領地と吸血鬼
おじいさんの話を聞き流しながら頭の中の知識を探る。
さっきアルフが一週間後に血を吸うことになる。と言っていたので、一週間後で検索する。結果とすると、どうやら「契約の儀」なるものがあるらしい。
それを説明するにはこの領地と吸血鬼について語らなければならないだろう。
まず吸血鬼についてだが、前の世界でのおとぎ話とは異なり吸血鬼はニンニクを嫌わないし十字架もきかない。また血液を取らなくても死にはしない。
しかし、血液にはある利点があった。吸血鬼は血液から力を得ることができた。その力は魔法だ。本来魔法を使うには、マナといわれる魔法の元が必要とされる。このマナは空気中や大地さまざまな場所に存在する。その中の一つに血液がある。だから吸血鬼はこのマナを人の血の中から取り出し己の力としたのだ。
また、吸血鬼は自らの血を対象者の血液に混ぜて契約を結ぶことで、で眷属を作ることができる。眷属になったものは、その主から魔力のパスを受け取る代わりにその命を捧げることとなる。と言うのも、眷属には呪いが付与されるからである。その呪いは眷属の主がどこからでも魔力のパスを通じて眷属を殺すことのできるという、恐ろしいものであった。
次に領地についてだが、
ヴァンパイアの王の命令で、アルフの祖父の一族はこの土地に住み着き、領地貴族としてこの土地を治めてきた。他種族の悪魔に対しての防衛が目的らしい。そして人間たちとの大戦の時、ある人間たちの集団が戦いから逃げていたところここにたどり着いた。その人間たちの多くは傷ついていた。その集団たちに対してアルフの両親はある提案をした。それは人間と吸血鬼の共存関係を結ぶことだ。その内容は人間は血を提供し、吸血鬼は人間を守るというものであった。双方にメリットのあるこの提案をその人間たちは受け入れた。状況を考えれば受け入れるしかないようにも思える。
そしてこの際に結んだ契約を形として表したのが「契約の儀」である。
この儀式では人間側の代表の一人が、吸血鬼側の代表の眷属になるというものであった。つまりこの儀式は吸血鬼と人間側の上下関係を明確に示したもである。この儀式は吸血鬼側の代表者が16歳になったとき行われる。そしてその吸血鬼の代表が次期当主となる、アルフである。
アルフに憑依している信也にとってはあまりやりたいものではなかった。
そのことが顔に出ていたらしい。
「どうした若いの?そんな顔して」
おじいさんが尋ねてくる。
おじいさんはこの儀式についてどう思っているのだろうか?嫌なことだと思っているのではないか?
そう思いおじいさんに尋ねてみる。
「なあおじいさん、『契約の儀』についてどう思ってる?」
「またその話か?俺は別にいいとおもうぞ?なんだってあの時助けてもらわなければ死んでいたしな。」
「そうか」
この話は前にアルフがしたらしい。
それにどうやらおじいさんは、大戦から逃げてきた人間たちのひとりらしい。
「それより若いのよかったな、お前さんの眷属となるのはお前さんくらいのお譲さんだと、聞いたぞ!大切にしてやるんだな!」
「え?」
なん……だと!?
驚きの表情が隠せなかったらしい。
「お兄様?眷属にいやらしいことしないでくださいよ?」
「し、しないし!そ、そんなこと考えてないし!」
ジト目エリーは見てくるし、おじいさんはガハハハと景気良く笑った。
少しエリーのジト目が癖になりそうな自分いて怖くなった。
そんなこんなで時間がたち空の色はオレンジ色に変っていた。
「おじいさんさようならー」
エリーはそう言いながら手を振った。
「また今度じゃな!今度はお前さんは眷属も連れて来るんじゃな」
おじいさんもそういいながら手を振った。
来た道をそのまま戻り、お屋敷に着いた。