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鉱石オタク浪漫譚  作者: GESHI
第一章
3/17

2話

以前投稿した2話は諸事情により削除いたしました。

もうしわけないっす!

「どうして・・・、こんな事に?」


青年は天幕の中の柱に縛られていた。

ボサボサの髪に、土で汚れた顔や衣服。

近くにはボロボロな袋が置いてあり、鉱石が数個落ちている。


「じっちゃん、怒ってるんだろうなぁ・・・」

青年をため息をついて項垂れる。

家を出る時は、こんな事になるなんて思いもしなかった。















「俺の名前はエリオ。君は?」

青年――エリオは目の前の年下らしき女性に尋ねる。

女性は15,6歳位だろうか。

胸は慎ましいものの、腰は程よく引き締まっており、無駄な肉がない程に鍛えられている。



女性の鎧は土や埃で汚れていて、元の輝きを失っている。

頭の後ろで黒髪をまとめており、黒い双眸はエリオを軽く睨んでいる。

警戒しているのか、いつでも斬りかかれるように、柄に手をかけたままだ。



「私は、エミール。ハインツベルの騎士(・・)だ」

エミールは騎士の部分を強調する。

言外に「妙な真似をすれば斬りすてる」と、エリオを威圧する。



「その鎧を見ればわかるよ」

エミールが着ている鎧は、一般の王国兵の鎧より上等なものだ。

そんな鎧を着るのは王国の騎士か将軍くらいだろう。


エリオは苦笑しながら、敵意がないことを告げる。

エミールの殺気を気にしていないのか、彼女から視線を外し、周りの死体を見渡す。


「これは君一人で――」

「貴様の質問に答えるつもりはない。こちらの質問にだけ答えてもらうぞ」


有無を言わさぬ強い語調でエリオの言葉を遮り、問いかける。

「まず、貴様はここで何をしていた?」

地面から出てくるなんて、いくらなんでも奇抜すぎる登場の仕方だ。

他国の斥候か何かか?と、エミールが深読みしても仕方ないことだろう。


「じっちゃんに頼まれて、この辺で取れる鉱石を取りに来たんだよ」

ほら。と、エリオが持っていた袋から鉱石を取り出してみせる。

エミールの高圧的な態度を気にしていないのか、普通に受け答えしている。


なんでも、このあたりで取れる鉱石は、一定の衝撃を与えると一瞬だけ光るそうだ。エリオの祖父はそれを研究するためにお使いを頼んだようだ。



「そうか。次に、貴様は地面から出てきたが、穴はどこまで続いているんだ?」

「この崖の向こう側の街道あたりだよ」

「・・・そう、じゃあそこまで案内しなさい」


エミールは、さも当然と行った感じで命じる。

「いいよ~、ついて来て」


相変わらず、エミールの殺気を意に介さないエリオは、そそくさと穴へ入っていく。エミールがその後に続く。


前を歩くエリオは、慣れた手つきでカンテラに火をつけ、先へ進んでいく。


エリオに剣の切っ先を向けながら、エミールは2,3歩後ろを歩く。

狭い坑道では剣を振り回せないので、すぐ対応するにはこういった形を取る必要があるからだ。


「足元が不安定だから、転ばない様に気をつけてね?」

「騎士を愚弄する気か!!いいから黙って――ひゃっ!」


エミールは素っ頓狂な声を上げて尻餅をついてしまう。

降りる形の段差で足を滑らせてしまったようだ。


「大丈夫?」

エリオは手を差し出すが・・・。

「ぅぅ、うるさい!!さっさと進め!!」

顔を真っ赤にしながら切っ先を向けてきたので、手を引っ込める。



エミールが立ち上がったのを確認してから、二人は坑道を黙って進む。

途中、何箇所か横穴などがあり、まるで迷路の様だ。



エリオは歩き慣れているからか、危うげなく坑道を進むが、エミールは何度か転倒しそうになっている。


先ほどまでの戦闘で失われた体力や魔力の影響なのか、足取りは重い。

額にはうっすらと汗をかき、肩で息をしている。

途中、何度かエリオが休憩を促すが、エミールは必要ないと吐き捨てる。



一時間程歩いたところで坑道を抜ける。

エミールを気遣いながら歩いたためか、予定より時間がかかった。

エリオの言葉通り、坑道の出口は、街道から少し離れた崖の下だった。

街道を東に歩けば、半日ほどで「エルラン領」につく。


「お疲れ様。このまま街道を東へ行けば、エルラン領にたどり着けるよ」

そう言った瞬間、背後から何かを地面に落とした音が聞こえる。

エリオが振り向くと、エミールは剣を落とし、地面に跪いてしまっていた。

息が荒く、顔色も悪い。

エリオはすぐさま駆け寄り、額に手を当てる。


「・・・熱がひどい。魔力が尽きかけてるのか」

魔力とは全ての生物が宿している精神力であり、これが尽きる事は死を意味する。

エミールは魔力が減ってきた事による衰弱が激しい。このまま放っておけば、一日と持たずに死に至るだろう。



「仕方ない・・・か」



エリオはエミールを背負い、エルラン領の反対(・・)方向へ歩いていく。

魔術等の説明はまた別の機会にします。

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