表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/5

追放された共感増幅者



──勇者召喚と、最弱の烙印──


 光に吸い上げられるような浮遊感が、碧斗あおとの鼓膜を震わせた。

目を開けると、そこは白大理石の床がどこまでも続く王城の大広間。

巨大なステンドグラスから射し込む光が、五つの影を床に落としていた。


 影の中心にいたのは、五人の日本人。

会社帰りのスーツ姿、学生服、作業着、ジャージ──そして碧斗。


「……召喚、された?」


 混乱すら追いつかないまま、壇上の玉座から、王が口を開いた。


「異界よりの来訪者よ。我らが世界を救う『五勇者』として招いた」


 五人の中にざわめきが走る。

だが、すぐ隣に立つ軍人風の男が、厳しい声で告げた。


「まずはスキル鑑定を行う。勇者の力を見極めよ」



◆一人目——圧倒的チートの轟き


 屈強な鑑定士が水晶玉に手をかざし、声を響かせる。


「一人目、佐久間 迅──スキル『魔将殺し(デモンスレイヤー)』!」


 大広間がどよめく。

たちまち騎士たちの視線が輝き、佐久間は驚きつつも得意げに胸を張った。


「お、おお……なんか強そうだな」


「勇者候補一名、確保!」



◆二人目──治癒の奇跡


「二人目、早乙女 凛──スキル『大治癒グランドヒール』!」


「嘘……そんな力、私が?」


「素晴らしい!国宝級だ!」


 王も立ち上がるほどの大歓声。

ここが異世界であることを強制的に理解させる光景だった。



◆三人目、四人目……


「剛腕」「竜気操作」「千里眼」

役に立ちそうな名前が次々と並び、歓声が上がり、期待が膨らむ。


 残るは、風間碧斗ひとり。


 胸が高鳴るわけではなかった。

ただ、自分の順番が来たことを知って、静かに呼吸を整えた。



◆そして、最弱と呼ばれた男


「最後、風間 碧斗——」


 鑑定士は淡々と、何の感情も込めずに呟いた。


「……スキル『共感増幅者エンパシスト』」


「…………え?」


「効果は……ふむ。他者の感情を“理解できる”……以上」


 大広間が静まり返った。

沈黙が、痛いほど冷たかった。


「た、ただの……共感能力……?」


「そんなの、スキルじゃないだろ……」


「感情を読んでどうするんだ?戦えるのか?」


 侮蔑、落胆、嘲笑。その色が波のように押し寄せてくる。

――碧斗には、それが“視えて”しまった。


 青白い失望。濁った黄色の侮蔑。

背後から刺すような薄紫の恐怖。


(……これが、俺の能力……?)



◆王の判断——追放


 王がため息をひとつ落とした。


「――役に立たぬ。

風間碧斗、そなたに勇者の資格はない」


「ま、待ってください!まだ他の効果が──」


「鑑定士が最弱と断じた。城で食わせる余裕はない」


 騎士たちが、淡々と碧斗の肩に手をかけた。


「外門まで案内します。

以後、城への立ち入りは禁じます」


 あまりに淡々とした処理。

まるで不要物を捨てるかのような扱いだった。


 四人の勇者候補が見守る中、碧斗は城外へと引きずられていく。


 誰も声をかけなかった。

誰も呼び止めなかった。

ただ、背中に刺さる“安堵”や“軽蔑”の感情だけが、冷たくまとわりついていた。



◆城の門前——たった1人で放り出されて


 巨大な門が音を立てて閉じられ、

石畳の地面がじんと冷たく足裏を痺れさせた。


「……俺だけ、いらないってか」


 笑おうとして、笑えなかった。

胸の奥が、ぎしりと軋む。


 だがその瞬間、碧斗の中で、何かが確かに動いた。


 ──城内から漏れた感情の残滓が、見えたのだ。


 恐怖。

焦燥。

悲嘆。

怒り。


 四人の勇者が選ばれた瞬間とは思えないほど、

暗い色ばかりがうごめいている。


(……この国、何か隠してる)


 このスキルは「無価値」じゃない。

ただ、まだ誰もその意味を理解していないだけだ。


 碧斗は拳を握った。


「いいさ……追放するなら勝手にしろ。

その代わり――俺は俺のやり方で、生き残ってやる」


 その決意に応えるように、

胸の奥で微かに“共鳴音”が響いた。


 これが、後に

“人心を見通し、魔王すら揺るがす心象の勇者” と呼ばれる男の始まりだった。

共感増幅者のスキル


◆【感情感知エモーションサイト


■他者の“感情の色”が視える

•周囲の人間・魔物などの感情が色として視覚化される。

•感情の強さや種類(恐怖・怒り・悲しみ・狂気など)がわかる。

•嘘や隠し事には“濁り”が入るため見抜ける。

•魔物や敵対者の“敵意・殺意”も前兆として視える。


◆【感情共有・共振シンクロ


■相手の感情を自分に“流し込み”、理解度を爆発的に高める

•相手の痛みや恐怖を“追体験”し、意図や背景を深く読み解く。

•心を開かせる、懐かせる、怒りを収めるなどの効果が強い。

•ただし、相手の負の感情が強いほど精神負担が大きい。


◆【感情増幅ブースト


■相手の感情を“増幅して押し上げる”ことができる

•恐怖を勇気に変える

•絶望する者に希望を与える

•迷いを断ち切って決断力を与える

•士気を大幅に強化する


◆【感情吸収ドレイン


■周囲の負の感情を“吸い取り”、自分の力に転換する

•魔物の殺意や人の怒りを吸収して弱体化させる

•発動中は碧斗の精神に大ダメージ

•吸収した感情は一時的に“自分の内側に燃える炎”となる

•これを攻撃的な行動へ転換することで、戦闘力が跳ね上がる


◆【感情誘導マインド・ガイド


■相手が“自発的”にそう思ったかのように、感情の向きを変える

•憎悪を鎮める

•敵意を別方向へそらす

•葛藤を整理して決断させる


※直接「命令」することはできない


◆【群体共感リンク・フィールド


■多数の感情を同時に読み取り、場の“空気そのもの”に干渉する

•小隊・村・町など、集団の空気を操れる

•戦争や祭りなど、大規模イベントで力を発揮

•使用時の負荷が極めて大きい


◆【精神干渉耐性メンタル・シールド


■相手の攻撃的な感情や精神攻撃を“遮断する”

•殺意・怒り・狂気などの影響を軽減

•精神汚染や呪いの耐性が高い

•魔王級の存在が発する“瘴気”にも対抗できる可能性


◆【深層共鳴コア・シンクロ


■“その者の核心”と触れ、心の奥の願い・恐怖・秘密を読み取る

•嘘が通じない

•トラウマや闇を抱えたキャラとの絆を深くできる

•使いすぎると碧斗自身の心が壊れかねない危険な技



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ