いではないか」
同志……五分もしてない会話とくしゃみ一つで、もう同志レベルなのか!?
こんな風に、翼徳と雲長に半ば押され引っ張られて、俺たちは張家に着いた。
話を聞くと、年齢順で、翼徳が一番下、俺と雲長は同い年けど、俺は誕生日が少し前だから、一番上になった。
「では玄徳はアニキ、雲長は姉貴、あたしが妹だ」
なんか変な感じ。
線香に火をつけ、誓い用の供物を整えた。
「で、誰に誓えばいい?」
急に思い出したかのように翼徳が聞いた。
「普段なら関羽像にとか――」
「わたしに誓ってどうする!」
笑って反発する雲長。
「ではこれにしよう」
半ば自棄的になり、俺は団扇を取り出した。
「こいつのおかげで、この変なところに来たんだ」
「よし、じゃあこれに決定」
「うむ」
なんかこの二人、どうでもよさそうだけど、大丈夫かな。
でも、こんな美少女二人と一緒なら、なんかやる気が出るかもしれない……いや、やっぱり心配だ。
こうして、俺はいきなり二人の義妹が出来た。