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ス・ン・デ・イ・ル

作者: 丸虫52

残酷な描写は無いつもりですが、グロイかも?

 僕の家にはいろいろなモノが住んでいる。

 まず、僕の家族。

 僕(10歳)。小学生なんだけれど、今はちょっとした事情があって長期欠席。不登校じゃないよ。体がちょっとね。

 それから、お父さん(45歳)。でも、お父さんは最近よく会社の出張だって言って、あまり家にはいない。帰ってくると物凄く疲れた顔をしている。大人って大変だね。

 次は、お母さん(43歳)。よくヒステリーを起こす。「精神状態が不安定なんだ」ってお父さんが言っていた。今は静かだけど、また騒ぎだすんじゃないかとちょっと心配なんだ。

 最後に、お姉ちゃん(20歳)。お姉ちゃんは、高校生の時にものすごく怖い目にあったんだって。だからそれから自分の部屋に引き籠って、出てこない。「女の子はデリケートなのよ」って前にお母さんが言っていた。お姉ちゃんの部屋の前に食事を置くのは、僕の役目。時々ドアから覗いている事があるけれど、目が会うとすぐに閉めてしまう。僕、お姉ちゃんの顔、忘れちゃったよ。

 これが僕の家族。なかなか個性的でしょ?

 家族以外にもたくさんいるんだ。紹介するね。

 まず屋根裏に棲んでいるのは。

 毎晩走りまわって煩い、ネズミ一族。時々台所へ下りてくるらしくて、棚や冷蔵庫に仕舞い忘れた野菜やスナック菓子の袋が齧られている。見つかるとすごく叱られるから、齧られたヤツはそうっとゴミ箱へ捨ててるんだ。前にゴキブリ捕りにかかった時は、箱ごと動いていてびっくりした。それはお母さんがそのままゴミ箱に捨てたんだ。僕はお母さんの勇気に感心したよ。

 それから、スズメバチ一家。これは本当は棲んでいた、が正しい。ウワーン、って地響きみたいな音がしてたんで、ライトで照らしてみたら軒下から続く大きな巣があったんだ。鱗みたいな模様が綺麗だったんだけど、こっちへ大群が向かってきたので、慌てて蓋をして逃げた。お父さんに報告したら、早速業者さんに駆除を頼んだ。今は駆除も済んで、今は残骸と死骸が少し残っている。

 それからこれは僕以外知らないけれど、お姉ちゃんの部屋の真上に男の人が一人住んでいて、いつも下を覗いている。ストーカー、って名前だと教えてくれた。僕は時々話をするし、勉強を見てもらったこともある。お礼にお父さん達に内緒で食事を持って行くんだ。でも、下を見ながらハアハアしてる時の顔は、なんだか気持ち悪いから嫌だなあ。

 次に家の中に住んでいるのは。

 まず、犬が二匹。シーズーとヨークシャーテリア。どっちも毛が長くて、まるでモップが走っているみたいなんだ。前はお母さんが世話していたから綺麗だったんだけど、今はほったらかしにされているので、全然綺麗じゃない。それに誰も散歩にも連れて行ってやらないから、やたらめったら吠えて煩い。特にお父さんにはよく吠える。「躾がなってない」とお父さんがは怒ってたけど、今はお父さんがあんまり家にいないからかなり静かになった。

 この犬達と仲が悪いのが、お父さんの愛人というおねえさん。おばさんというと叱られるから、おねえさん。いつもスケスケの服みたいなのを着ている。時々裸で歩いている事もある。ものすごい厚化粧であんまり顔を動かさないようにしている。何故そんな事を知っているかというと、前に僕を怒鳴ったときに口の周りや額にできたに皺が、消えなかったからわかったんだ。それから、一日中長い爪を赤や黒に塗っている。僕を見ると必ず「何見てんのよ。あっち行きなさいよ、くそガキ!」って言う。子供が嫌いなんだって。前にあの指で思いっきりほっぺを抓られて、血が出た事があるからなるべく近寄らないようにしている。

 逆に犬達と仲が良いのは、お父さんの知らない、お母さんの恋人だっていうお兄さん。よく犬達が指先や足を舐めているのを見る。舐められ過ぎて骨が見えているけど、にこにこ笑っている。優しい人だけど、顔や手は黒っぽくて汁が出ていて変な臭いがするし、歩くとヘンな音がする。家の中を、お母さんを探して歩き回っている。でも他の人と会うのは嫌らしくて、すぐ隠れるから僕の他の人は気付いていないみたいだ。「お母さんに会うために蘇って来たんだよ」が口癖。でも最近はだんだん言葉がはっきりしなくなってきたし、右目の所に穴が開いて来たんだ。大丈夫かなあ?

 あと、人間じゃないけれど、仏壇の前におばあちゃんの幽霊が座っている。何で幽霊だってわかったかというと、向こう側が透けて見えるからだよ。一日中手を合わせてぶつぶつ言っているんだけど、なんて言っているのか僕にはわからない。

 それから床下に住んでいるのは。

 最初に、猫の親子。最近生まれた仔猫がにゃあにゃあ泣いて可愛いんだ。でも撫ぜようとすると、親猫が呻り声を上げて引っ掻くからそれがちょっと不満、かな。

 それからゴキブリ。大きくて真っ黒いのが三匹、相談しているみたいに集まっているのを見たんだ。一匹いたら三十倍入るっていうから、そのうち家を乗っ取らるかもしれない。嫌だなあ。

 最後に、僕のお母さんが床下の土の中住んでいる。以前お父さんと大喧嘩をした時お父さんが首を絞めたんだ。「浮気」とか「不倫」言ってたけれど、僕には何の事だかわからなかった。その後お父さんが、大きな穴を掘ってお母さんを入れたんだ、「これからはここがおまえの棲み家だ」って言って。

 僕はそれを見ていた。お父さんは僕に気付くと、台所から包丁を持ってきて、僕を細切れにした。痛くて痛くて、僕はそのまま死んでしまうかと思った。ところが、僕は切り刻まれた大きさのままでたくさんの僕になってしまった。身長は3センチくらい?

 小さくなった僕を見てお父さんはびっくりしていたけど、すぐに「お前はもう学校に行かなくていい。家の中の事をしていろ」って言ったんだ。僕は最初の頃勉強しなくていいと喜んでいたんだけど、最近は学校に行きたいなあと思っている。友達に会いたいなあ、って思うんだ。でも家の外へ出ると、危険な事がいっぱいあるから駄目なんだ。前に外へ出た時に何人かの僕が、カラスや野良ネコ野良イヌに食べられたり、車に轢かれたりした。あれは痛かった。

 あんまり僕の数が減ると、いろいろ困る事が起きる。例えば、料理をする時包丁は重くて一人では持てないから、ピラミッドを作ってみんなで持つようにしている。掃除をする時には掃除機は大きくて届かないし、下手をすると僕が吸い込まれてしまう。だからみんなで横一直線に並んでゴミを拾う。その方が早いしね。家事って重労働だよ。だから、人数が減ると大変なんだ。

 でも僕はお父さんを嫌ってなんかいないよ? だってお父さんは生活費を稼ぐために、一生懸命働いているんだから。僕はお父さんが家に帰ってきた時は、マッサージしてあげたりスタミナドリンクを作ってあげたりする。お父さんは涙を流して「ありがとう。ゴメンな」って言う。だから僕はお父さんにもっと楽になってもらいたいから、ネットでマッサージの仕方を研究したり、すぐ楽になれる特性ドリンクの作り方を調べたりしている。

 この間も「効き目バッチリ!」って言う飲み物を見つけて、作ったんだ。最初は濁ってて、泡なんか出てたけど、今は澄んで綺麗な紫色になってるんだ。お父さんが帰ってきたら飲ませてあげようと思っている。楽しみだなあ。

 そんなこんなで、今日も僕の家には、いろんなモノがスンデイル。

冬の童話祭りに出す予定で考えたのですが、なんだか変な方向へ行ってしまって諦めた話です。みんなで仲良く暮らしている、と言う話だったはずなのに……おかしいなぁ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 何が何やら、という感じで最後まで読んでしまいました。 非常にインモラルな内容の中に、コミカルな表現もあって、奇妙に惹きつけられる稀有な作品でした。 長編も書かれているようなので、そちらも読ん…
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