ゆいこのトライアングルレッスンU2〜たくみの第2ボタンの行方〜
下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」の人気企画、「ゆいこのトライアングルレッスン」に採用していただいた作品、
ゆいこのトライアングルレッスンU2〜ひろしの第2ボタンの行方〜
https://ncode.syosetu.com/n3860kc/
のたくみ視点です。
「ゆいこのトライアングルレッスン」とは?と思われた方は、
ゆいこのトライアングルレッスン〜軌跡〜
https://ncode.syosetu.com/n1009ic/
をご一読いただくと、より楽しめると思います。
「たくみくん、第2ボタンちょうだい。」
卒業式が終わり体育館から教室へ戻る途中で、数人の女子に囲まれたていた。
「あれ、第2ボタンもう誰かにあげちゃったの」
「えー誰に?」
「教えられるっかよ。」
「まぁ、モテるのは知ってるけど、じゃあ第1ボタンちょうだい。」
「ズルーい。私は第3ボタン。」
「それなら、第4ボタンほしいな。」
こうして、俺の制服のボタンはなくなった。先に取っておいた第2ボタンを除いては。
教室の窓から覗くゆいこの視線には気づいていた。そして、体育館裏から昇降口に戻るひろしが視界に入る。
「ボタンなくなったし、それじゃ俺、行くわ。」
とその場を去る。
昇降口から、階段を上がろうとすると、声が聞こえてきた。
「ひろしくんのボタンもらえなかったなぁ…。」
「仕方ないでしょう。そういうの受け付けないって断られたんだから。そういう硬派なところも好きなんでしょ…。」
へぇ、断ったんだ、まぁひろしらしいっちゃらしいけど。
教室のドアは開いていたから、ゆいことひろしの会話はまる聞こえだ。
「じゃあ、私が貰ってあげる。」
「しょうがないな。やるよ。」
ふーん。ボタンあげるんだ、まぁいいけど。渡すまでは、待ってやるか。
「あれ〜。ひろし君。第2ボタンあげるんだぁ?」
と、あえておちゃらけて声をかけると、ビクッとする二人。
「たくみは、あげるボタンはないだろう?」
「ちゃんとありますー。はい、ゆいこ。正真正銘の第2ボタン。」
俺はゆいこにボタンを差し出す。ゆいこは目を見開いて聞いてくる。
「えっ?みんなあげちゃったんじゃないの?」
「最初から取っておいたんだよ。ゆいこに渡したくて。さぁ、帰るぞ」
向こうから来る女子の扱いには慣れてるつもりだけど、自分から行くのは少し照れる。それに万が一ゆいこに拒否されたら、いたたまれないから、半ば強引に渡してすぐに帰る支度をしに体の向きを変える。
例年より早めに咲いた桜舞う並木を、ゆいこは花びらを追いかけながら先を歩く。
「先にボタンを取っておくなんて、意外だったな。」
「まぁ。ゆいこにあげたかったし。そういうひろしこそ、第2ボタン下さいというの受け付けないんじゃなかったっけ。ゆいこに渡すまで声をかけなかった俺に感謝しろよー。」
「待ってたのかよ。」
「さあね〜。あーゆいこ、花びら取れた??」
俺は、先を行くゆいこに追いつくよう駆け出しながら、ふと思う。
俺らは高校にあがり、中学生のゆいことは学校が離れる。俺がゆいこに告るのが先か、ひろしが告るのが先かわからないけど、この3人のトライアングルはいずれ壊れる。とはいえ、今の関係も居心地がいい。さて、高校生活どうするかな。
そんなことを考えていると、ひろしが追いついてきた。ゆいこを真ん中にはさんで俺らは3人で肩を並べて家へと向かった。
最後までご覧いただきありがとうございます。
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