表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/7

4.実技試験

本日投稿分です


――約3ヶ月前

 

 「……あ。ルビアとはぐれちゃった」


 桜の花びらが降り注ぐ中、多くの生徒の流れに押されて彼女とはぐれてしまった。


「どうしよ、ルビア心配してるよね……それにあの事もあるし」


 周りを見回すが、人の多さと背の低さも相まって、彼女のトレードマークの赤髪は全く見当たらない。


「これ、まずいかも」


 とりあえず、この人混みから出よう。そう思って流れに逆らってみるが、なかなか進まない。その時――。


 ――ドン。


 真正面から人とぶつかった。


「あ、ご、ごめんなさい!」


 すぐ謝ると。まず目に入ったのは、水色の髪だった。


「ううん!こちらこそ、人多くて困るねー」


 そこには、カラッと笑う、ショートカットの少女がいた。


「君も、迷子なの?」


「うん……一緒に来た子とはぐれちゃって」


「そうなんだ!僕も!お母さんとはぐれちゃったんだよねー。まぁ、そのうち見つかるでしょ」


 と、全く困ってない顔で言った。


「迷子同士、一緒に講堂に行かない?」


 そう誘ってくれたが、ルビアとこれ以上離れるのは良くない。


「気持ちは嬉しいんだけど……」


「――ユウ!――ユウいるの?」


 その時ちょうど人混みの向こうから、ルビアの焦った声が聞こえてきた。


「あ、大丈夫そう。ありがとうございました」


 そう言って私が離れようとすると――。


 水色の髪の子が、言った。

 

「分かった!クラス、同じになるといいねー。バイバーイ」


 ――現在


「――では、いまから実技試験を開始する。――魔物は――」


 リグナ市国……。


「――受験生徒の数だけ用意――」


 セイラン……。


「――各ブロックに分かれて――」


 ……そして……。


「――これが今回の魔物たちだ」


 そう言って試験教官が、檻にかかった布を取り払った。


 亀のような白い身体。甲羅には、紅い模様――

 

 "ヤツ"と同じ色。


「……う」


 キモチワルイ。


 どうしても連想してしまう。


 ざわめきが広がる。


 無理もない、魔物をまともに見るのは、初めての者がほとんどだろう。


「………大丈夫?」


 隣に立つセイランが、声を潜めて――"私"に話しかけた。


 ――間違いない。


 セイランは、私を認識できている

 

 ……でも、なぜ?


 少し前から、違和感はあった。気のせいだと思ってた。ただの偶然だと。


「だ、大丈夫。ありがとう」


「そう?無理しないでね。何かあったら僕に言って。すぐ助けるから」


 自信に満ちた顔で、セイランが言う。


 私は壇上に立つルビアを、ちらりと見た。


 ルビアは成績優秀者として、今回の試験を免除されている。


 彼女は、どこか落ち着かない様子で――こちらを見ていた。


 私を覚えていられる人なんて、ルビアの他にいないと思ってた。


 ……なのに。


 私を忘れる現象と、私の周りで起きてる異常。


 ――繋がっている?


 考えたくなかった。


 余裕がなかった。


 だから、目を逸らしてきた。


 ――でも。


 ネレイアの事象は、リグナとまったく同じだ。


 ――やはり、"ヤツ"が?


「――それでは所定の位置につけ!」


 試験教官の号令で、生徒が一斉に散開する。


「じゃ、あとでね。試験、頑張って」


 セイランが軽く手を振る。


 私も、自分の試験ブロックへと向かう。


 呼ばれることはないだろうと――たかを括っていた。


「では、次――ユウ」


「――え」


 ――あ、そうか。


 ホームルームの点呼でだって、名前は呼ばれる。


「……はぁ、しっかりしなくちゃ」


「――ユウ?いないのか?」


 試験教官が、再度呼ぶ。


「――あ、はい!います!」


「では、この魔物を試験対象として戦ってくれ。ベインシェル、C級――第三階位だ。授業通り倒してみろ。我々は基本手を出さないが、危険と見たら助けに入る」


 ――あれ?


 本当に試験するの?


 私が?


 ……なんで?


 いつものなら呼ばれても、すぐに流される。


 "居ない者"として扱われるはずなのに――


「……どうした。早くしないと、減点になるぞ」


「……いえ、やります」


 私は魔物の前に出る。でも、どうする?


 "私は魔法を使えない"


 おそらく存在強度が0なのが理由なのだと思うけど……。


 どちらにせよ、試験を受けなければ失格になる。最悪除籍だ。ルビアが地位を利用して、無理矢理私を入学させて同じクラスにしたこと、が全部無駄になっちゃう。


 だが――考えてる暇はなかった。


 ベインシェルがのそり、と動く。


 その顎を大きく開けて、ゆっくりと、確実に私に向かってきた。


「……あ」


 ――紅い。


 あの時と、同じ。


 血みたいな、色。


「……あああああああ!!!」


 ――ルビア視点


 少し前


「なるほど、君がレグナートのところのお嬢さんか。はじめまして、私はソウ・コウレン。軍で元帥をやってる」


 そう言って握手を求めてきたのは、無駄のない短い髪をした女性だった。


「……はじめまして。ルビア・レグナートです」


 私たちを引き合わせた張本人であるジャバリは、居心地悪そうだ。


「ジャバリは……相変わらずそうだな」


 ソウ元帥は、ジャバリに狙いを定めたようだ。


 ――正直助かった。


 家同士の軋轢なんて全く関係ない、とはどうしても言えない。意識してしまう。それなら喋らない方がまだましだ。


 ソウ元帥に詰められて、たじたじのジャバリを横目に試験会場を眺める。


 ユウは――。


 ――セイランと話してる。


 ついさっきソウ元帥と話したばかりだからか、ユウが私以外の人と話してるからか、なんだか落ち着かない。


 試験は進む。


 次はユウの番だ。


 ……まずい。


 試験教官が何故か、ユウを認識し続けてる。


 試験が始まる前、私はユウとこう話した。


 『次、試験だけど大丈夫?ユウ、魔法使えないわよね』


 『大丈夫。いつも通り居ない者として扱われるよ』


 そう――言ってたのに。


 試験が進んでる――!


「――――あああ!」


 ユウの慟哭。


 ユウが危ない――!


 ユウの元に駆けようとした瞬間――


 ガシッ――。


 肩が掴まれた。


 ソウ元帥だ。


 力が強い。


 ビクともしない。


「離して!ユウが!」


「試験を邪魔する気か?」


「そんなのどうでもいい!ユウ!」


「試験教官もついている。問題ないさ。それに――」


 そう、彼女が言った瞬間。


 ドン――。


 青い一閃が、ユウに向かってたベインシェルに直撃した。


「――私の娘もいる」


 霧が晴れた時、残ったのはベインシェルの遺体と、ユウの前に立ちはだかるセイランの姿だった。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ