表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

陽キャ幼馴染、急接近

「おはよー、真壁!」


朝のHR前、俺の机にどかっと音を立てて座ってきたのは、天野理子だった。


「……そこ、俺の机なんだけど」


「知ってるー。あんたが座るより先に私が座ったから、今は私の席ー」


理子はニヤニヤと挑発的に笑う。

この女、朝からテンションが高すぎる。


「で、何の用だよ」


「ん? いや別に? ただ最近のあんたが気になってさー」


「俺が?」


「そうそう。だってさ、あんた最近……白川詩音と仲良くない?」


うっ。


急所を、思いっきり突かれた。


 


「仲良くって……別に。偶然席が近いだけだし」


「ふーん?」


理子は机の上で肘をつき、俺の顔をじっと見てくる。


「詩音ちゃん、けっこう人気あるんだよ? でも男子とあんまり喋んないじゃん。そんな中で、あんたとだけ妙に喋ってる。しかも――肝試しで手繋いでたでしょ?」


「なっ……! 見てたのかよ」


「そりゃ見るでしょ。てか、あれはイベント? それとも……ガチ?」


「ガチなわけないだろ!」


焦って声を荒げた俺に、理子はクスクスと笑いながら言った。


「はい、今の動揺いただきましたー。怪しい怪しい。詩音ちゃんって、恋愛とか苦手そうだけど、もし気持ち動かされてるとしたら――ちょっとヤバいかもね?」


 


理子は、昔からこういうタイプだ。

悪気なくズケズケ入ってきて、核心を突いてくる。


昔は、それが苦手だった。

でも今は――なんか、ちょっとだけ懐かしい。


「……お前、相変わらずだな」


「何が?」


「人の気持ちをグサグサ言ってくるとことか」


「うん? 別に傷つけようとは思ってないんだけどね」


「だろうな。そこが厄介なんだよ」


「お褒めに預かり光栄です、真壁先輩」


 


ふざけた口調で言いながらも、理子の表情が一瞬だけ柔らかくなった気がした。


でもそれもすぐに消えて、またいつもの陽キャスマイルに戻る。


「じゃ、とりあえず今度のレク、よろしくね。あたし、アンタとペアだから」


「は?」


「仮想カップルクイズ大会、アンタと私。もう決まったから」


そう言って理子は、俺の机の上にペア表をドンッと置いた。


そこには、確かに――

「No.3 真壁悠 × 天野理子」の文字が。


 


「待て待て待て! 俺はそんなの聞いて――」


「そういうの、風間に言って。あいつが、配慮して組んだって言ってたから」


「配慮の意味を根本的に履き違えてるだろあいつ……!」


「じゃ、よろしくね。アンタがどんな仮想彼氏になるか、楽しみにしてるから」


そう言って去っていく理子の背中は、なんというか――

無敵だった。


 


====


 


昼休み、図書室。


白川詩音が、本棚の陰からそっと顔を出した。


「……こんにちは、共犯者さん」


「おう、白川。……詩音って呼べばいいか?」


「どちらでも。私は真壁くんのままが、落ち着くけど」


「じゃ、俺も白川でいく」


 


小さな会話でも、なんだか照れくさい。


もしかしたら、昨日の肝試し以来、俺たちの距離が少しだけ縮まったのかもしれない。


「でさ……次のクイズ大会、俺と天野がペアなんだとよ」


「……そう。理子さん、よく話しかけてるものね」


詩音はほんの少しだけ、視線を逸らした。


その横顔には、わかりやすくモヤモヤが漂っていた。


「白川、もしかして……嫌だったか?」


「……べつに。イベントなんでしょう? ただの学園行事の一環でしょ?」


そう言うけれど、その声にはいつもの理性がなかった。


 


詩音も、揺れている。

イベントと本音の境界が、どんどん曖昧になっていく。


それは、俺も同じだ。


風間の仕掛けが成功してるのか、俺たちが壊れてきてるのかはわからない。


でも――

このまま行ったら、俺たちは本当に、ただの共犯者じゃいられなくなる気がした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ