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大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第一章 相馬県立鷹ケ楸高校

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第82話 人造生命、蒼貂熊


 岡部は続ける。

「で、そんな特殊な生態だから、他の生物には例がないんだよ。生き物は本来、満腹になったらエネルギーを長く保存するために寝るのが正しいんだ。そうでなかったら、生態系だって過剰な狩りで壊れちゃうだろ。

 その延長で考えると、蒼貂熊(アオクズリ)、おそらくは死を避けるようにプログラムはされていても、死への本質的恐怖はプログラムされていない。たとえ恐怖があったとしても、恐怖という感情ではなく、その概念を想起させられるだけになっているんだろう」

 うーん、めんどくさい。


 とはいえ、岡部の言いたいことはわかるような気がする。

 実はこれ、とても単純なことだ。スマホがバッテリー切れの警告を出したからって、空腹を感じているわけじゃないってこと。

 でもこれって、話が哲学とかの領域なんじゃないかな?


 それにしても、蒼貂熊という生き物を設計した存在は、よほどに用意周到ってことになるな。他の世界に偵察役で送り込む存在だからこそ、行った先の生態系が壊れちゃっても構わないプログラムになっている。そして、これ自体が入られた世界側が対抗するための攻撃の原因になる。そして、その攻撃が起きれば、それはそのまま情報の収集に相当するんだ。

 くそ、よく考えられてんな。


 岡部は話を続けた。

「話を戻そう。

 ニホンザルは、生物としての土台の上に強者総取りのルールがある。だから、弱い個体も飢えの恐怖と焦燥に対応し、生き延びるためには、当然のように裏切る必要が生じる。でなきゃ、なにも食えないってことになりかねないからな。

 だけどさ、そもそも生物としての土台がなかったら、裏切るってことにはならないんじゃないかな?

 だって、死から演繹して考えれば、飢えはあってもそれに伴う恐怖と焦燥はないってことなんだ。こうなると、蒼貂熊にボスがいるとして、そのボスが食うなと言ったらいくらでも空腹に耐えられるってことになる。つまり、蒼貂熊は生命としてあまりに不完全で、諦めが良くて、だから結果として裏切る機能がない」

 ……なるほど。


 翻って考えてみれば、僕たちはある意味において蒼貂熊よりもっと(たち)が悪いのかもしれない。不可能なことでも非論理的な根性論とかでなんとかしようと足掻くし、とことん諦めが悪い。裏切りだって、その諦めの悪さの一環だ。

 赤羽なんか、蒼貂熊の口の中に咥えられ、牙がその腹に喰い込んでいる状況ですら屈服しなかったんだ。坂本だって、僕だって、きっとそれは同じだ。

 まだ女子の半分は泣き続けているし、男子だって呆然としちゃって我を失っているヤツも多い。だけど、今だって僕たちは生き延びるための努力をし続けている。

 でもってこれは、良くないとされている裏切りができることの裏返しなんだ……。


 細野も頷いて言う。

「そうか、岡部の言いたいことはわかった。

 じゃあ、蒼貂熊のフィジカルと狡猾な狩りをする知能、だけど劣勢に立ったときの諦めの良さ、この辺りは付け込む隙として忘れないようにした方がいいな。

 まぁ、どうにもちぐはぐな生き物だとは思っていたんだ。異世界の生態ってヤツかもとは思っていたけど、そのあたりも侵略の偵察と尖兵という役割とのバランスなんだろうな」

「ああ、そういうことなんだろうな。で、俺たちはこれからどうする?」

 そう最後に聞いたのは、黙って話を聞いていた坂本だ。その手は鴻巣から取り上げたスマホを玩んでいた。指紋認証は縛り上げられた本人がいるから簡単に突破したけど、プライベートなところまで暴かないのは男同士の武士の情けだろう。

第83話 救急

に続きます。

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