夢を継ぐ
アルフが話を終えるとそこにあるのは沈黙だった。
何も言えなかった。
どう言えばいいのかわからなかった。
エリナさんは顔を青白くしていた。
それも無理はないだろう。彼女は間接的にアルフの魂を壊してしまったのだから。
『母上に僕の言葉を伝えてくれないかい?』
唐突にアルフは話しかけてきた。
わかった。
「エリナさん、アルフが伝えたいことがあります。聞いて頂けないでしょうか?」
「………わかったわ」
自分がアルフに恨まれていると思ったのだろうか、エリナさんの顔には躊躇いの色がうかがえた。
しかし………
『母上、僕はあなたのことを恨んでなんかいません』
アルフはそう言った。
「………」
『僕はこうなっちゃいましたし、母上のお願いを僕が叶えることはできなくなってしまいました。
きっと母上よりも先に逝ってしまうと思います。親不幸な息子でごめんなさい。』
エリナさんの顔からは涙があふれ出していた。
「いえ………あやまるのは私の方です。私が願ってしまったばかりに、アルフを……」
『あやまらないでください!』
アルフ途中から口をはさんだ。
『母上の言葉は、僕に夢を与えてくれました!
母上があやまったのなら、それは僕の夢を努力をそしてこれまでの僕の人生を否定するということです!』
「……………そうですね」
悲しげにエリナさんは言った。
そしてエリナさんは少しの間考え込むと、そして言った
「アルフ、よく頑張りました!!」
優しげな笑顔で、大粒の涙を流しながら言った。
これが母親なのだと思った。
いつの間にかエリナさんに抱きついていた、
目から何かがあふれて来るのを感じた。
心には充実感と達成感に満ち溢れていた。
きっとこれはアルフのものなのだろうと思った。
しばらく時間たった後、
涙は収まり、エリナさんから離れた。
するとアルフが言った、
『ありがとう、信也。』
アルフがどういうやつなのか、よくわかった気がした。
それからエリナさんとは別れアルフの部屋へと向かった。
エリナさんは、俺の話も今度聞かせてほしいと言った。
アルフの部屋に入るとそのままベットに横たわった。
そして気がつくと、真っ白な空間にいた。
『今日は、ありがとう』
目の前には少し幸せそうな顔をしたアルフがいた。
『信也がいなければ僕の声は届かな母上に届かなかった』
「そうか」
『それでどうかな?世界平和、僕の夢を継いでくれないか?
もちろん無理に、とは言わない。気が向いた程度でもいいんだ』
答えは決まっていた。
「俺にはアルフ程の覚悟なんてないし、まして自分に関係ない人を助けるようなお人よしでもない、だから出来ないかもしれない。それでもいいか?」
『ああ、それでいいさ。僕の夢を頼んだよ』
俺はアルフの夢を継ぐことに決めた。