新たなる侵略者7
今回は決勝に臨むもう一つのペア。太一と寧々の決勝前日のお話です。
いったい、どんな休日を過ごすことになるのか…お楽しみください!
優と凌也が模擬線の話をしている頃。別の部屋でもまた、パートナーの部屋への訪問を試みている姿の少女がいた。
(はぁ。決勝前ってことで、ついつい着ちゃったけど、こんな早くに失礼じゃないかな?)
花澤寧々。太一のパートナーであり、決勝へとこまを進めた人間である。そして、その扉の前には『太一』と書かれたネームプレートがあった。凌也と同様、彼女もまた決勝前の一日をパートナーと過ごそうと考えたのである。
しかし、凌也たちとは違いこの一日は彼女なりに過ごそうと考えていることがあった。
(いつも迷惑かけてばかりだし、今日くらいは太一さんに休んでもらわないと!)
彼女は毎回パートナーである太一に対して迷惑をかけている。という負い目を感じていた。無論、太一自身もそんなことを感じていないのだが、寧々の性格上、どうしても意識してしまうのである。
(でもなんか・・・お、男の人のお部屋なわけだし、いきなり来たら迷惑なんじゃ・・・)
特に気にする必要のないことをああだこうだと瞑想していると、不意に後ろからの視線を感じた。
「あれ、寧々さんじゃん。どうかしたの?」
「もしかして、太一に用事があったんですか?」
裕也と洸希である。
この二人も同様、決勝を明日に控えた太一へとエールをしに・・・いや、遊びに来たのである。
二人の登場に寧々的には多少の残念な気持ちを感じつつ表情では何も気にしない風を装いながら・・・もとい装いきれてないのだが返答する。
「あー、その。まぁ、そうですね・・・」
「んー、じゃあ、一緒に行く?俺たちも丁度太一に用があって今日はあいつと一緒にずっと動こうと思ってたんだけ・・・」
「あー、えっと。そうだった。おい、洸希!俺たち太一に明日の決勝のエールを送ったらすぐにでかけるんだったな」
「は?裕也おまえなにいって・・・」
「いやぁ、俺らも準決勝では手ひどくやられたからな。あいつに頑張りの言葉掛けたらすぐにでも特訓するんだよな?」
「おま、いきなりそんな・・・」
「するんだよな?」
「・・・あ、ああ」
裕也は寧々の状況を予想したのか多少強引な攻めで洸希を問い詰めていった。
というか、顔には(頼むから察して?ホントお前どんだけ鈍感なの?)といった具合の思考が表れているような表情だ。
この顔と声のトーンに気圧されないような人間はいないだろう。洸希も流れに合わせそう言った。
「てなわけだから、俺ら太一の奴に挨拶したらすぐ行くからちょっと待っててもらえるかな?」
「え、ああ。はい。わかりました」
そう言葉を交わすと、裕也、洸希の二人はガチャリと音を立て、太一の部屋に消えていった。
(なんか、今日の裕也さんちょっと怖かったような?喧嘩でもしたのかな・・・?)
などという、的外れな鈍感さを発揮しつつ、少しの間太一の扉を前にし最初のあたふたした時の思考を再び巡らす。
が、考え事をしていると時間はあっという間にたってしまうものだ。すぐに再び、ガチャリ。という音を立てて扉が開かれ二人の姿が現れる。
「あ、ごめんね寧々さんこんなとこで立ちっぱなしにさせちゃって」
「いえ、全然大丈夫です」
「それじゃ、俺たちはもう行くから」
「ちょ、待てよ。やっぱ太一と一緒に・・・」
「うるさいな、黙れ(小声)」
「なんだよ、もー」
「あ、そうそう。言い忘れてた。太一にこれから寧々さんが来ること言っておいたから、何も気にせず入っていいと思うよー」
裕也がそういうと、今度こそ二人は去って行った。
扉の前に残されたのは寧々一人。というか、裕也がわざとそうなるように調整させてやったのだが、今度はもう迷わなかった。
(裕也さん、言っちゃったんだもんな。ていうか、もう迷ってる暇ないし。ずっとここにいる方が逆に耐えられないし・・・)
そして、
ガチャ
扉を開けた。
「あ、寧々さん。ごめんね。さっき裕也たちが来てさ、しばらく待たせることになっちゃって」
「全然大丈夫です」
「そっか。ならよかったけど。何か飲む?お茶しかないけど」
「じゃあ、戴きます」
「ほーい」
言うと、太一は奥にあるキッチンスペースに消えていった。
(これが、男の人のお部屋かぁ)
見渡すとそこには・・・とくにあまりなかった。というか、あるのはむしろ、トレーニング器具とかベッドとかトレーニング器具と机とかトレーニング器具とか布団とかトレーニング(以下略)・・・などである。まぁ、太一くらいの年頃なら漫画やゲームなどなどのものがあったりもしていいはずなのだが、滅殺士という特性上そんなに私情に時間を使ったりはしない・・・のだが、太一は特にひどかった。一般の女性に見られたものなら「つまらない男」「筋肉バカ」「筋トレマニア」などという、男としてはちょっと耐え難い言われようをされそうなほどだ。そして寧々は・・・
(かっこいい)
変態だった。
変態というのは少々言いすぎな感じだが、これを見てかっこいいと思うのは「変態」と言われても仕方がないのではないだろうか・・・
と、寧々が部屋を見ていると、ただいま。という言葉に合わせ、二人分のグラスを持った太一が現れた。
「はい、お茶」
「ありがとうございます」
「ん・・・」
「ん、どうかしました?太一さん」
「その、そろそろ敬語やめてくれないかな。お互いパートナーなわけだし、信頼もし合えると思うから」
「そう、ですね。わかりました・・・あ、わかった!」
「うんwそれで、今日は特訓のお誘いかな?俺もさっきまでトレーニングしてたんだけど、そろそろ外に出て実戦っぽくやろうと思ってたんだよねぇ。ちょうど二人が来てくれたから頼もうと思ったんだけどなんか、裕也はさっさと洸希連れて行っちゃうし、困ってたんだよ。じゃあ、ちょっと支度するから待ってて・・・」
「あー、その」
「ん?」
「えっと、訓練じゃなくて・・・」
寧々の話を聞かず、さっさと支度をはじめようとする太一を寧々は言葉で止めた。
まぁ、ここまで困惑なりアクションをすれば、誰だって止まるだろう。
そしてボソリと呟いた。
「お買い物」
「え?」
よくは聞こえなかったが太一は少しきょとんとした。その様子を見て寧々は今度は聞こえる声で、先程よりも大きな声で言葉を発した。
「今日はその、太一さんと一緒にお買い物をしたいなと思い、お誘いに来ました」
決勝前日の言葉である・・・
読んでいただきありがとうございます。というか、またもお久しぶりです。いやぁ、不定期過ぎる!w
こんなんでも少しは見てくれている方がいると思うと感謝です。それはそうと、この小説の題名を変えさせていただきました。「終焉の暗黒世界」から「終焉世界の永遠語」に。いきなりの事ではありますが、これからはこっちで行きたいと思います!また読んでくれると嬉しいです。さて、前置きが長くなりましたが、今回のお話は物語の中心人物の二人の休日風景でした。次回、寧々の言う『買い物』もとい、『デート』?のお話が展開される予定なので、良ければ楽しみにしていてください。それでは




