真実
「お兄様、起きてください。」
どうやら寝ていたらしい。夢の中でアルフは話しかけてきたのか?
エリーが、また起こしに来てくれたのだろう。
さすがにもう、エリーを見て初対面のように動揺するわけにもいかない。
上半身を起こす。
「お兄様、わ、私のことわかりますか?」
エリーは、心配そうな顔で聞いてくる。
きっと、前に会った時のことで心配しているのだろう。
何故だろうか?なんだか、少し懐かしい気がする。
「ああ、エリーだろ?」
「よかったです。一時はどうなることかと………あの冷静なお母様もあわてていたんですよ!」
家族に心配されるというのは、いいことだと思った。
前の世界では心配されたことなんてあったのだろうか?俺が死んでからどうなっているのだろうか?まぁ別にいいか。きっともう前の世界にはいかないだろう。
「………さま……お兄様?」
「ん?あ、ああ。わるい、少し考え事をしていたんだ。」
前の世界に特に思い入れがあるわけではないのに、エリーの声が聞こえないくらい考え込んでいたらしい。
「お兄様、外にまいりませんか?
ここ最近は何やら、人が変わったかのように喜んでいて、そしたら今度は寝込んでしまって、ろくに外には出ていないでしょう?一度外の空気を吸いに行くべきです!」
「そ、そうだな。」
何だろう?何故こんなに心配してくれるんだ?
アルフがどうしてシスコンになったのか、わかったような気がした。
ん?なんか頭に抗議の声が響いているが気にしないでおこう。
「エリーはやさしいな。」
あ、言葉にするつもりはなかったのだけれど……
「お、お兄様を心配するのは妹の務めです!!」
少し頬を染めながらそんなことを言う。
俺の妹にも見習わせたいものだ!
きっと俺の妹なら…………考えるのはやめておこう。
「ありがとな。」
「はい!」
エリーは軽く微笑みながら答えてくれた。
とりあえず、外に行くのなら着替えをしよう。
頭の中の知識を頼りに箪笥を開けると、ゲームの中でしか見たことのない服が詰まっていた。
手頃な服を見つけ、寝巻を着替えドアを開けるとエリーが待っていた。
手を引かれ廊下を歩く。
やっぱり、ここは大きな屋敷のようだ。玄関着くまでに、多くの部屋を見つけた。また、その道中ではメイド服を着た女の人が頭を下げてくる。どうやらアルフの身分は、高いらしい。
と、考えていると、頭の中に声が響く。
『そうだよ、僕たちシリウスフォード家の位は侯爵さ。吸血鬼の王レンジス・フェリオン様に、御爺様が与えられたんだ。君も知識自体は、持っているんじゃないか?』
知識は意思をもって思い出さないと応えてくれないらしい。
「ん?」
ていうか、あれ?今何て言った?ヴァンパイア?
「どうしましたか?」
エリーが尋ねる。
上目使いで見てくるエリーに、ドキリとする。
「な、なんでもないさ!」
内心動揺している。
知識自体は持っている、確かに持っている。だが、それを思い出すのは、止めておいた方がよかったかもしれない。
結論から言うと、どうやら僕はヴァンパイアらしい!しかも貴族である。驚きが、隠せない。と、言うか真実が受け入れられない!
あれ?ヴァンパイアだから日の光を浴びたりしたら死ぬんじゃないか?いや大丈夫なのか?
本来自分で持っていた記憶と、アルフの持っている知識が混同してものすごく混乱している。
『日の光くらいで、吸血鬼は死なないさ。てか、僕が吸血鬼だってこといってなかったけ?』
言ってねーーーーよ!!!
エリーがいるから叫べないので、内心でアルフレッドにおもいっきり突っ込みを入れる。
どうやら、僕はヴァンパイアになっているらしい………
読んでいただきありがとうございます。
自分で読み返していると、なんだか物足りない気がします。こうすればいいなどアドバイスを頂けると嬉しいです。