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1.あなただけ私を覚えている

初投稿です。どきどき。

「――ユウ?」


夏が始まる頃合い、朝のホームルーム。


名簿を見ながら、担任が首を傾げる。


「誰だこれ?」


教室が少しざわつく。

「そんな奴いたっけ?」

「さぁ?」


「……はい」


私は手を挙げる。


「あー、すまんすまん。えっと次〜」


先生は何事もなかったかのように次の名前を呼ぶ。

教室のざわめきもすぐ元に戻る。


――いつものことだ。


昨日もそうだったし、明日もそうだろう。


私は忘れられる、存在強度0だから。


忘れられるのが辛くないと言えば嘘になる。


でも。


「彼女」に忘れられることに比べれば、大したことない。


右斜め前。


赤い髪が、朝日に少しだけ透けて見える。


ルビア。


ふと、彼女がこちらを見た。


まるで、“ここにいるかどうか”を確認するかのような翡翠の瞳。


一瞬だけ、目が合う。


そして。


何事もなかったかのように、視線は前へ戻る。


チャイムが鳴った瞬間赤が目の前に来た。

 

「ユウ!次、移動教室。教科書持って」

 命令だった。


「う、うん」

 

 周りは戸惑ったようにざわつく


「え、ルビアさん誰と話してるんだ」

「見たことないな?」


 でもルビアは気にしない。自信満々の様子でサッと歩き始めてしまった。


「ま、まって」


 私は焦って後を追いかける。

 

 廊下の先で空白学のシュエ教授とルビアが話しているのを見つけた。ふと、ルビアがこちら振り返り私を見た、その視線の先を見て教授が話す。


「あら、ルビアさんのお友達?」

「ち、違う!ただの使い走りよ!」


 そう言ってルビアは焦ったように先に進んでしまった。

 シュエ教授はこちらを困ったように見る。


「あら、なにか怒らせてしまったかしら。えっとお名前を教えてくれる?」

「ユウです」

「そう……ユウさんね」


 シュエ教授は、少しだけ間を置いた。

まるで何かを確かめるみたいに、

ゆっくりと、私を見る。

こそばゆい気持ちで目を逸らす。こんなにも真っ直ぐ見られるのはルビア以来だ…待って、

この人まさか…

覚えてくれる…?

心拍数が上がる。期待したい。でも、期待しすぎると傷つく。心臓が痛い。音が遠くに聞こえる。自分は今真っ直ぐ立てているのだろうか?

 おそるおそるシュエ教授の方を見ると彼女はまだこちらを見ていた。


「あなた…少し変わってるって友達に言われない?」

「いえ…友達……いないので」

「あ、あらルビアさんは?」

「彼女は友達ではなく大切な人です」

「……そうなの、あ、ごめんなさい引き留めて、じゃあ授業頑張ってね」


そう言って去って行った。その背中からは微かな戸惑いが感じられる。思い切って呼びかける。


「シュエ教授!」


彼女は振り向く


「はい?あら…あなた誰だったかしら?」


期待の後の失望、いつも通りだ、でもいつもと少し違った気がした


「……あなた不思議ね…まるでいるはずのないものみたい」


去っていく教授の背中を見ながら思う

やっぱりダメだった…

「 ユウ!」


振り返らなくても誰かは分かる


「何のんびり歩いてるのよ…何話してたの?」

「なんでもないよ」

「うそ、あんたすぐ分かるから」

「ねぇルビア」

「なによ」

「……忘れないでね」

「はぁ?キッモ!むしろなんで忘れるわけ?」

 

 ――放課後


「ルビア様〜!今週の課題一緒にやりましょ!」


「ねえねえ今日の実技、またトップでしょ?すごい!」


「当たり前でしょ。誰と比べてんの?」


ルビアは椅子に深く腰掛けたまま、足を組む。


視線すら向けずに答える。


「てかさぁ、その程度でついてこれると思ってる時点で甘いのよ。いい?私は特別なの。存在強度100の圧倒的天才!そんな私にあんたたちが敵うわけないでしょ」


「うっ……」


「ま、別にいいけど。足引っ張らないでくれれば」


くすくすと彼女から笑いが漏れる。


誰も反論しない。


できない。


――強いから。


それだけで、全部が許されてしまっている。


「……お前さぁ、それやめた方が良いよ〜」


空気が、少し軽くなる。


セイランだ。


水色のショートカットの髪を揺らしながら、まっすぐルビアを見る。


「強いからって、何言ってもいいわけじゃないでしょ」


「あ?」


ルビアの視線が初めて動く。


「弱いのが悪いのよ」


「弱いのが悪いって考えは僕嫌いだなぁ〜」


 ニコニコしながら、だがその言葉はっきりだ。


「……綺麗事言ってんじゃないわよ」


空気が一瞬で張り詰める。


「うん、綺麗事だよ。それはダメなのかな?」


セイランは笑う。


軽く。


でも、引かない。


「……綺麗事を好きなアンタは、私に実技でも勝ったことないじゃない」


「もちろん、負けないように頑張るけどね」


「……勝てると思ってんの?」


「思ってるよ?」


誰かが息を呑む。


でも。


そのどちらにも、私はいない。


私は物語の主人公ではない。英雄にはなれないし、勇者になんてもってのほかだ。


ただの端役、モブ、存在すら忘れられる存在強度0のルビアの使い走り。


ふと、ルビアがこちらを見る。


一瞬だけ。


確認するみたいに。


――いるかどうか。


そして。


何事もなかったかのように、視線を外した。


やっぱり。


あなただけだ。


私を、“ここにいるもの”として見てくれるのは


でも。


……どうしてなんだろう。

私は、忘れられるのに。


明日2話投稿します。ひやひや。

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