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大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第一章 相馬県立鷹ケ楸高校

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第93話 見えないところに……


「坂本、これ、槍は単なる道具に過ぎないんじゃないか?

 これ、本質は単数を複数で取り囲んで、安全なところから相手の見えないところにヒットアンドアウェイって方法論だ。それでダメージを与え合う持久戦ってことになる」

「そうだ。そのとおりだ。

 ただ、槍の本数が10本しかなくて心もとないけど……」

 なんか、急にそわそわしてんな、坂本。


「そんなことは問題じゃない」

 僕はそう言って考え込む。「単数を複数で取り囲んで、安全なところから相手の見えないところにヒットアンドアウェイ」の条件のうちの前半は、もう満たしているんだよ。あとは、ヒットさせるものは槍じゃなくてもいいし、なんでもかんでもヒットさせる中で槍をここぞという場所に刺すためのお膳立てになればもっといいんだ。

 

「そうなると、鏑矢の使い方も考えなきゃだな。蒼貂熊(アオクズリ)を分散させて、誘導して待ち伏せして、奥と佐野の変化球、それからなんでもいいから手近なものをゆっくり()つけて、そこに速い槍を混ぜ込む。

 で、無理にとどめを刺すまで戦う必要はない。シソ毒で目を狙って、怪我をさせるだけでいい。目が見えなくなれば恐ろしい相手じゃない。まして、僕たちが梅酢まみれになっていれば、においを辿って襲うこともできないんだし」

「いや、並榎、狙いはそうじゃない方がいい」

 鴻巣の異議に、僕は「どういうことだ?」と視線で問う。やっぱり鴻巣、冷静さを取り戻せば有能なヤツなんだよな。


「並榎は矢で蒼貂熊の目を狙え。宮原と北本は吹き矢を使え。球技チームは毒餌ボールの変化球で口の中を狙え。

 矢、吹き矢、変化球と速度差が出るはずだ。俺と坂本はなんでもかんでもゆっくり投げてさらに撹乱する。4種類のスピードでものが投げられたら、根本的に学習とかもできないだろうからだ。この速度の重なり合いが奇跡を生むはずだ。

 で、吹上はこれらとは別に、槍で蒼貂熊の足を狙うべきだ」

「……というと?」

 鴻巣の言いたいことはおおよそ理解できる。特に4種類のスピードっての、説得力がある。けど、なんで槍で足?


「だって考えてみろ。俺は蒼貂熊の目を潰したからといって、無力化したとは思えないんだ。だって、蒼貂熊は体毛で音を聞いているんだろ?

 となれば、前回はバリケードの陰に俺たちは隠れられたけど、広いところだとそうはいかない。気配で俺たちを追ってくる可能性があるよな。それにそもそもだけど、3対6個の目のすべてを一気に潰せるか?」

 ……それはまぁ、たしかに無理だ。間藤と中島だって、何回も吹いた矢がようやく(あた)ったんだから。


 それに、蒼貂熊は視覚も聴覚も人間に比べて弱いだろうけれど、鴻巣の言うとおりで体毛は敏感って可能性は高い。体毛で音を聞いているとなれば、聴覚としてのパフォーマンスは人間に劣っても、体表の感覚器としては人間とは比べ物にならないほど敏感なはずなんだから。で、鋭い嗅覚は梅酢で潰せるにしても、体毛については今のところ手の打ちようがないんじゃないかな。


 鴻巣は続ける。

「効率よく蒼貂熊の目潰しができるかってことになると、俺は無理だと思う。なら、行動の自由を奪った方が確実だ。蒼貂熊の足には装甲みたいなものはないから、投げ槍の勢いなら包丁の刃でも入るんじゃないか。あとは首筋の後ろの装甲と皮膚の継ぎ目だ。こちらは、実際に刺すのは位置的に難しいから実現できないだろうけど、足なら的が大きい。

 筋肉とか腱とかがどう付いているかわからないけど、(かかと)みたいな部分はあるし、そうなればそのすぐ上にアキレス腱に相当するパーツもあるはずだ。蒼貂熊は跳躍できるんだから、そういう構造でなければおかしい。どうだ、佐野?」

 いきなり話を振られた佐野は、わかりやすく動揺した。

第94話 血路を開く

に続きます。

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