負けられない戦い
短編です
真夜中に、急にスマホが鳴った。
「こんな時間に?」
番号を見ると、知らない番号だ。
昨今、簡単なメッセージサービスが連絡の主流になっているこの時代、電話で連絡をしてくる人なんてほとんどいないし、大体が詐欺か、何かのセールスだ。だから知らない番号には基本的に出ない。
今回もそれだろうと思うので、基本的には出ない。暫く無視していると、電話が途切れた。
PCに向き直って、作業の続きに戻る。
時刻はすでに二時を回っている。こんな時間でもまだ起きている人がいるんだなぁ。なんて思ったけど、まぁ、そう言うお仕事をしている人だっているだろう。
まぁ私もその一人だ。正直、あまり褒められる仕事じゃないだけに、夜に活動するのが多くなっている。
しばらくPCと睨みあっていると、また着信が鳴った。
「また?」
画面を見ると、同じ番号だ。これは何かの緊急連絡だろうか。いや、早まるな、私は簡単には陥落しないぞ。
再び無視を決め込んでいると、やはりほどなくして電話は切れた。なんとなく不安がよぎるけど、この不安からくる誘惑には誘われない。それに、留守番メッセージを残す仕様になっているはずだ。緊急の用ならメッセージを残すなり、なんなりする方が早いだろうに。
私は再びPCに目を移した。
しばらくは何も変化がなかったのだけれど、再びスマホの画面が明るくなった。今度はメッセージサービスの様だ。知り合いからの連絡か?スマホの画面を注視すると画面には[ハピバ~]と書かれていた。
私の胸が高鳴った。慌ててカレンダーに丸印を描く。落ち着け、落ち着け、まだ慌てるような時間じゃない。
今日か、そうなんだ、へぇ・・・。
やばい、にやける。
ずっとガードが固くて、全然知れなかったけど、初めて彼の誕生日を知ってしまった!あぁ、今日は記念日だ!自分が書いたカレンダーのただの丸印ですら愛おしい。
何歳なんだろう。見たところ二十代だとは思うけど。あぁ・・・知りたい!誰かその情報をくれないだろうか。
スマホが再び明るくなる。内容は彼の誕生を祝うものだ。あぁ、私もずっと思っているわ。おめでとう、あなたの生まれた日。まるで自分の事のように嬉しい!
知らない番号から再び電話がかかってきて、彼が起きた。
「彼の眠りを妨げるとは、許せない!」
彼が電話に出る、その相手はどうやら知り合いの様で、彼の顔が急にふやけた。電話の相手が目の前にいるわけじゃないのに、髪の毛を撫でている。寝起きの寝ぐせも可愛かったのに・・・。でも待って?あのふやけた顔ってもしかして・・・彼女!?いや、彼女はいないはず。じゃぁいったい、電話の相手は誰なの!?
ほどなくして電話を切った彼が、ガッツポーズをした後、スマホを操作して、さっきの知らない番号を連絡先一覧に登録した。
ふぅん、可愛い名前じゃないの・・・。
——アタシ、負けないからっ——
ひぇぇ・・・




