お姉さんぶるが全然お姉さんではない
誤字脱字は……気が向いたら直します。
「ネネ、こっちこっち!」
嬉しそうに私を手招きしながら笑うグエン少年の両方のお耳がピコピコ動いてる……それに連動する様に、尻尾もパタパタ動いていて……とってもキュート!!
ああっ……チクショウっ!愛らしさが止まらないんですけどぉっ!
飛び付いてじゃれたいけど、我慢だ。ハァハァ……年下の少年に猥褻な行為を行ったとして、逮捕とかされたら洒落にならんからね。まぁ、この世界に警察とか法とかがあるのかは分からんが、もしあったら不味いから我慢するさ。
「ほら、ネネ!ここが村の広場で、この大きな樹が目印だよ。もしも村の中で迷子になっちゃったら、ここを目印に集合しよう!ね?」
「………う、うん。分かった」
はあうっ……くっ…苦しい。何なんですかね、その純粋な微笑みはっ!私の穢れきった瞳で直視したら目が焼け焦げてしまいそうだよ!ハァハァ…。
そんな私に、神様は天罰を与えたもうた。
フラフラしながら歩いていると、何もない筈の場所でつんのめり転んでしまう。
「あうっ……痛っ…………」
ズシャアッ……って、結構豪快に転んでしまった。
痛てて、何だか最近痛いことばっかりだな。
貧弱な私のチビッコボディは、転んだ痛みの余韻で中々立ち上がれない。
すると、上から馬鹿にしたような少女の声が聞こえてきた。
「ププッ……。この子、ドジな上にトロイんじゃない?」
な、何ですと?事実であっても、それは言っちゃ駄目でしょう?
ここは一発大人の恐さってやつをお見舞いしてやるっ!と、プンスカ怒りながらも痛みを堪えて立ち上がった私の眼前に、ピーンと立ったお耳の勝ち気そうな表情の少女が腕を組ながら佇んでいた。
えっ?何これ?頑張って立ち上がった私への、神様からのご褒美ですか?だったら嬉しいなぁ、ハァハァ……。
そのピーンと立ち上がったかわゆいお耳が目に入った瞬間、私の怒りは即座に霧散してしまったのであった。
お耳がピーンとしている時は、大体相手を警戒している時が多いいはずなので、怖がらせない様に接せねばならんな。うんうん。私は怖くないぞ~お嬢さんっ!って、ヤバイ……今のは本格的に変態臭いぞ、私。
「って、ネネ!大丈夫?膝から血が出ちゃってるよ……待ってて!」
グエンはそう言うと、おもむろに私の前にしゃがむと、ペロペロと膝を舐め始めた。
うひゃあっ!これ何てご褒美?ネコ耳少年に足をペロペロしてもらうのって何てご褒美???
私の脳内が喜びで爆発しそうになっているのと、同時に目の前の勝ち気そうな少女の方も何やら怒りで爆発しそうな顔になっていた。
「なっ……ななななななな、何をしてるのよっ!グエンッ!!!」
真っ赤に染まった顔でグエンに叫んでいる。
「えっ?ペロッ……チュルッ……。何って、ネネの膝から血が出ていたから消毒だよ?」
別段動揺していないグエンに対して、少女の方は真っ赤な顔で愕然としている。
うん、その気持ち私も同じだ。異性の足をペロペロしたくせに、全然動じてない……だと?
クッ……。グエンの将来は天然のジゴロか何かかしら?恐ろしや恐ろしや……。
「しょ、消毒ったって、そんな他種族の子なんてほっとけばいいのにっ!その子の血からバイ菌でも入ったらどうするのよっ!!」
ガビーン………。バ……バイ菌扱いされてしまった。ショック………。
ガックリと項垂れた私を見たグエンは、すぐさま勝ち気少女を批難した。
「こらっ!そんなこと言ったら駄目だよ!皆仲良くしなさいって、言われてるでしょ?ほら、ネネに謝るんだミーナ」
ミーナと呼ばれた勝ち気な少女は、プイッと後ろを向くと絶対に謝らないぞ?っていう断固たる意思をこちらに見せ付けて来る。
「嫌よっ!私は悪いことは何も言ってない!事実しか言ってないんだから!私が謝る必要性を感じないわ!」
強がりを言っているのは、グエンも私も分かっていたので互いに小声で会話する。
グエンが「許してあげて?悪い子じゃ無いんだけど、たまに暴走するんだ」と、済まなそうに言って来る。
私も「うん、もう気にしてない。大丈夫…ボソッ……ネコ耳に悪い奴は居ないから」と、最後の方は少し濁して答えたのであった。
「ミーナ……。そろそろ素直になりなよっ!自分でもちょっと思ってるんでしょ?言い過ぎちゃったって!」
グエンのその言葉に、動揺してビクッと少し尻尾を揺らしてしまうミーナ………はぁ…かわゆい……。
「………っ……………っ……」
ミーナは必死に耐えている雰囲気を背中で醸し出している。って、そこまで私に謝るのが嫌かね?そんなに嫌われる様な事は、まだしてないはずだけど?
何故だろうか?解せぬ……。
だがしかし、私が気付かない内に何かしちゃったのかもしれないし、私の方がお姉さんだからこちらから謝ってあげようかな?
「ミーナちゃん、何か私が悪い事をしちゃったかな?だったら謝るから、仲良くして欲しいなぁ……」
下手に出てみるよ。仲良くしたいっていうのは事実だし、問題ないからね。
私の言葉でミーナのピーンと立ち上がったお耳は、オロオロするように、ピコピコ左右に動いている。
分かりやすすぎだね、その耳は………。獣人は嘘はつけないな、こりゃあ。だって耳の動きでバレてしまうからね。
私が下手に出たのはある種作戦なのだが、ここに大人の汚さとは無縁の純粋な心根の持ち主が居た。それがネネの誤算であり、敗因であった。
「そっ、そんな!ネネは悪くないのに、そんなに謝らないで良いと思うよ。ミーナ!いい加減にへそ曲げてないで、仲良くしなっ…ムググ?」
「ああっ!それ以上言っちゃ駄目!」
私が慌ててグエンの口を塞ぐが、既に遅かった。悲しそうな表情のミーナが両方のお目めに涙を溜めながら、物凄いスピードで駆け去ってしまったのであった。
ノォォォォォォォォォ!!ミーナ!カムバァァァァァァック!!!
私は声になら無い絶叫を上げたのであった。
もう分かってると思いますがミーナはグエンが好きなのです。
しかし鈍いグエンは毛ほども気付いてない。
だからこそミーナの行動や言動がグエンには不可解に写るのでしょうね。
ついでにネネもかなり鈍いです。まともな恋愛経験など皆無ですので仕方が無いのですが。
まぁ、ネネのあっちでの最後が最後ですので、恋愛とかってまずしなさそうですね。
ネコ耳みてハアハア言ってれば幸せ~って、それ何て変態だ?