ラグランの腕輪
誤字脱字は脳内変換の準備オーケー?
ちなみに新キャラ(?)のヘイズ視点です。
「ぎ、ぎゃあーーーーーーー!!!こ、このガキ! きっ汚ねぇっ!!!」
俺は人間の子供の首を掴んでいた手を、勢い良く振り放した。
何故かって?そりゃあ子供の口から出た泡が俺の手に付着したからだ。
そのままドサリと重い音を立てて、子供は地面へと落下した。
落下した衝撃でも、子供は何も言葉を発しなかったのを考えると、どうやら気絶をしているらしい。
「ミゲル! 何か拭くもの寄越せ!ぐ、ぐわっ!ヌルっとするっ!!」
俺は友人であるミゲルへと、拭くものを寄越せと叫んで要求した。
「……………ヘイズ…………人間とはいえ、そんな小さな子供を地面へと叩き落とすのは、流石にどうかと思うよ」
ミゲルは俺へと小さな布を、投げ渡しながら苦言を提す。
「は、はあっ!? 流石に叩き落としちゃいねぇーよ!人聞きの悪い事を言うなよなっ!」
ミゲルが俺を、何か恐ろしい者を見るような目付きで見やるので、ソワソワする。
ミゲルは普段はおっとりとしているのだが、怒らすと恐ろしい威圧感をかもす奴だからだ。
俺は自分がわざと子供を落としたんじゃないと、伝えたくて布を持った手を、自身の前で左右にブンブンと振りながら否定する。
「………………でも完全にこの子供は意識が刈り取られてるよ。地面に落下した衝撃にも声を上げなかった事から容易に推測できるし」
「いや、そんな悠長に推測している場合かよ? このガキ………大丈夫か? 流石に死んでは無いよな?」
ピクリとも動かない子供に、少し心配になってそう言った俺を、何を白々しい? と言わんばかりにミゲルが半眼で睨みつけて来る。
「ご自分で落としたくせに、急に心配ですか? 父さんたちが言っていたよね? 我々獣人とは違って、人間は狡猾だけどか弱いって! しかも見たところこの人間は女性の様ですし」
そう言うとミゲルは、倒れて微動だにしない人間の子供の元にしゃがむと、「大丈夫か?ちょっと!おーい?」と声を掛けながら、持っていたもう1枚の布で口元を拭ってやっている。
チッ! お優しいこって。
人間の子供はミゲルが声を掛けても中々起きなかった。
焦れた俺は子供の頬を、軽く叩いてみたのだが全く起きない。その上軽く叩いただけなのに、頬が赤くなってしまい、またもミゲルには睨まれてしまう始末。
人間の子供って奴はどんだけ弱いんだよ!?
何度叩いても、揺すぶっても起きない子供に途方に暮れ始めた俺は、ミゲルにひとつの提案をした。
「………………よし、ミゲル! この子供はここに置いて帰るぞ!」
「は? 何ですって?聞き間違いですかね? もう一度お願いします」
くそっ!間違いなく聞こえていただろうに、再度聞いて来るとは…………。
「だ・か・ら! コイツをここに置いてくんだよ。別にここは村の中心地だから特に危険も無いだろ?」
「確かに………村の中だから危険は無いでしょうが、さっきから目を全く覚まさないのは心配だよ。 それにほら………これ」
心配そうな表情をしながら、そっとミゲルが子供の腕を持ち上げた。
「!!!!!」
マヌケにもさっきまで全く気付かなかったのだが、子供の腕には俺たち虎族の男が番と決めた相手に贈る腕輪がはまっていた。
「ラグランの腕輪っ!? マ、マジか? って事は、コイツはうちの一族の誰かの嫁ってことだろ?」
「うん、そうなるね。 でもねぇ、少し妙なんですよ。 腕輪自体は本物のラグランなんですが、これには個人を特定する刻印が無いんですよ」
「は、はあっ!? そりゃあ確かに妙だな」
ラグランの腕輪には通常、番相手の男の刻印が彫ってある。
これにより、この番は俺の相手であると周りに知らしめる意味合いもあるのだが、この子供のはめている腕輪にはそれが彫られていなかった。
腕輪自体は偽物では無さそうだが、この子供の年齢から流石に番と結婚しては居ないだろうから、考え得る事はひとつである。
この村の男が、コイツに手を出されるのを防ぐために取った策…………って事か?
「はぁ……………………面倒な。 ったく!誰だよ!人間相手に婚 約 かますアホはよぉっ!」
これにより、俺のこの場に置き去る案は却下となったのであった。
ラグランの腕輪は、結婚指輪みたいな物です。
グエン少年は実は知らない。
親から「お前が大きくなって護りたい娘が出来たら渡してやれ」って言われていただけ。
ネネを護りたいから渡した!ただそれだけ。
でもきっと後悔は微塵もしないであろう。むしろあの時の僕、良くやった!って感じで喜びそう。