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青山くんは友達なしの恋人持ち  作者: 津雲弾正
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第一話

「付き合ってください」

「あっ、えっと、うん。こちらこそ喜んで」

 それは知り合いになって一ヶ月。出会って二回目の話。



 


「この前のボーリング楽しかったよな。また、行こうぜ」

「うそっ、まじ。おまえ、花山とデート行ったの。すげー、じゃん」


 ゴールデンウィーク明けのホームルーム前のひと時。

 クラスメイトは久しぶりに会う同級生に、楽しかった長期休暇の思い出を笑みを浮かべて語る。

 そんな談笑をBGMに青山は頬杖をついて、ただ目の前の教卓を眺めていた。


「よぅ、元気にしてたか。この休み、何してたんだ」


 田上?、田辺?だっただろうかの言葉はもちろん、自分に向けられた言葉ではない。

 隣の席に座る坂……何とか君に向けてであった。


「ああ、それがよ。聞いてくれよ。うちのおかんがさ……」

「おまえのかーちゃん、まじ最悪だな。でも、俺んちの親もけっこううざいぜ。この前、こういうことがあって……」


 最悪というのでどんな内容かと聞いてみれば、朝起こしてくれなかっただとか、夕飯が嫌いなおかずだったとか、くだらない理由で親の悪口を言う男二人。


(家に住ませてもらって、三食しっかりご飯食べさせて貰ってるくせに、文句言うなよ)


 今も嬉々と親の悪口で盛り上がる同級生を横目に青山は心の中で悪態をつく。


「はーい、みなさん。席に座ってください。ホームルーム始めますよ~」


 クラスメイト達は担任の号令に自分の席へと戻っていく。

 しかし、先生の言葉が聞こえてないのか、無視しているのか知らないが、友人の席の隣にくっついて離れず、話している奴らが数人いた。


「はいはい、南さん、岡君。ホームルーム始めますよ。座ってください」

「あっ、うん。また、後で続き話そうね。じゃあ」


 名指しで指摘され、ようやく自分の席に戻る。


(先生来てるんだから、さっさと席に着けばいいのに)


 先生が来たので頬杖を解き、じっと先生の方を向きつつ、青山は心の中でふぅっとため息を吐いた。

 休みが明けても相変わらず、めんどくさい奴らであった。





「あ~あ、ヤマカンの授業はほんとだるかったな」

「亜美~。カラオケ行こ~」

「久しぶりの部活だし、今日は張り切って行くぜ」


 終礼が終わり放課後。

 クラスメイト達が色めきあう中、青山は教科書をパンパンに詰め込んだカバンを片手にぶら下げて、真っ先に教室を出た。


「おらっ、先に行くぞシロー」

「ガッツン、待ってよ~」


 元気よく横を走り抜けていくクラスメイト?……だと思われる陸上部二人には負けるが、足早に廊下を歩く。

 すばやく下靴に履き替え、まだ運動部員もいない運動場の真ん中を横切り、門から出て、そのまま、ずんずんと桜並木を抜けて、その中間当たりで左に曲がり、公園に入る。

 そこでやっと、青山は歩く足を遅めて、公園のブランコに向かった。

 このブランコは公園の端にある。

 メイン通りからけっこうから離れたところにある上、ブランコを囲むように桜木が植えられており、昼間でも陰になっていて暗く、子供が遊ぶには少し危ない雰囲気があった。

 そのせいか、いつ来ても、二つ並ぶブランコには誰もいない。

 青山はブランコの上に落ちている葉を手で払ってから座り、人を待つ。

 ポケットから携帯を取り出し、時間を確かめる。


「4時10分か」


 別にこの後、誰かと遊びに行く約束でも、塾があるわけでもなく、ただ待つのが暇でなんとなしに時間を見ただけであった。

 ここで待っているのも、自分が一方的にしたいからしているだけで、時間など関係なかった。

 そんないつ来るかもわからない待ち人を青山は待ち続けた。


プロローグなので短め。

更新は不定期です。

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