第四話 誰かヒントをくれ!
「あの……つかぬことを伺うが、おじょっ、おねえちゃんのお名前は?」
「あたし?」
「ええ」
「またも急に人の名前を気にし出して、どうしたのよ? ほんっとに変な人。でも別に隠すことじゃないしな」
俺の襟を掴んでいる手を放して、両手を組んでお辞儀をする。
「あたし、姓張、名飛、字翼徳……って何この顔、名前が女の子っぽくないことぐらいあたし自身も分かってるよ」
俺は目を見開き、この自称「張飛」の少女を見て、呆然とした。
「いやいやいや」
違う。そこじゃない。
「あの張飛、張翼徳が実は女とでもいうのか? あいたたっ」
「あたしが女じゃないって どこから聞いた!? この近辺じゃ、誰もが知っていることだ。あたしは女の子よお・ん・な・の・こ!」
「ええ? へえええええ!?」
そんなめちゃくちゃな……。
告示に書いてあるあの名前を見てからすでに嫌な予感がしていた。
まさか……。
ちょっとだけ性別はバグっているが、俺は紛れもなく三国時代に飛ばされた。
うっわ、三国か……。
頭をなでながら空を仰ぐ。思考が一向にまとまらない。
だからなんで三国? どうして俺? ってかどうやって三国に?
「ね、ちょっと答えてよ、あたしの質問。この告示のことどう思う……」
「そんなことどうでもいい」
どこにも書いてないぞ!? 未来人が三国時代に来ていたなんてでたらめな歴史、どこにない書いてないぞ!?
「ちょ、張飛だよね君は……女だけど、君、張飛だよね?」
「えっ? あっ、そうだけど」
「じゃあ教えてくれ! なんで俺はここに居るんだ? どうして俺はここに居るんだ!?」
「え?」
この質問に、彼女はきょとんとした。それでもなんとか質問に答えようと努力を試みた。
「そんなの聞かれても、あたしじゃ答えられないよ。ただ、あたしがあそこの角を曲がったとき、あんたはすでにこの告示板の前に倒れ、ヤバイ病気でも発作したように震えてた」
なんか惨めだ。
てことは、まさしく、俺は団扇を持ったまま、床の穴からここまでに落ちてきたってか?
展開がシンプルすぎて、掴めそうな手掛かりがねー!